ショック、恐怖、戸惑い……24日のロシア軍のウクライナ侵攻を受け、ロシアの首都モスクワと南部ロストフの大勢の人々が漏らした言葉だ。一方で、ウラジミール・プーチン大統領の決断を糾弾(きゅうだん)するか称賛するかは二分した。
モスクワでBBCの取材に応じた、きれいな身なりの若い男性は、ウクライナ侵攻について落ち着いた意見を述べた。
「何かあったとは聞きましたが、状況を理解するところまではいっていません」
しかしすぐに一緒にいた友人が、罵倒の言葉を口にしながら彼の言葉をさえぎった。
「ショックを受けています」とこの友人は話した。
「戦争を目の当たりにしたことなどないのに、今まさにそうなろうとしています」
鮮やかな青いコートを着た男性は、焦燥しているようだった。
「何をすればいいか分からないし、とても怖いです」とこの男性は語った。
「でも恐怖とは別に、自国当局がやっていることが恐ろしいし、恥ずかしいといった感情があります。周りの友人たちも同じ気持ちです」
「今の権力者たちに投票したことはありません。ロシアに住む人間が政治活動としてできる限りのことはしましたし、抗議にも参加しました。でも今はできないと思います。みんな、あまりにおびえ切っている」
1人の女性は、戦争には反対だが、ウクライナ侵攻のニュースをどう捉えればいいか分からないと話した。
「政治家たちが自分たちの問題をどうにかしようとして、一般の人々が苦しんでいます。私の家族にも良い影響はないでしょう」
モスクワ中心部のプーシキン広場には、ウクライナ侵攻に抗議する人々が集まった。BBCロシア語のアナスタシア・ゴルベワ記者によると、警察が解散を命じる前には200人以上が集まっていたという。
「戦争反対!」と叫んだ人はみな、拘束された。
ある若い男性はBBCの取材に、「1日中泣いていました。ウクライナの人々が死んでいきます。子供たちも、戦っている男たちも死んでいきます。それからどうなるんです? 私たちのような、ロシアの19歳や20歳の男も戦場に送られるんですか?」と話した。
抗議に参加するのは怖くなかったのかと質問すると、「いいえ、怖くはなかったです。ウクライナや国境で起きていることこそ恐ろしい。私たちがここでしていることなど、何でもない」と答えた。
抗議活動から離れた場所で取材に応じた水色と紺色の服の男性は、ウクライナもロシアも支持しているが、ウラジミール・プーチン大統領は支持していないと話した。ロシアでこれほどはっきりとした批判の声を上げる人は、昨今では珍しい。
「(ウクライナ侵攻は)我々の指導者が地政学的な野心を満たすためにやっていることだ」とこの男性は語った。
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一方で、BBCが取材した中年男性2人と高齢女性1人は、侵攻を支持した。
野球帽を被った男性は、ウクライナ国内の「ロシア人保護」について語った。ウクライナ人を非難し、「こうした状況に陥ったのは自業自得だ」と話した。
「ウクライナ人は歴史的に、いつも厄介だった」
ピンク色のコートと帽子姿の女性も、ウクライナ国内のロシア人に言及した。「あそこにはロシア人も住んでいます」と。
では、ウクライナに住んでいるウクライナ人は?
我々のこの質問を女性は、「ウクライナ人はほとんどがテロリストです」と一蹴し、国営テレビとユーチューブから情報を得ていると付け加えた。
別の中年男性は、「これは平和のための賭けなんです、すべてはうまくいきます」と話した。
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ウクライナ東部の分離派が支配する地域からの難民を受け入れている南部ロストフでは、モスクワよりもさらに不安が広がっていた。
1人の女性は、この出来事をどう受け止めたらいいか分からないと話した。
「ここから余りにも近いところで起きているので、心配しています。でも何が起きているのか完全には分かっていません」
「テレビで流れているニュースは信用していませんから」
赤いダウンコートの女性も、不機嫌そうな表情で「とても怖いです。子供たちのことが不安です」と語った。
白髪交じりの男性は、悲しみを隠せない面持ちで大げさに問いかけた。
「我々はかつて大戦争に勝ったというのに、今度は自分たちの間で戦争をしているなんて」
一方、ニット帽と毛皮のコートを着た若い女性は、プーチン大統領のとった行動は正しいと明言した。
「ただ公平なだけです。今起きていることは、奪われたものが返ってくるだけ」
ピンクのコートにマスクと眼鏡姿の女性も、ウクライナ侵攻は良い動きだと話した。
「私たちは生き延びます。資源の豊富な大国ですから。制裁ごときで私たちを屈服させるなんて、誰にもできません」