絶食状態で8年、計27年間生き続けたダニ

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アメリカの研究者が「27年間も生存したというだけでなく、うち8年は完全な絶食状態で生き延びた」というダニについての研究結果を新たに発表しました。このダニはオスが全滅してから約4年後にメスが子孫を産んだとのことで、新たに生まれた第二世代を対象にした研究が続けられる予定です。

Record Longevity and Reproduction of an African Tick, Argas brumpti (Ixodida: Argasidae) – PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34897423/

Ticks survive for 27 years in entomologist’s lab | Binghamton News
https://www.binghamton.edu/news/story/3485/ticks-survive-for-27-years-in-entomologists-lab

Keep on Ticking: Entomologist Tells of Ticks’ 27-Year Lifespan
https://entomologytoday.org/2022/01/14/keep-ticking-argas-brumpti-ticks-longevity-27-year-lifespan/

新たに驚異的な生存力を持つダニについて報告したのは、ニューヨーク州ビンガムトン大学生物化学部のジュリアン・シェパード准教授。シェパード准教授は1976年にケニアで採取された「Argas brumpti」というダニをプレゼントされ、このダニを研究室で飼育することにしました。

Argas brumptiはアフリカ東部・南部のサバンナや砂漠などの乾燥地帯に分布する大型種で、皮下に硬質な層を有する種が大半を占めるダニの中で比較的外皮が柔らかいというのが特徴。また一般的なダニは数日にわたってエサを摂取し続け、食後は体形が変わるほど膨張するものが多いそうですが、この種は比較的サクッと食事を切り上げる点も特徴とのこと。

シェパード准教授が飼育していたArgas brumptiの実物が以下。写真の個体かどうかは不明ですが、飼育していた中で最大の個体は全長2cmに達したそうです。


シェパード准教授は、プレゼントとしてもらった成体のオス4匹・メス6匹、そして幼体3匹をガラス瓶に入れて、ダニの生育に最適とされる摂氏21度・相対湿度81%を保ち続けました。しかし、最大の問題だったのは「エサ」で、当初はシェパード准教授が自分の研究課題のために飼育していた実験用のウサギ・マウス・ラットなどにArgas brumptiを寄生させていましたが、1984年に動物実験を行わなくなったため、このダニたちはエサが与えられなくなってしまいました。

こうして強制絶食させられることになったダニたちは、オスが約4年後に全滅。一方メスはさらに4年生き延びたところで、シェパード准教授が再びエサを与えるようになったとのこと。

こうして絶食状態で計8年生存したメスたちの間に、シェパード准教授は「卵」を発見します。シェパード准教授によると、ダニはメスのみで単為生殖する種も多いものの、Argas brumptiにおいてはほぼあり得えないとのこと。近縁種において「オスから渡された精子を生殖管の中にため込み、餌を食べた後に受精する」という研究結果が存在することから、シェパード准教授は「オスから4年以上前に受け取った精子を、エサを再び摂取したことによって受精したのでは」と推測しています。


この卵は無事孵化したそうで、成長した第二世代はDNA解析によってダニの系統分類を行っている南アフリカの研究チームに送られる予定。シェパード准教授は今回の研究結果について「ダニの生存能力と適応能力に感服しています。彼らは食事を得るために待ち続けるというニッチな能力に特化しています。特に今回のArgas brumptiは、絶食状況でも生き延びられるという希有な例です」とコメントしています。

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