YouTubeで話題のガーシーさんが、参議院議員選挙に出馬を検討している(YouTubeより)。NHK党の立花孝志さんの強い推薦を受けたようだ。
ガーシーさんこと東谷義和さんは、芸能人の裏事情暴露が人気のYouTuber、そんな人がまさかの選挙出馬である。
ガーシーとは
ガーシーこと東谷義和さん。50歳。伊丹市出身。「ガーシーch【芸能界の裏側】」を運営するYouTuberとして世の中を騒がしている人である。
もともとQLABというブランドでアパレル事業をしたたり、西麻布でバー経営などをしてきた人で、同時に27年間芸能人の「アテンド(世話焼き)」をして、芸能界の裏にかかわってきた。アテンドというのは、芸能人の男女の出会いの場を紹介・仲介のこと。芸能人が集う夜の社交場・遊ぶ場において、多くの人脈を作ってきた。
しかし、昨年あたりから状況が一変する。ギャンブル好きゆえの散財やコロナによる経済的苦境に苦しむようになった。そんななか、BTSにあわせるサービスを企画し販売したが、お客に対して約束を果たすことができなかった。そのことを有名YouTuberヒカルに公開されてしまい、世の中に拡散。そのため、芸能人の多くの友達がガーシーと距離を置くようになった。
これまで無償でアテンドしたり、色々な苦境で助けてあげてきたにもかかわらず、(芸能人の)友達が自分の苦境に助けもしてくれない、優しい言葉1つくれない状況。それに怒ったガーシーさんは、自分が知っている事実を暴露し始めた。
リアル「芸能レポーター」として視聴者が知らない芸能人の裏側を次々に明らかにしていった。島田紳助さんからも「芸人になったほうがいい」と言われたほどの口達者な語り口、視聴者との親しみやすい絡み、友情や男らしさが垣間見れる言動、当意即妙の受け答え、気さくな対応、人間味あふれた言動などで圧倒的に人気が出た。
特に、不祥事を暴露した芸能人にまで親身になって説教、アドバイスするところなどは人間「ガーシー」の奥深さが垣間見れる。
裏社会の人が表に出てきてリアルな話をすること自体も珍しいが、リアルに芸能人(城田優さん)がCMを降板するなどの影響があったり、ガーシーさん自身の借金返済に絡んで救世主が現れるなどの「ドラマ性」、自分の主張を裏付ける証人を番組に出演させる「真実性」、他のYouTuberと絡んだりする「話題性」、視聴者からも情報を集めていく「協働性」、それゆえコンテンツとしては見逃せないものになっている。
現在は、俳優の新田真剣佑さんの裏金問題や女性問題を指摘したり、俳優の綾野剛さんの未成年女性との飲酒問題を糾弾している。特に、綾野さんが所属する芸能事務所トライストーン社の山本又一郎さんと闘っていて芸能界を震撼させている。
政治家になる人の資格と条件は「国民のしもべ」
今回、ガーシーさんが政治家になることを検討していると聞いてびっくりした。政治家は国民の代理人である。政治家として何かをしたい、政策を作りたい、社会を政策や行政を動かすことで変えたいという意思を持った人がやるべきだと思っている。
資格としては、
(1)思い
- 社会をよりよくしたい
- 政治を通じて国民の意見を行政に伝えたい
- 行政や政策をある一定の方向へ動かしたい
(2)意欲
- 国民の意見を聞き出し、政策に反映させていきたい
- 法律や政策や社会が抱える問題点を明らかにして、改善したい
- 法律審議や国政調査権などを活かして何らかの形で国民のために尽くしたい
- 社会の不公正追及や適正な予算執行など行政や政治をチェックしたい
ということが必要である。偉くなりたい、偉そうにしたいという人はもちろん政治家になるべきではないし、地位を得て、その地位を使って何か影響力を及ぼしたいというガーシーさんのような人も同様だ。
政治家になるための能力的条件は以下が揃っていることだろう。
(1) 基礎能力
- 情報発信力
- 現状分析力・判断力
- 政策理解力
- コミュニケーション能力・説明力・説得力
- リーダーシップ
(2)態度・姿勢
- 規律・法令順守
- 積極性・粘り強さ
- 人間としての信頼性(行動、言動、振る舞い)
- 他人への敬意、リスペクト
とはいうものの、これはあくまで理想である。現実的には、ある利益・利害の代理人として選出されることが多いし、上記のような条件を備える素晴らしい政治家はそう多くはない。
ガーシーさんが立候補するのは自由だが、政治家になることで自分の目的を達成しようとしているようにしか見えない点には疑問が残る。仮に芸能界の「浄化」を目的としても、公益性がそれほどまでには見出せない。
ガーシーは凄い・・・・だが
ガーシーさんの凄さは色々あるが、その中でも、凄いと思ったのは、第一に、ファン1人1人に返事するところである。私も今回連絡を取ったが、一度、見かけたくらいの自分に対して返事をしてくるというところはびっくりした。
第二に、相手とのコミュニケーション能力である。特徴的なのが、おだてたり、突き放したり相手と距離感の詰め方や配慮の仕方。人と出会ったら最初に「マウンティングをとる」と本人もいうように、そこでペースを握って、コミュニケーションを優位に進める。相手はその話術に引き込まれてしまうわけだ。
第三に、情に厚いところ。情に厚く、友達を大切にしていることもあって、物凄い人脈を作りあげた。友達をとても大切にしているから、友達から大切にされない行為には許せないのかもしれない。
ガーシーさんの暴露は、「報道の自由」にも問題点を投げかける。大手メディアは、ある特定の事務所のタレントの宣伝活動やスキャンダル・不祥事を「芸能ニュース」として取り上げる一方、ガーシーさんの暴いた情報については全く取り上げない(芸人さんはネタとして使っているが)。
相手への厳しい要求をYouTubeで発信し、相手の行動変革を求める行為は、政治家としては「使える」。「めくる」「晒す」実績を見せた点で、不正追及などに活躍する可能性は大いにある。
しかし、他人への攻撃を公言しているということは、他人との「もめ事」が現在、存在するということ。しかも、世間の注目を集めるレベルの「もめ事」である。政治家になる前に、まずその「もめ事」を解決してもらいたいし、もめるにしてももっと穏便に解決できないのか・・・と多くの人は思うはず。
個人的には、ガーシーさんが、自分なりに社会運動をはじめたり、同じ目的を持つ政治家を見つけて一緒に活動する方向でいって欲しいなあと思う。
例えば、芸能人の不祥事追及や芸能界の浄化、不祥事を起こした芸能人を企業がCMに起用する問題、大手芸能事務所や有力者に忖度する大手メディアの報道姿勢・報道の在り方の問題、芸能人にもてあそばれた被害者の救済、ギャンブル被害者救済などなどガーシーさんができることはたくさんある。
政治家になるというのではない、もっと別の形で社会的な活動はできるはず。そして、政治家になる前に自身の失敗や被害者への謝罪と贖罪を済ませることが先だと思う。
一方、ガーシーさんに糾弾された人たちは、ガーシーさんの言葉に対してきちんと説明する社会的責任があるだろう。「かっこいい経営者」を自称するインフルエンサーみたいに「事実無根」「誹謗中傷を受けた」と主張するだけで具体的に何も説明しないのは困るが。