人間が作り出す「都市」が生物の進化を駆動する大きな原動力になっているとの研究結果

GIGAZINE



人間は地球環境を大きく変化させており、数多くの生物を絶滅追いやっている指摘されています。クローバーという呼び方で知られるシロツメクサを対象にした新たな研究結果は、人間が生物を絶滅させているだけでなく、「生物の進化を推し進める大きな原動力になっている」ことを示しました。

Global urban environmental change drives adaptation in white clover
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abk0989


New, clearest evidence yet that humans are a | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/946241

A New Study Has Identified a Dominant Force Driving Evolution on Earth Today
https://www.sciencealert.com/we-humans-are-now-a-dominant-force-driving-evolution-on-earth

トロント大学ミシサガ校の研究者が率いる国際的な研究チーム「Global Urban Evolution Project (GLUE)」は、日本を含む世界26カ国の160都市やその近郊でシロツメクサのサンプルを11万個以上も採取し、人間による都市化が地域や気候帯をまたいだ地球規模でどのような進化を促したかを分析しました。シロツメクサはヨーロッパと西アジアを原産とする植物ですが、現代では地球上のほぼすべての都市で見られるため、都市環境が進化に及ぼす影響を調べる上で有用だとのこと。

サンプルを分析した結果、都市部に生えているシロツメクサは近くの農地や森林に見られるものよりも、遠く離れた都市に生えているシロツメクサとより似ていることが判明しました。都市がもたらす類似性は気候の影響よりも強く、たとえばトロントの都市部に生えているシロツメクサは周辺の森林に生えている個体よりも、東京の都市部に生えているシロツメクサとより似ていることが示されたとのこと。

科学系メディアのScience Alertは、これは別々の集団が異なる場所に存在する同じ選択圧が特定の形質の変化を促すことによる、並行的な適応進化の一例だと指摘。つまり、人間が作り出した「都市」という環境がもたらす選択圧が、集団的遺伝学や気候といった要因より強い影響を進化に及ぼしているというわけです。


トロント大学ミシサガ校の進化生物学者であるMarc Johnson氏は、「この規模の進化に関するフィールド研究や、都市化が進化にどのように影響するかについての世界的な研究はこれまで1つもありませんでした」「私たちはこれが地球規模で、しばしば同様の方法で起こることを示しました」「都市化が並行進化を推進するには、都市は生物の適応度に影響を与える環境的特徴に収束しなければなりません」と述べています。

研究チームは都市部に生えるシロツメクサと農村部に生えるシロツメクサで異なる点として、シアン化水素の分泌量を指摘しています。シロツメクサは草食動物から身を守ったり干ばつに対応したりするためにシアン化水素を分泌しますが、最も都市部から遠い農村部に生えるシロツメクサでは、都市部のシロツメクサよりシアン化水素の分泌量が44%少なかったと研究チームは報告しました。

共同研究チームを率いたトロント大学ミシサガ校の博士課程に在籍するJames Santangelo氏は、「私たちは長い間、都市をかなり深く変化させ、環境と生態系を劇的に変えてしまったことを知っていました」「しかし今回の研究は、同様のことがしばしば世界的な規模で、似たような方法で起こることを示したのです」と述べています。


今回のプロジェクトを共同で率いたトロント大学ミシサガ校のロブ・ネス助教は、「都市は人が住むところであり、今回の研究は私たちがその中で生物の進化を変えているという最も説得力のある証拠です。生態学者や進化生物学者という枠を超えて、これは社会にとって重要な意味を持つことになるでしょう」と述べました。

なお、過去の研究でも「コンクリートでできた高速道路の橋桁に住むツバメの羽が短くなった」「クロウタドリの鳴き始める時間が人間の生活リズムに合わせて早くなった」といった変化が確認されているほか、「都市部の哺乳類はより夜行性になっている」との研究結果も報告されています。

動物の進化は人間が作り上げた「都市」によっても影響を受けている – GIGAZINE


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