採石場の様子を見てみたい。大きな重機で岩肌を削り、時には爆薬で破壊する。そんなダイナミックな現場は一体どんな事になっているのか?高まる期待を胸に秘め、ドキドキの採石場取材に行って来ました。
巨大な石と格闘する男たちの姿を、どうぞご覧ください。
オマケで特撮ヒーロー物風な写真も撮ってきましたので、合わせてご覧下さい。
(photo by 林 雄司)
※2004年4月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
羽黒青糠目石採掘元を訪ねる
今回、採石場の取材にご協力いただいたのは川俣石材工業さん。茨城県岩瀬町で日本の3大名石といわれる「羽黒青糠目石(はぐろあおぬかめいし)」を採掘している。
JR水戸線の羽黒駅に着くと、社長の川俣均さんが出迎えてくれた。
「採石現場までは車で10分程度ですので、どうぞ」
白いオデッセイに乗り込み、社長の運転で現場に向かう。
「発破はやはりダイナマイトですか?」
今日一番のお楽しみ、発破について早速聞いてみた。
「えーと、発破には火薬を使うのと爆薬を使うのと、2種類あるんです」
・火薬=材料として使える石を綺麗に割るための発破
・爆薬=風化の進んだ石など使えないものを壊すための発破
ダイナマイトは爆薬にあたるので石を壊すための発破に使うが、今回は火薬を使った発破を見せてくれるとの事。
「山のふもとに火薬庫と言って火薬とかダイナマイトとかを格納している所があるんですけど、ちょっと寄って行きますか?」
ええ、是非とも。
部外者は中を見る事が出来ないので、外から小屋を眺める。
「その日に使う分の火薬しか山には持ち込めないんです」
割とカジュアルに佇む火薬庫を前に、社長さんがそう説明してくれた。火薬を使う時は必要な分だけここから持ち出して使う。それが規則なのだそうだ。
「じゃあ、山に向かいましょうか」
再び車に乗り込み山道に入る。
鋪装されていないデコボコ道を登り、標高800メートルにある採石場を目指した。
採石場に行くもう1つの目的
採石場といえば、特撮ヒーローものの戦闘シーンが思い浮かぶ。悪者がヒーローにやられて爆発するのは採石場と相場が決まっている。
例えば仮面ライダーの名場面をカードにしたライダーカードを見ても、採石場で撮影されたものが多い。
・イカデビルは、死神博士だ!
・4怪人とライダーとの戦い
・死を呼ぶ氷魔人トドギラー
・見ろ!あの火はショッカーの仕業では?
今回、せっかく採石場に行く訳なので、ライダーカードの様な写真も撮りたいと思う。
カメラは友人から借りた「SX-70」というポラロイドカメラを使う。どんなものでもノスタルジックに写ってしまう不思議なカメラだ。
次ページ以降、最下部の「おまけ」部分にライダーカード風の写真を掲載します。是非、ご覧下さい。
※SX-70の詳細は「楽屋訪問、お邪魔シマス」をご参照ください。
標高800メートルの採石場へ
採石現場はお昼休み中だった。
嵐の前の静けさなのか、ウグイスの鳴き声だけが聞こえていた。
社長の案内で採石場を見下ろせる場所へ。
深さ30メートル。眼下に広がる採石現場の全景を見渡す。
す、すごい! この時、一瞬自分の高所恐怖症を忘れた。
作業が始まるまでまだ時間があったので、採掘された石をストックしている場所を見せてもらった。
採掘されたものの中から石材として使用出来るのはほんの10%程度に過ぎず、残りの90%はキズがあったり、色にムラがあったりで使いものにならないらしい。
キズなどがなく、建築石材として使用出来る石は別の場所に積み上げられ、そこからトラックで加工工場へと運ばれていく。
セリヤ割りで石を割る
お昼休みも終わり、3名の作業員さんたちがそれぞれ配置についた。
「発破の前に、ハンマーで石を割る所をお見せします」
採石場の一番低いところに案内され、「セリヤ割り」というハンマーで石を割る作業を見学することに。
石にはそれぞれ「石目」という割れやすい目がある。
その石が採れる地域の地質構造に起因して石目の方向が決まるらしく、羽黒地区の石は東西方向に石目があり、それに沿ってセリヤというくさびの様なものを打ち込む。
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動画:セリヤ割りの様子
職人さんがセリヤをハンマーで叩き、カキーンッカキーンッという乾いた音が響く。セリヤが徐々に深くめり込んでいくと、途中で音が変わり、やがて、大きな青糠目石がパックリと2つに割れた。
発破の衝撃を期待するあまり、一見地味な作業の様に見えるが、ハンマー1つでこんな大きい石を割ってしまうのだから、やはり凄い。
凄い事は凄いけど、次はいよいよ発破の出番である。
1回目の発破、ターゲットは10トンの石!
今回の発破のターゲットとなる石の総重量はなんと10トン。曙の体重が220kgだから、曙45人分になる。すげー!
とにかく、火薬による発破を2回行ってこの石を崩す。
この難しい発破作業を仕切るのは、川俣工業の親方、川俣強さんだ。
この道35年のベテランで、この山での採石は今年で20年目を数える。
「静電気で爆発する事もあるから、こうやって放電するんだよ」
親方はそう言うと、岩肌に両手をついて見せてくれた。
「今の季節だったらまだましだけど、冬場は特に危ねえから」
「ちゃんと放電しないとな」
「この火薬がここで暴発したら、僕たちは…?」と、僕が聞くと
「まあ、いっちゃうわな」と、一言。
まあ、そうですよね、曙45人分ですものね。
「それから、ここにある石は自然がくれた大切なものだから」
「丁寧に扱わなくちゃいけないんだ」
親方は静かにそう語ると、手際よく発破の準備を始めた。
20分ほどで1回目の発破準備は整った。
僕たちは発破の様子をビデオカメラにおさめるため、仕掛けの見える位置に三脚を立ててカメラを回し、そこから更に離れて見守る。
「よーし、いくぞー!」
親方が叫ぶ。
僕たちは息を飲んだ。
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動画:発破1発目、10トンの石が煙りを上げた!!
ドーンッ! 発破は一瞬だった。
仕掛けた石まで駆け寄ると、石の根元に亀裂が走っているのが見えた。
発破のチャンスはあと1回。
果たしてこの石を完全に崩す事が出来るのか?
2回目の発破、ついに石は……
親方が次の発破準備をしている間、川俣社長からお話を聞いた。
今ここで採れている石は、いつまで採石可能なのか?
「うーん、そうですね。そればっかりは分らないんです」
石が出なくなったらどうするのか?
「また別の場所を探しますよ。石掘りはロマンですから」
社長は親方の仕事を見守りながらそう言った。
その間に親方は手際よく2度目の発破準備を終えた。1回目よりも準備時間は短いようだった。
そして、僕たちは再び先ほどの布陣につく。
「よーし、いくぞー」
「あ、は、はい!」
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動画:テングマン第3話「テングマン危機一髪」の巻
ドーンッ!
2回の発破によって10トンの石は完全に崩れた。
ブレーカーと呼ばれる重機で石を更に割り、運搬出来る大きさに整える。
こうして、今日の採石作業は成功に終わった。