世界最大翼幅双胴機のストラトローンチ社、極超音速機のテスト機をお披露目

GIZMODO

シアトルを拠点とする航空宇宙企業Stratolaunch Systems(ストラトローンチ・システムズ)社は先月末、航空機「Talon-A(タロン-A)」の試験機の姿と、同機が超巨大な母機に収まる写真を公開しました。同社は早ければ今年のうちにテストフライトを実施すると語っています。

新たにお披露目されたモノトーンのテスト機「TA-0」は動力を備えておらず、自力で米国モハーヴェ砂漠の上空を飛び回るわけではありませんが、極超音速飛行において重要な一歩となります。Stratolaunch社のプレスリリースによれば、TA-0は母機から航空機をリリースするシステムのテストと検証、そして分離する際の力学の特性評価にも用いられるとのこと。

上記のテストを今後数カ月のうちに実施してから、プロトタイプ「TA-1」が巨大な航空機「Roc(ロック)」から発射されて極超音速フライトを試みるという動力付き航空機でのテストフライトへと移行するようです(極超音速機とはマッハ5.0以上で飛行できる航空機やミサイルのことで、超音速とはマッハ1以上のこと)。

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2022年5月4日、5度目のフライト中の母機Roc
Photo: Stratolaunch

Rocの試験飛行は3年前に初めて行われ、5月初旬には5回目のテスト飛行が実施されました。世界最大の翼幅を持つ双胴型の母機は、翼幅が385フィート(117メートル)、重量が約250トン。離陸するには1万2000フィート(3.65km)の滑走路が必要になります。

2011年に創立したStratolaunch社は、ヴァージン・ギャラクティック社のスペースシップツーと似た手法で航空機を宇宙へ発射することを目標に掲げていました。近年は方向転換を図り、今は極超音速機に注力しているものの、スペース・プレーンの開発は同社の長期的な目標であり続けているようです。Stratolaunch社は現在、極超音速の脅威(中国とロシアからの極超音速ミサイルの脅威のこと)への対策を練るための試験プラットフォームを提供するという契約を、アメリカ国防総省のミサイル防衛局(MDA)と結んでいます。国防総省は専用の極超音速機を獲得したら、それらに対するさまざまな防衛戦略を試すでしょう。

同社のプレスリリースには、「Talon-Aテスト機の性能は科学的研究、技術的な発展そしてコンポーネントの実証に欠かせない極超音速飛行環境への定期的なアクセスをついに可能にする」と書かれていました。

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母機Rocに初めて接続されたTA-0テスト機
Photo: Stratolaunch

Talon-A分離テスト機の初披露に加えて、Stratolaunch社はRocの中央翼部分にあるパイロンにTA-0が装着された画像も公開しました。5月4日のフライトでデビューしたパイロンは、極超音速機Talon-Aを積載・リリースするために設計されており、スキンはアルミニウムとカーボンファイバー製で重量は8,000ポンド(約3.6トン)。パイロンの尺は14フィート(約4.3m)と、95フィート(約29m)あるRocの中央翼には十分なゆとりが残ります。その上、航空機の積載に役立つウィンチ装置も備わっているので地上支援の必要を減らせます。

Talon-A航空機の次世代バージョンはロケットエンジンを搭載し、極超音速でカスタマイズ可能なペイロードを運べるようになります。TA-0のテスト飛行がうまくいけば、今年後半にTA-1の極超音速テストにつながるかもしれません。同社のプレスリリースによれば、3機目の航空機「TA-2」は目下製造中で、TA-1と異なり完全に再利用可能になるとのこと。

合衆国は3月に極超音速ミサイル実験をしましたが、2月20日にウクライナに侵攻したロシアの反感を買うという懸念から公表を差し控えていたとCNNは報じていました。

Source: PR Newswire (1, 2), GeekWire

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