新型コロナウイルス・オミクロン株の国内での流行が続いています。感染力が強いオミクロン株の流行を止めるのは難しいので仕方がないと思いますが、岸田政権の対応は水際対策の強化などを除いて前例踏襲的で機動的でなく、安倍-菅政権の失敗が全然生かされていません。
岸田首相は、感染が下火だった昨年のうちに検査能力の拡大目標をたてつつ、感染対策のデジタル化を徹底的に進めるべきでした。我々は先日も提言を行いましたが、少なくとも①ワクチン未接種者への接種要請、②3回目接種の迅速化、③感染症法における新型コロナウイルスの位置づけに関して現行の「2類相当」からの運用上の分類変更(5類への変更ではない)、④検査数の拡大、⑤ワクチンパスポートアプリの有効活用については、全く持って不十分だと言わざるを強く言わざるを得ません。
菅前政権の数少ない功績といえば河野太郎氏をワクチン担当相に任命し、昨年11月には遅ればせながらもG7の中でトップクラスの2回目接種率を達成したことが挙げられましょう。しかしながら、各国がその後未接種者へ接種政策を強力に進めたのに岸田政権はほとんど何もやっていません。ワクチン未接種の高齢者が重症化しやすい傾向があるのは明らかなのにそこに手を付けないのは全く理解できませんが、結果として、2回目接種完了率ではアメリカを除く他の先進国と変わらなくなっています。
さらに、ご存じのように3回目接種の遅れはOECD最下位レベルで目も当てられない状況です。岸田首相が厚生労働大臣・ワクチン担当大臣とも初入閣となる議員をあてたのはコロナ対策を軽視していたとも考えられます。特に堀内詔子ワクチン担当相の力量には疑問符が持たれていますが、権限やスタッフも十分でないとのことなので接種が進まないのは当然です。堀内大臣は兼務する五輪相の任期が3月末で切れることからそれと同時に退任するという見方もありますが、逆に言えばそれまで国民に我慢しろというのであればとんでもないことです。
新型コロナウイルスの感染症法上「2類相当」という位置づけに関しては安倍政権の時から問題になっていますが、岸田首相は1月中旬、「感染が急拡大している中での変更は現実的ではない」という意味不明な言い訳をして否定しました。では、昨年10月に首相に就任してから感染が広がるまでの3か月間一体何をしていたのでしょうか? 日本維新の会はリスクを軽視して5類相当にまで下げるべきだと主張していますが、そうしなくても陽性者の自宅療養は可能であり、現在では(いかにも日本的ですが)なし崩し的に自宅療養のケースが増えてきています。パンデミックが始まって以来2年も経つのに、自民党政権がコロナにふさわしい分類を作ってこなかったのは怠惰と言わずに何と呼べばよいのでしょうか?
検査数の不足については、橋下徹氏のように「検査、検査でみんなパンク状態。なんのための検査なんだ」などと無責任なことを言い続けている人がいますが、パンデミックが始まってから2年も経つのに、日本の検査数は人口が半分の英仏の1/4~1/5レベルです。都内では、年初から感染者数が20倍までに増えているのに検査件数は2倍ほどで頭打ちとなり、医師の診断のみで感染者と見なすことも可能となりました。これについても、岸田首相は3か月間何をやっていたのでしょうか?
デジタル庁が発行しているワクチンパスポートアプリに関しても、お粗末としか言いようがありません。4割しか普及していないマイナンバーカードを保有しないとアプリを使用できないという時点で感染予防対策には効果がないのは明白でしたが、リリース自体が12月下旬まで時間がかかった挙句にPCR検査や抗原検査の結果を搭載する機能がないというどうしようもない代物です。デジタル庁の役人と話して、彼らが感染予防対策に関して知識がなく、厚労省との意思疎通も上手くいっていないことがわかりました。
時短・休業要請により飲食店等が営業できなくなることを防ぐためには、①アプリ使用の際のマイナンバーカード登録強制の解除、②PCR検査・抗原検査等の結果・新型コロナウイルス感染歴の記載機能の搭載を一刻も早く実現させるべきです。アプリ提示によって、ワクチン2回接種および最低でも抗原検査の陰性を確認できた(つまり基本ワクチン+検査両方の結果の提示が必要)客のみ入店を許可した店舗に関しては、通常営業を認めるべきです。ワクチン・検査パッケージの重要性に関しては欧米関係のニュースを見ていれば重要性がわかると思いますが、外相を長く務めた後に自民党の政調会長を務めるまでした岸田首相の意識の低さに呆れざるを得ません。
以上、岸田政権のコロナ対策の失敗をさんざん指摘しましたが、他国のオミクロン感染動向が日本にも当てはまるならば、今月下旬には国内での感染も下火になって来るかもしれません。それ自体は良いことなのですが、何が良くないと言えば、自民党政権はピークが過ぎればアナログで戦略性が欠如したコロナ対策の失敗を顧みることなく、同じことを繰り返すであろうということです。
国民一人一人の高い意識のおかげで、これまで日本のコロナ関連死者数は他国と比べ少ないレベルに抑えられていますが、コロナによって日本の政治・行政の非効率さが際立ったように思えます。今からでも感染症対策の効率化・デジタル化を進めて、オミクロン後には鎖国政策も解除しないと日本が欧米諸国や韓国から各方面で相当な遅れを取るのではないでしょうか。
鈴木 しんじ
博士(理学)
日本型大統領制を実現するリベラル新党、政治団体「社会民主進歩党」代表
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