書き出し小説大賞第235回秀作発表

エスカレーターの終わりにつまずく。夏はすぐそこ。

タカタカコッタ

タンバリンを首にかけ、君に服従を誓う。

人馬一体勘

生きている理由は、まだ分からない。死ぬ理由もまだ見つからないけれど。

七寒六温

春には春の匂いがした、あの田舎はどこに行ったのだろう。

あの

屋上で、焼きそばパンと鈴木、本当に好きなのはどっちなのか考えていた。

午前0時

夕闇に押し潰される前に坂を下りきる。

いずも

おれは水色デブ。

正夢の3人目

僕は本気だったのに、君は台本通りの嘘をついた。

坂上田村麻呂の従兄弟

僕の母さんは昔、雲をあやつることができた。

葱山紫蘇子

プールの底は夏の雨を知らない。

みよおぶ

とうもろこしには浮く粒と沈む粒が存在し私は沈む方を好んで食べた。

自由人

プロポーズを聞きながら、わたしはカサブタをいじっていた。

もんぜん

「今家に半額の寿司があるよ」と元カレからＬＩＮＥがきた。

Airda

威嚇するには十分に大きい印鑑を出した。

ビールおかわり

「もう、あんたには会いたくなかったんだけどね」と彼女は言った。

白山林檎

手をつないで二人で校庭を走った。はじめて授業をサボった。

もんぜん

昨日は友達、今日は敵。

ウチボリ

私達には合言葉がある。

元彼は全員ゴミ

タバコの匂いが二人を引き剥がした。

人馬一体勘

３人とも、このビーチで自分が一番かわいいと思っていた。

昼行灯

おそろいの匂いのシーブリーズをつけた私達は、自習室の机の下で小指を絡めた。

さくさく

櫻の園が燃えている。

寂寥

「ここは私が」「今日は私よ」「いいのよ奥さん」「だめよ」……『じゃあ割り勘ね』と二人は同時に銃を抜き、お互いの背後の敵にぶっ放した。

ぐるりん

漫才コンビW松岡のツッコミ担当は、この春で佐藤になる。

七寒六温

美女木ジャンクションで、彼女たちの運命は交差した。

モンゴノグノム

社長室の陽子さんと東急ハンズの前で待ち合わせをした。応援うちわの材料を選んで欲しいのだという。

南極行太郎

僕の入り込む余地が無い。

あの

マイコの吐いた毒をマミコが佃煮にして売っている。

あの

二人でお雛さまを飾った。

タクタクさん

ひなちゃんと力をあわせて先生をやっつけてうみ組のへいわをとりもどす。

節度亜図夢

どんな値引きシールも私たち「御徒町ビューティ」の包囲網をくぐり抜けることはできない。

g-udon

餅つきの要領で、里美がDV夫の体を固定して、私が杵を振り下ろす。千代子ちゃんがひっくり返す役。

葱山紫蘇子

あなた、2007年のOLみたいな顔してるわね。

もろみじょうゆ

探偵事務所に3台のママチャリが止まっている。

はらけん

顔にかかった髪が明日を予感させる、彼女がわたしには眩しかった。

圏外

あんたがハイヒールで私がサンダルってのは、ちょっと納得がいかない。

はらけん

ルリがあの日ホームに立っていなければ、
ルリが気まぐれで私のことを見なければ、
ルリの目が深くて美しい藍色でなければ、
私は普通に学校に行ったはず。

正夢の3人目

この工場では「友情」を作っています。あなた達はそのモデルに選ばれました。

正夢の3人目

姉に初めて花を贈る。

井沢

姉妹の様に仲が良いのは喫煙所にいる時だけだ。

吉田髑髏

母の同級生が集合したリビングは、凄味があった。

suzukishika

本当の嘘を教えてくれたのは貴女だけだった。

Ｓ.虚無

見えない姉を切除してもらう今日まで、私は双子だったのだ。

ミミズグチュグチュ

潜った先に見付けたウニを、ふたり同時に指を差す。

ろっさん