一体どんなゴミ収集なんだ?
はたらくおじさん、はたらくおじさん、
こーんにーちーはー♪
坂の町・長崎では、ちょっと特殊なゴミ収集を行っている。狭い石段が山の上の方まで続いているような地区では、ゴミ収集車が家のそばまで入って来られない。今回はその長崎の特殊なゴミ収集を紹介したい。
私はその日、大変衝撃的な光景を目の当たりにし、感動して鳥肌が立った。こんなすごい仕事をしている男たちがいたとは…!
※2005年5月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
坂の町・長崎
長崎は坂の町である。
四方を海と山に囲まれており、平地部分が少ない為、人々は山の斜面に家を建てて暮らしている。(参考記事)
典型的なところになると、狭い石段が山の上の方まで続いており、車が入れる余裕など到底ない。
ゴミ収集どうする?
こういう地区ではむろん、ゴミ収集車も入れないが、
ゴミ回収所は普通に、石段の途中途中にある。
さて一体、どうやってこれらのゴミを集めているのか?
1) ロボットが取りに来る
2) スイッチを押すと地下に消える
3) 放置
4) その他
答えは、4番のその他で、なんと
「ソリを持ったおじさんがゴミを集めて降りてくる」
というのだ。
是非、その光景を見たい
「面白いから、一度見に行った方がいいですよ。」
という知人からのススメもあり、今回は是非、ソリを持ったおじさんが降りてくる場面を見てみたいと思う。
長崎が坂の町とは言え、どこもかしこも急な坂道ばかりではなく、私が住んでる辺りなどではそういう特殊なゴミ収集はしていない。よって私はまだ見たことがなかった。
タンちゃんとペロくんは気球で、私はバスで
早朝、バスに乗って私は目的の場所へと向った。
目的は「ゴミ収集を見る」、だ。
着いてみると、ゴミはまだあった。
ゴミの人はいつ来るんだろう?
もしかすると午前中いっぱいぐらい待たないといけないかもしれない。そう思ってふとデジカメをチェックすると、バッテリーが切れかかっているではないか。近くにはコンビニは見当たらず、八百屋のようなところで予備の単3電池を購入。ついでにトイレにも行き、戻ってみると…。
目に飛び込んできたもの
20分ほど目を離しているあいだに、すでにゴミが集め終わっていた。
が、その光景がなかなかすごかった。
そこには大量のゴミ袋が、緑のソリに強引に積み上げられた状態で置かれていた。
高さは人の背丈くらいある。ゴミの塊。
これを運んで階段を下ってきたのか!!
2種類のタイプ
緑色の運搬台には、写真のようなそりタイプと、滑車が付いたものと2種類ある。滑車は平坦な道を転がしていくのに便利だが、傾斜が激しいところではスピードが出過ぎて止まらなくなるため使えない。
何やってんだ自分
しかしそれにしても。
せっかく早朝やって来たというのに、肝心の場面を見られないとは悔しい。というか、愚かだ、自分。
しかも積み上げられたゴミの山を目の当たりにしたら、前よりもさらに見たくなってきたではないか!
ゴミ捨て場にいた泉ピン子のようなおばちゃんに
「ちょっと遅かったみたいね。」
とか言われた。演出のようだ。
ということで、翌日また出かけてみることにした。
2度目の訪問
翌朝、再び同じ場所を訪れた。
すると…。
その日は不燃ゴミの日だった。
不燃ゴミは各自で下まで持って来ることになっていた。
さすがに不燃ゴミは重いので、ソリに積んで運ぶことは危険過ぎてできないようだ。
またしても取材は空振りに終わる。
三顧の礼
もう、こうなったら「三顧の礼」である。
三国志で、劉備が3回も足を運んでようやく諸葛孔明に会えたように、私もゴミの人に会うため何度でも足を運びたいと思う。
ってことで、また早朝のバスに乗りゴミ回収所へとむかった。三度目だ。
ゴミはまだあった。
三度目だけに、今度こそ逃さないぞ。
デジカメのバッテリーも尿タンクの空き容量も充分。
あとはひたすらゴミの人が来るの待つだけだ。
階段で猫とすれ違う。
ネコは華麗なるフォームで颯爽と階段を下っていく。
この辺りは猫も多い。
歩いていると、人よりも猫に出会う数の方が多い気がする。人1に対して猫3ぐらいの比率かも。
やっぱり長崎はネコが多い。(参考記事)
ひたすら待った
こうして、ゴミの人があらわれるのをひたすら待つ。
いい天気だ。
近くの工場からは始業前のラジオ体操の音が聞こえる。
なにもしないでボーッと過ごす時間は長い。
そしてついに…!
