韓国とスウェーデンのウィズコロナは失敗だったのか?

アゴラ 言論プラットフォーム

Oleksii Liskonih/iStock

新型コロナ、日本では「なぜ?」というくらい落ち着いている。

しかし、お隣の韓国は感染者数が過去最高となっているのをご存知だろうか。

韓国の状況

 韓国では、感染者があまりにも増えすぎたので、大統領が昨日(令和3年12月18日)から「ウィズコロナを断念する」と謝罪した。

韓国“ウィズコロナ”中断…否定し続けた大統領謝罪 韓国で16日に発表された新規感染者は、過去2番目の多さとなる7622人で、重症者に至っては989人と過去最多になっていま

韓国“ウィズコロナ”中断…否定し続けた大統領謝罪
 韓国で16日に発表された新規感染者は、過去2番目の多さとなる7622人で、重症者に至っては989人と過去最多になっています。  こうした状況を受け、韓国政府は、感染症対策と経済の両立を目指す、「ウィズコロナ政策」を18日から中断し、飲食店などへの制限を再び強化すると発表しました。  会食などの人数は4人までとし、…

そう、実は韓国はこれまで「ウィズコロナ政策」をとっていたのだ。

このウィズコロナ、簡単に言うと

「厳格な感染対策・行動規制を緩め、経済活動や日常生活を通常に戻していこう」

という動きだ。韓国では11月始めからこの「ウィズコロナ政策」で様々な規制が緩和された。

このグラフを見るとそれがよくわかる。

出典:REUTERS COVID-19 TRACKERより

赤い部分が一番厳しい「全面的にロックダウン」、オレンジ部分が「部分的にロックダウン」。
一番右の11月辺りからはグレーの「ロックダウンなし」になっている。つまり11月から「ウィズコロナ」ということだ。

一番上の実線が感染者数の推移だが、その「ウィズコロナ」が始まってからいきなり感染者数が急激に伸びている。うなぎのぼりの急上昇で、まさに過去最高だ。これを見ると、韓国のウィズコロナは確実に失敗に見える。

ただ、もう少し視点を広げて日本と比較してみるともう少し深い考察が出来る。

日本の状況

日本の状況がこちら。

出典:REUTERS COVID-19 TRACKERより

感染者の数でいうと、御存知の通り日本は現在ほぼゼロまで減っている。韓国とはかなりの違いだ。

それはそれで素晴らしいことだが、韓国と比較でもう一つの違いに気づくだろう。

そう、ロックダウンの強さが韓国と比較して日本のほうがかなり緩いのだ。

赤いところはコロナ出はじめの第1波、最初の緊急事態宣言のときのみ。オレンジの部分が夏の第5波のときでわずかにあるが、その他はずっと「閉鎖を推奨」という緩いレベルの対策(いわゆる強制ロックダウンではなく自粛レベルの対策)を続けている。

日韓を並べてみるとこうなる。

こうして比較してみると、韓国はロックダウンをしすぎて、これまでの感染が少なすぎた(だから少し緩めただけで爆発してしまった)ようにも見えてくる。

これがもう少し良く分かるのがこちらの、感染者数を「その日の数値」でなく「累積」でみたグラフだ。

そう、実は韓国は今現在爆発的に増えているものの、累積の感染者数で見ると、まだまだ日本より少ない。これは死者数で見てもだいたい同じである。

韓国は少し前までは感染者が非常に少なく、だからこそ「感染対策の優等生」として世界中でお手本のように報道されていたのだ。

ただ、いつまでも厳格な感染対策・経済抑制を続けていては国がもたない。そこで11月から「ウィズコロナ」にしたのだが、その途端に感染爆発してしまったと言うことだろう。

一方で日本は、結果として比較的緩い感染対策(自粛要請レベル)を続けてきたので、感染者数は韓国より多かった。しかし、そのかわり今はほぼゼロコロナで落ち着いているということだ。

こうやって日韓を比較してみると、

厳格なロックダウンや感染対策・経済抑制をしても、感染拡大の先延ばしするだけで、結局コロナはいつかは国中に広まるし、そうならなきゃ終わらない?

とも考えられる。

スウェーデンとデンマーク

実は、これと同じような例が北欧のスウェーデンとデンマークでも見られる。

お隣同士のスウェーデンとデンマーク。通常、北欧の国はどこも似たような政策を取ることが多いのだが、今回のコロナについてはこの2国は全く逆の方向を向いた。

スウェーデンは「厳格なロックダウンはしない」
デンマークは「厳格なロックダウンをする」

で、その結果どうなったか?

当然といえば当然だが、スウェーデンは感染が拡大してしまい、デンマークとは大きな差をつけられてしまった(スウェーデンはそれでも他の欧州諸国と同じくらいではあったのだが)。

これは、

「ノーガード戦法のスウェーデンの失敗」

として広く報道されたのでご存じの方も多いだろう。

ただ、それも話が変わってきた。いま、デンマークの感染者数が欧州最多レベルで激増しているのだ。スウェーデンも増えているが、デンマークほどの急増ではない。

そのグラフがこちら。

デンマークの感染者数の右端が一気にうなぎのぼりになっている。

ロックダウンの強さで見ても、デンマークは赤やオレンジが多く、かなり強いロックダウンをしていたことがわかる。

日本と韓国の関係性に非常に類似しているのだ。

累積患者数で見るとこう。

一時はダブルスコアくらいスウェーデンの感染者数が多かったのだが、今はデンマークがかなり追いついてきてしまっている。

お隣同士のデンマークとスウェーデン。

日本と韓国もお隣同士。

厳格なロックダウンや感染対策・経済抑制をしても、感染拡大の先延ばしするだけで、結局コロナはいつかは国中に広まるし、そうならなきゃ終わらない?

こうした同じような現象が隣国同士で見られるというのは非常に面白い。

もちろん、

「感染者数の山の高さを平坦にする」
「ピークを抑えて医療崩壊を防ぐ」

という意味で感染対策は意味があるだろう。

ただ、日本の医療崩壊について言えば、世界一の病床数を誇っていながら、その病床のほとんどをコロナ対策に回せず…つまり医師会含め医療業界全体が一丸になって対処できなかっただけである。病院業界・医師会という既得権益団体に変化を促せなかったということだ。

一方でロックダウンや経済抑制は、人々の絆を断ち切り、経済を壊し、自殺を増やす。

今後、寒くなる冬にかけてオミクロン株の流行が懸念されているが、仮にそうなってしまったとしても、柔軟な病床運営もせず、病床が空いている県外への救急搬送もせず、安易に「自粛再開を!」などと言ってほしくないところだ。

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