自販機にお金がのまれた。どうしよう?(デジタルリマスター)

デイリーポータルZ

日常にひそむ悲劇

ある日、駅のホームの自販機で飲み物を買おうとした。お金を入れてボタンを押す。あれ、出ない。取り出し口を隅々まで調べても、引っかかっている様子はない。おつり・返却レバーを回しても音沙汰なし。
入れたお金は130円。

実は以前も、違う自販機でお金がのまれたことがあった。急いでいたので諦め、他の自販機で買ったのだが、後になってもなんとなく釈然としない気持ちだった。

今日は急いでいないし、たかが130円でこの自販機をキライになりたくないし。
よし、今回は面倒くさがらずにお金を取り戻すことにしよう。

さて、まずどうしようかと考える。
とっさに思う事は「駅員さんのところまで行って事情を説明しお金を返してもらう」だが、どうやらそれは昔の話らしい。

最近は自販機に貼られているステッカーの電話番号に連絡するのが主流になっているのだそうだ。

今日は急いでないから、キミととことん付き合いたい。
この銀色のステッカーをチェックだ。

 

電話をしてみた

すぐにオペレーターの女性が出た。

 

私:「自販機にお金をいれても商品が出てこないのですが・・(場所や商品の説明)」

オ:「申し訳ありませんでした。自販機の7ケタの識別ナンバー(四角で囲まれた番号)を教えて下さい。」

私:「○×です。」

オ:「今どちらですか?お時間ありますか?」

私:「この駅にいますが、これから出かけるところです。」

オ:「お住まいはお近くですか?」

私:「はい。」

オ:「明日は、お時間いただけますか?」

私:「はい。」

オ:「では、明日連絡します。」

要約するとこんな感じだった。

地味だけどとっても重要なステッカーですね。

驚いたことに、最初の言葉は「これから届けます」風のニュアンスだった。
急いでいないとは言え、出かける予定があるので駅にとどまるのは避けたが、場合によってはすぐ持ってきてくれたりもするのか?
今度のまれた時は、用事があっても時間があると告げて待ってみたい。

さて、明日どんな連絡が来るのだろうか。なにか指示とかされるのだろうか。駅まで呼び出されるのかな。徒歩10分だけど、130円のために往復というのもちょっと割に合わない気もするな。

などと考えながらも、何と言われるのか楽しみになってきた。

ちなみに出なかったのは紅茶花伝のミルクティー。

翌日、電話がきた

昼の11時頃、男性から電話があった。

 

男性:「○○と申します。昨日○○駅に設置されている自販機の件でご連絡を頂きましたが間違いないでしょうか。」

私:「はい。」

男性:「ご住所をお聞きしてよろしいでしょうか?」

私:「ああ、はい○○○です。」

男性:「実は自販機にのまれてしまったお金ですが、現金ではなく郵便為替でお返しすることになるのですがよろしいでしょうか?」

私:「はい。」

男性:「ありがとうございます。このたびはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」

なんと、為替で送られてくるようだ。

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駅員さんにも聞いてみました

せっかちな人や、ステッカーに気づかない人などが駅に返却を求めてくることはないのだろうか。

ーーちょっとお聞きしたいのですが、駅の自販機にお金がのまれてしまった場合について質問してもいいですか?

「はい、いいですよ。」

ーー駅の方に返却を求めるお客さんというのは、多いのでしょうか。

「いますね。でも自販機は駅とは基本的に別なんですよ。立て替えはしません。ですので直接電話をかけてもらうようにお願いしています。」

ーーそうすると、中には文句を言うお客さんもいるのでしょうね。

「ええ。でもうちは自販機の管理全般にノータッチなんです。故障している時に貼り紙をするくらいしかできないので。」

なるほど、一度立て替えてしまうときりがなくなるのか、ガードは固いようだ。

参考までに、別の駅でも聞いてみた。

「たまに酔っぱらったお客さんがしつこく要求してきたりすると、面倒だし周りのお客さんにも迷惑なので払ってしまうこともありますね。」

なるほど、その気持ちもわかりますな。

上の駅より少し利用者の多い駅でも聞いてみた。

 

一週間後、為替が届いた

丁寧なお詫び文とともにやってきた郵便為替。

コカコーラから何の用だ?と一瞬思ったが。
定額小為替なので額面が200円。図らずも得してしまったよ。

堂々と取り戻そう

駅の券売機ではすぐに人が出てきてくれるが、自販機は電話をしなければならない。きっとのまれても半分くらいの人は諦めているのではないだろうか。少額だけに、電話をして返却を求める事に抵抗を感じる人もいると思う。あとで電話しようとメモっても、電車を一本逃すかもしれない。
しかし少額だからといって以前の私のように諦めてしまうと、それ以後なんとなくその自販機で買う気が失せるし、前を通っただけでもちょっとだけブルーになるという面白くない日々が始まってしまうので、堂々と取り戻してほしいと思う。ようは金額の問題ではないのだ。

今回は駅でのケースだったが、これがお店の前や会社のビルに入っている自販機だと便宜を図りやすいので対応がまちまちなようだ。知人の勤務先のビルでは「不具合がありましたらここに連絡先を書いて下さい」と自販機にメモ用紙とペンが備え付けてあり、書いておくと補充のお兄さんから電話がかかってくるそうだ。たいてい会社の人なので渡しやすいのだろう。

基本的にはステッカーの連絡先に連絡するのが正しいらしい。
急いでいる時は、ステッカーを携帯カメラで撮るといいですよ!

あの日以来、何が起こっても動じない姿勢でボタンを押せるようになりました。

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