さらに待つこと数十分。
ズザザッ!!
おお、この音は!
ゴミの人、ゴミを集める
ズザザッという重低音と共に緑のソリをひいてきたゴミの人は、おもむろに回収所にあるゴミをソリに積み込み始めた。
効率よくゴミを積むため、上に乗っかって圧縮。
高く積み上げるための板もポイントだ。
そしてまた階段を下っていった。
ゴミもこれだけの塊になると相当重いらしく、一度止まると動き出す時には
「ゥオオイッ!」
と掛け声をかけて動き出す。
一度勢いがつくと、今度はソリが疾走しないように速度を抑えなければならない。足腰への負担もかなりきつそうだ。
こんな急勾配かつ道幅の狭い道をも、ゴミを積んだソリは降りて行く。見てる方がドキドキするくらい。
それは無理なんじゃないかってところも、強引に曲がっていく。すごい。
これでラストだ
長い石段を下りてきて、ようやく最後の階段にまで辿り着いた。ここを下れば完了である。
回収所にあるゴミをさらに積み上げた後、一呼吸おいて
「ゥエエエイ! ゥオオオオーーーー!」
と最後の気合を入れる。上着も脱いだ。
ハンマー投げの金メダリスト・室伏広治選手も声を上げて投げるが、あんな感じ。メダリスト級。
閑静な住宅街に、気合の雄叫びが響き渡る。
坂を下ってくる途中でどんどんゴミを積み重ねて来ているるので、この時点が最も重い状態となっている。
積み増しを重ねたマックスな状態のソリが、ゆっくりと動き出す。
あれ…!?
ちょっとスピード速過ぎやしないか…。
と思ったその時…!!
勢いに乗って加速し過ぎたソリは制御不能になり、
壮絶にクラッシュ。
「だ、大丈夫ですか!!」
これだけの量のゴミと共に倒れたのだから、ヘタしたら大怪我を負うところだが、幸いにも怪我はなく無事だった。
倒れているおじさんの姿には、大変胸を打たれた。
こんな命がけの仕事をしている人を私は今まで間近で見たことがあっただろうか?
その後、
私も散らばったゴミを積み直すのを一緒に手伝った。
それはけして偽善的な気持ちからではなく、感動しながらゴミ集めを手伝った。鳥肌も立ってたかも。
これで全て完了、お疲れ様でした!
と思いきや、おじさんは再び階段を登っていった。今日は全部で3つほどこの塊を下ろしてくるという。心底頭が下がる思いを感じた瞬間だった。
(全部独りでやってるわけではないとのことだが)
話によると、この方はこの道32年のベテラン。
それでもたまに壮絶にクラッシュしてしまうことがあるという。素人には迂闊に手出しできない危険な仕事だ。
が、体力的に厳しいのでそろそろ引退かな、とも言われていた。ちなみにこのおじさん、プロレスラー並に体格がいい。普通の体格の人だったら、あの場面はけっこうヤバかったと思う。
こんな壮絶な仕事、私は初めて見たかもしれない。
はたらくおじさん、はたらくおじさん、
さーよおーならー♪