日本でも話題のプロゲーミングチーム「TSM」のCEOによるパワハラについて複数の元従業員が証言

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世界を代表するプロゲーミングチームであり、VTuberの渋谷ハルさんが加入したことでも話題となったTSM FTXについて、「従業員はTSMの有毒な職場文化と不安定なCEOに不満を抱いている」とThe Washington Postが報じています。

TSM CEO Andy Dinh fostered “culture of fear” at esports company, workers say – The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/video-games/2022/05/04/tsm-andy-dinh-misclassification/

TSMは2009年に設立されたプロゲーミングチームで、2020年には経済紙のフォーブスから「最も価値のあるeスポーツチーム」に選出され、企業価値は推定4億1000万ドル(約540億円)と算出されています。さらに、2021年には仮想通貨取引所であるFTXに2憶1000万ドル(約270億円)で10年分のネーミングライツを売却し、正式名称を「TSM FTX」に変更。日本市場にも着目しており、2022年4月には渋谷ハルさんとCrylixさんの日本人プレイヤー2名が加入したことで大きな話題となりました。


2021年3月、TSMでは新しく幹部として雇ったばかりの人事担当者を解雇した件について議論するための全社員参加会議が開催されました。この人事担当者について、従業員は当初「従業員に本当の理解を示してくれる人事がようやくやってきた」と興奮していたそうですが、働き始めてわずか数週間で解雇される事態となった模様。

この人事担当者が解雇された理由は、TSMの創設者でありCEOも務めている「Reginald」ことアンディ・ディン氏と意見の不一致があったためだそうです。会議の中で従業員のひとりがディン氏に解雇理由の説明を求めたところ、「気に入らない質問をしたので人事担当者は解雇された」と説明されたとTSMの元従業員は語っています。なお、ディン氏の回答の後、「誰も質問しなくなった」そうです。

ディン氏はチームに所属する選手に怒鳴り声をあげるムービーが話題になったこともあり、The Washington Postは「TSMの元従業員12人以上に話を聞いたところ、ディン氏による怒鳴り声をあげるなどのパワハラ行為は、eスポーツチームだけでなく社内でも見られるようです」と報じています。元従業員によると、ディン氏からパワハラを受けている従業員の職種は営業からプログラマーまでさまざまで、チャットや電話上で公然と非難されたり、他の社員がいる場所などで恥をかかされたりすることもあるとのことです。


TSM傘下のゲーマー向け統計追跡アプリ開発企業のBlitzでシニアプログラミングマネージャーを務めていたというアンソニー・バーンズ氏は、「アンディとの1対1のミーティングには目撃者がいないので誰も参加したがりません。それは、アンディがあなたに向かって叫んだり怒鳴ったりするのか、あるいは友好的だったり詮索してきたりするのかが、誰にもわからないからです。文字通りどんなアンディがやってくるのかわからないんです。対面相手が増えれば増えるほどアンディが怒る可能性は低くなります」と語り、ディン氏とミーティングする際は誰もが複数で臨もうとしていたと明かしています。

なお、リーグ・オブ・レジェンドの運営元であるRiot Gamesが、ディン氏のパワハラ疑惑について調査を進めています。Riot Gamesによるパワハラ調査は、TSMの元選手であるDoublelift氏が配信中にディン氏について「パワハラジジイ」と発言したことからスタートしたそうです。

ディン氏のパワハラについて証言した元従業員のほとんどが、eスポーツ業界におけるディン氏の影響力の大きさと報復を恐れて匿名でコメントを寄せています。


情報提供者によると、ディン氏の怒りの標的とされる従業員は多くの場合「社内的地位の高いスタッフ」だったそうで、こういった人材がパワハラの結果として解雇されてしまうため、常に社内プロジェクトやチームが不安定な状態になっているそうです。ある元従業員は「解雇された幹部の数は……膨大です」「もしも私が副社長なら、絶対にTSMでは働きたくありません」とコメントしています。

なお、ディン氏はパワハラ疑惑について報じられた際、WIREDに対して「私は自分自身に非常に高い期待を抱いており、一緒に働くすべての人に対しても同じくらい高い期待を抱きます」「パフォーマンスの低下に対する許容はゼロです。私は勝利を追求するべく、熱心かつ情熱的かつ意欲的かつ執拗に取り組んでいます。それが私という人物の性質です。私は常に高い基準を設定し、それを達成していないと感じた際には、そのフィードバックを直接的かつ素直に共有しています」「振り返ってみると、私の語彙が厳しすぎて効果がないケースがあったことを認めざるを得ません。社内のチームや周囲の人々とのコミュニケーションを改善するべく取り組んでおり、進行中の調査を支持し、全面的に協力し、調査員からの推奨事項についても喜んで受け入れる所存です」という声明を発表しています。

しかし、TSMの元従業員はディン氏の声明について、「アンディは『高い期待を抱いている』と言いますが、これは馬鹿げています。我々は一生懸命働いてきましたが、その成果物に対してアンディは『これは私が望んでいるものではありません』と言うばかりでした」とコメント。また、バーンズ氏は「正直なところ、TSMはこれまでで最悪の経営を行う企業でした」と酷評しています。


また、TSMとBlitzの職場雰囲気について匿名の元従業員は「スタートアップのようだった」と説明しています。そのため、TSMおよびBlitzには通常の企業では当たり前の新人研修やフィードバックシステムなどが存在しておらず、それが従業員の離職率の高さに現れているとThe Washington Postは指摘。実際、TSMおよびBlitzでは幹部クラスの従業員が突然退職するケースが頻繁に発生しており、Blitzの製品担当ヴァイスプレジデントがわずか4カ月で退職するなど、事例は枚挙にいとまがないとのこと。

なお、冒頭の人事担当者解任劇の際に開かれたような全社員参加型の会議は、「他に開催された記憶がない」と元従業員は語っています。そのため、TSMの社員はしばしば「削除されたSlackアカウント」や「上司へのメールがエラーで戻ってくる」を目にするケースがあるそうです。

元従業員のひとりは「(Blitzの共同創設者である)アディルかアンディのどちらかと対立すると、不思議なことに数日後にはその人物が解雇されているんです」「そのため、社内での対立が良い結果をもたらすような企業でないことは明らかです」と語っています。

また、2020年後半に開催されたVALORANTの初代地域チャンピオンを決める公式大会「FIRST STRIKE」の決勝でTSMが100 Thievesに敗北した際、ディン氏は会議に参加し、チームが予定していた戦力補強を無理やり白紙に戻したそうです。

100 Thieves Wins First-Ever Valorant Championship! – YouTube
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また、TSMとBlitzの元契約社員の契約書を確認した専門家は、契約がカリフォルニア州の雇用法に違反している可能性があると指摘しています。実際にBlitzで働いていたという元契約社員は、「遠隔地から仕事をしているため正社員として雇用することはできない」と言われたことを明かしており、それでも週40時間の労働を強いられたと主張しています。なお、この人物は正社員になるためカリフォルニアへ引っ越したそうですが、「正社員登用は放置された」とのこと。

別の元契約社員は、TSMで働くことに初めは興奮しており、深夜まで何の苦もなく働けたと語っていますが、そのような過酷な状況が続くにつれ燃え尽き症候群となってしまったと語っています。元契約社員の多くは仕事量に見合った報酬を受け取れていないと感じながらも、「正社員になることを夢見て働き続けた」とのこと。

なお、ある従業員は「TSMで社員が幸福を感じられるような瞬間に遭遇したことはありません」と語っています。

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