為替と株価

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為替と株価というテーマは大なり小なり、割と興味の度合いが高いテーマです。「株もやらないし、海外旅行も行かないから」という方でもスーパーで調理用油やマヨネーズ、小麦粉が値上がりすれば当然、気になってくるもので、今後どうなるのかはそれなりに知りたいことだと思います。

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為替については3月11日付のブログでこのままでは先進国で日本だけが通貨安となり、ローカルカレンシーに落ちぶれることになる、と警鐘を鳴らしました。この時はまだ、為替が動いているという意識は一般的にはあまりなかった時期です。更に、3月19日の今週のつぶやきで「為替は節目を超えると『底抜け』で一気に動く」とし、124-125円が視野に入ってきたと述べました。あまりこんなことで自慢はしたくありませんが、ドンピシャとなりました。

124円というのは今年の初めにミスター円こと、元財務官、現在は青山学院の教授でもある榊原英資氏が指摘したレートでもあります。先見の明というか、さすがその世界で生きてきた方には俯瞰するチカラがあると唸りました。

ではこの先です。節目は125円で昨日、一時的ながらも抜けました。前回の円安の際には日銀、黒田総裁がそれ以上の円安は困るという趣旨で125円が攻防戦とされてきました。しかし、現在の日銀のスタンスは「初の連続指値オペ」という専門的な技を使って長期国債の金利上昇を0.25%に抑え込む姿勢を明白にしたばかりです。ということは今回は125円攻防ラインはないとみています。

とすれば「異次元男」は「異次元の円安」を演じて舞台から降りる気なのか、という気もしないでもありません。当地のアナリストでは最も過激な予想で150円です。言わんとしているのは日本経済が負の連鎖に陥ることで経常赤字が膨大になる点を嫌気するというものです。

私が気になるのは一旦異次元の円安になると円高に戻しにくくなる体質が生まれる点です。貿易については輸出のメリットと輸入のデメリットがあります。確かに自動車業界では兆円単位のメリットが生まれるようですが、海外で進むインフレに円安のダブルパンチが一定以上となれば国民生活全般に広く影響が出る上に日本がそこから巻き返せるだけの経済力を持ち合わせるかどうか、ここが気になるところです。

もう一つは先進国の中で円だけ独歩安になればアメリカあたりから「お前はずるい」という声が出るはずなのですが今のところその兆候は見られません。これには2つ可能性があり、1つは自国経済が調子よいので円ぐらい多少安くても構わないし、円は既にローカルカレンシーという認識を持っているのか、少子高齢化が進む日本は今後、世界経済脅かすような状況にならないとみているのかのどちらかではないでしょうか?

超長期のドル円チャートからは125円を抜ければ2002年の135円、1998年の145円という節目となりますが、個人的には現時点では135円を目指す展開に入るかどうかの節目とみています。

日本の株式市場の方ですが、9連騰後、一服で専門家の見方は配当取りの買いは終わったといいますが、新年度入りの買いが控えていますし、この為替水準ですと海外から見た日本の株価が割安になるのです。また出遅れた個人の買いがまだ十分に動き出しているとも思えず、まだ上に向かう余地はあるとみています。

株価や為替の動きを分析するチャート主義者は世の中の動きがほぼその枠組みで説明できるという前提です。確かに統計学的にも確率論的にも概ね、正しいことが多く、私を含めて、実際にそれを大いに活用しています。ただ、時々チャートを無視した動きが起きるのです。今の円ドルの為替チャートはその典型です。なぜそのようなことが起きるかといえば今までの常識ラインが変わるからでこういう時はチャートを無視してどこにセトルするのか、見定める必要があるのです。

私は年初に2022年度の株価予想はできない、と申し上げました。世の中で激変を引き起こす可能性のある事象や案件が多すぎるので予想不可能だからです。これは逆に株価も為替も乱高下しやすいという意味でこの乱気流に飲まれるのか、乱気流にうまく乗るのかで全く違う成果となるでしょう。

いろいろな意味で日本は過渡期にあると思います。その試練をどう潜り抜けるのか、国内要因と海外要因をしっかり読み込めねば投資家は勝てない、そんな厳しい時にあるとみています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年3月29日の記事より転載させていただきました。