オミクロン株では、間質性肺炎による直接死以外に、持病の悪化などに伴う間接的な死亡が多数みられました。このような現象は、インフルエンザでも確認されており、インフルエンザ関連死と呼ばれています。コロナの場合は新型コロナ関連死です。
コロナワクチンの副反応においても同様の現象がおきているのではないかと、私は考えています。つまり、副反応により直接死亡する以外に、接種により持病が悪化して死亡したり、接種後に致死性疾患が誘発されたりするなど間接的に死亡する可能性が有り得るのです。これらは、ワクチン副反応関連死あるいはワクチン副反応関連事象と呼べるのではないかと考えられます。
医療界では、ワクチン接種後の死亡や持病悪化について語ることは、長らくタブーとする風潮がありました。ところが、コロナワクチンにより新型コロナの致死率が大きく低下し一段落ついた現在、少し風向きが変わってきました。日経メディカルでは、接種後に持病が悪化して入院を要した4症例を例に挙げて、副反応は公表されている以上に広範囲に起きている可能性を指摘する記事が掲載されました。医療関係者を対象にした日経メディカルで、このような趣旨の記事は過去に掲載されたことは一度もありませんでした。
ワクチン推進派のなかにも、ワクチンの有効性は認めるが、副反応についての議論が不十分ではないかと考える医療関係者が一定数存在していたのは確かです。これまではワクチン推進の邪魔をしてはいけないと考えて発言を自重してきた人たちが、ワクチンの負の側面について真摯な議論をし始めたのです。どこまでが副反応なのか、あるいはワクチン副反応関連死や副反応関連事象を認めるかなど、一から議論をし直す必要があります。
私はこれまで接種後死亡について、様々な観点より解説してきました。ここで、今一度論点を整理してみます。
ワクチン接種と接種後死亡の因果関係を調べる方法は主に4つあります。
- 接種後死亡症例の分析
- 超過死亡より推定
- 死亡率の比較
- 偶発性の検証
4つのうち、因果関係を立証するのに最も有効な方法は、4の偶発性の検証であると私は考えています。一方、医療関係者の多くは、3の死亡率の比較を重視しています。しかし、この手法では因果関係を完全に否定することはできないと私は考えます。順を追って説明してみます。
1.接種後死亡症例の分析
個々の症例を詳細に分析しても、因果関係の有無を確定させることは、現在の医学では極めて困難です。そのため、厚労省で公表されている専門家評価は、ほとんどがγ判定(評価不能)となっています。
2.超過死亡より推定
感染研のダッシュボードより、2021年の正味の超過死亡数は9,739~47,481です。同年コロナ死は14,901人です。超過死亡数の下限値よりコロナ死を引きますとマイナスとなります。つまり、超過死亡はコロナ死のみで説明できることになります。
一方、超過死亡の上限値はコロナ死のみでは説明がつかず、医療逼迫死と接種後死亡が関与していることが推測されます。超過死亡の週毎のグラフにおいての4月18日を境としたグラフの非対称性は、高齢者のワクチン接種が4月18日以降の死亡者の増加に関与していることを示唆しています。
3.死亡率の比較
ワクチン接種群の死亡率とコントロール群(未接種群または過去のデータ)の死亡率を比較することにより検証します。厚労省が主張するように接種後死亡が偶発的なものであるならば、両者の死亡率は、ほぼ同じとなるはずです。
既に厚労省は死亡率の比較による検証を実施しています。しかし、その分析結果は実に奇妙なものでした。出血性脳卒中の死亡率は、コントロール群の25分の1、虚血性心疾患の死亡率は、37分の1だったのです。適切な比較をしているとは私には思えません。バイアスが適切に補正されていないか、あるいは性質の異なる数値を比較している可能性があります。
死亡率の比較の場合は、現在の接種後の死亡発生確率で、統計上で有意な死亡率の上昇となるのか、 事前に検証しておくことが有益です。発生確率が低いために有意な死亡率の上昇とならないのであれば、死亡率の比較は意味がなくなります。
接種後死亡が死亡率に与える影響を調べることは、次のような方法で可能です。予測死亡者数(自然死)プラス接種後死亡者数と、予測死亡者数(自然死)のみとを比較して、死亡率の上昇が有意なものか検証するのです。この比較により、現在の接種後の死亡発生確率により、統計上で有意な死亡率の上昇が生じるかどうかが、はっきりします。
この手法を用いて以前に、接種後死亡の発生確率を30人/100万人接種と仮定して試算してみたことがあります。検定結果では、有意差は認められませんでした。ただし、因果関係がないために有意差がないのではなく、発生確率が低いため有意差がないということです。つまり、因果関係があったとしても、発生確率が低いと有意差なしとなってしまうことが有り得るのです。ちなみに、ファイザー製ワクチンの死亡発生確率は15.8人/100万人接種です。
医学においての立証とは何を意味するか?
医学においての立証は、数学のような厳密な立証を意味しているわけではありません。医学においての立証は、帰無仮説の成立する確率が5%以上かどうかを計算しているだけなのです。
帰無仮説:ワクチン接種により死亡率は上昇しない
この帰無仮説の場合、有意差があれば、帰無仮説は棄却され、「ワクチン接種により死亡率は上昇する」という結論になります。問題は有意差がなかった場合です。「ワクチン接種により死亡率は上昇しない」と結論づけたくなりますが、その結論は統計学的には間違いです。正しくは、有意差がなかった場合は、帰無仮説は棄却も肯定もされないため、「ワクチン接種により死亡率は上昇するかどうかは不明」という結論になります。この問題は、以前に詳しく解説しました。
医療統計学による立証では、発生確率が低い場合に、有意差なしとなり、偶発的と誤って認識されてしまう危険があるわけです。有意差がなく稀な現象だから、問題としない、補償をしないといった考え方には、私は全く同意できません。
4.偶発性の検証
偶発性の検証は、発生確率が低い場合でも適用できる点が優れています。因果関係を立証できる可能性が一番高い方法だと、私は考えています。ただし、この手法の場合、報告バイアスの問題があるため、接種後死亡の報告が完全義務化されている必要があります。厚労省が報告の完全義務化を指示しなかったのは致命的ミスでした。
接種後死亡データの分析より、報告バイアスは接種後9日以内であれば、その関与は軽度である可能性を、私は以前に指摘しました。ただし、報告バイアスを完全に排除するには、マイナンバーを用いた検証が必須です。それが実行できるのは厚労省のみです。
医療関係者においてもあまり認知されていませんが、心筋炎の危険は、偶発性の検証より判明しました。 接種者の「接種1日後~21日後の疾患発生確率」と「接種22日後~42日後の疾患発生確率」との比較より、心筋炎の発症が偶発的でないことが示されたのです。死亡率の比較より偶発性の検証の方が有益であることが、まだ十分に理解されていないと、私は感じています。
最後に
将来、接種後死亡が偶発的でないことが立証された場合、直ちに死亡者に補償がなされるのかというと、話はそれほど簡単ではありません。何故なら、接種後死亡者には、偶発的死亡者と因果関係のある死亡者とが混在しており、両者を識別することは現在の医学では極めて困難であるためです。
一つの解決方法は、韓国のように一定期間内の接種後死亡者全員に見舞金を支給することです。ただし、それでは遺族の納得は得られないかもしれません。誰もが納得できる接種後死亡者に対する補償への道程は、極めて険しいと言わざるを得ません。