こちらが戦国時代のインスタント味噌汁の材料。芋がら。
「芋がら縄」と言われる物があります。里芋の茎を干して作った芋がらを縄状に編んだ後、味噌で煮込んでから乾燥させた物です。
戦国時代の兵士は、これを戦場食として持って行ったそうです。食べる時は必要な長さに切り分けお湯を注いで(煮込んで)味噌汁として食べたのだとか。
そんな戦国時代のインスタント味噌汁を作ってみました。
※2007年9月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
芋がらは煮ても、炒めても、和えても美味しい
芋がらは「ずいき」とも呼ばれています(関西では「割菜」とも言う)。大雑把に言えば、里芋の茎を細かく裂いて皮を剥いて干したものです。
各種の栄養分を多く含み、カビなどが生えなければかなりの長期保存が可能な食品です。昔は保存が利く安価な栄養食品として多く食べられていました。しかし、作るのに手間がかかるのか最近はあまり見かけません。調理も少し手間がかかります。
水で戻して、煮て、柔らかくして、アクをとって。ここまで来たらやっと味付けの段階になります。軽くて常温で長期保存が出来るけれども、そのまま戦場食として持っていかなかったのはこういう手間がかかるからなのでしょう。
一度煮て柔らかくなったものは適当な大きさに切り分けます。あとは煮物、炒め物、和え物など各種の調理法で料理可能。
調理したずいきは味が良く浸みていて、シャクシャクとした食感がとても美味しい。しかし、この食感からはインスタント味噌汁のような物になるとは想像がつきません。
とにかく作ってみなくては分からないので、調べた通りに作ってみます。
まずは縄を製作
芋がら縄を作るには、まず芋がらを縄状にしないといけません。縄の作り方にも色々あります。しかし、一応食品なのであまり激しい事をするのも気が引ける。
ということで、手で地道に編んで紐状にすることしました。食い物で編み物です。
編むのは結構得意です
芋がらは三つ編みにして紐状にすることにしました。2つを寄り合わせるだけでは強度が出せないと思われるし、編むのも簡単なので。
2本の間に残りの1本を重ねて編み続けること約10分。3本の芋がらから1本の芋がら縄の原型が出来ました。
編みあがった物は、何も言われなければ普通に縄として通用しそうな見た目となりました。とにかくこれを調理してみましょう。
水で戻した物を柔らかくなるまで煮てアクをとるところは通常の芋がらと同様です。編まれている為か、通常の物ほど膨らみません。煮あがって色が変わりちょっとグロテスク。
続いて味噌で煮込みます。
火を点けたり消したりしながら煮込むことおよそ30分。味噌汁を作るには長すぎる加熱時間。このぐらいやれば芋がら縄にも味が染みたでしょう。煮あがって取り出したものがこちら。
味噌で煮る前よりも茶色くなったというか、黒ずんだというのか。形状が変わらないのでより昆虫的な感じが増しました。特に食べる事が出来なくなるような処理はしてないので問題は無いはずなのに、やや心配になります。
いや、昆虫は食べられるから大丈夫か。大丈夫なのか?
続いて乾燥工程。それが終われば芋がら縄完成です。
珍味になった
味噌で煮込んだ芋がら縄は、乾燥させて保存や運搬がしやすいようにします。どのように乾燥させたらいいものか分からないのでとりあえず天日干し。
日が出て風のある爽やかな日が続き、2日ほどの天日干しで芋がら縄は程よく乾き完成しました。それがこちら。
出来上がった芋がら縄はかなり茶色い。持ってみると表面はカサカサに乾燥しています。思ったよりかは柔らかく、中にまだ水分が残っている感じ。もっと乾燥させた方がよかったか?
香りはかなり濃い味噌風味がします。目をつぶれば食べ物の感じがする。とりあえずこのまま食べてみます。
出来上がった芋がら縄をそのまま食べると、味噌の味がかなり強く醤油風味に感じます。噛むと味が染み出してきて、珍味的な味わいがある。
思っていたよりもかなり美味しい味でした。ご飯にも酒にも合いそうな味です。これなら手軽な酒の肴として家に常備しておいてもいいかもしれない。ただ、見た目とのギャップがあるので、小さく切り分けておいた方がいいでしょう。
芋がら縄を持って旅に出よう!
そのまま食べると意外に旨かった芋がら縄。最初にも書いたように、戦国時代の兵士はこれを戦場食として携帯していました。ならば私も携帯して外に出て味噌汁になるか確認してみます。
旅の準備です。
芋がら縄は汁物ということで、オニギリを用意しました。これで移動食は万全です。これらを担いでちょっとその辺まで走りに行きます。休憩場所でオニギリと味噌汁のご飯とします。
ちなみに、昔の人は芋がら縄を帯代わりにもしたようですが、帯にするほど長さが無く、仮に長さがあっても強度的に問題がありそう。なによりも、帯代わりにした縄は食品であって、汗で汚れるのはいかがなものか。ということで、タッパーに入れて運ぶこととしました。
川までやってきた
暑さも和らぎ秋風もふき始めたとある休日の午後。芋がら縄とオニギリを持って川沿いまで走ってきました。ここなら広い野原もあって、味噌汁飲むには最高です。
小一時間ほど川沿いを走った後は休憩タイム。原っぱに手ごろな台があったのでそこに荷物を広げます。
お碗をセットして芋がら縄を投入。そこに湯を注いで暫く待てば味噌汁が完成するはず。
出来上がった物をそのまま食べた時、噛み切るのにはそれほど大変ではなかったものの、引きちぎるにはちょっと硬すぎたので事前に手ごろな長さに切っておきました。戦国時代は刀で切っていました。多分。
お湯を注いでみたところ、特に何も変わりません。お湯の中に芋がら縄が二つ。香りが凄くしてくるということも無い。
お湯を注いでから5分ほど放置してみました。芋がら縄の表面が少しふやけて毛羽立ってくる。他には変化なし。とりあえず、この時点で飲んでみました。
飲んでみると、確かに汁物的な味がします。ただ、味噌汁ではありません。お吸い物と言った方がいいでしょう。塩気があって、ほんのりとダシと醤油の風味。
箸で芋がら縄を突き崩してみると味は濃くなります。しかし、どうみても味噌汁とは言えない。お吸い物止まりです。
これそのものは美味しいです。汁物として十分味わえます。ただ、事前に調べた情報のように味噌汁とはなりませんでした。
煮込めば違うのか?
事前に調べた情報によると、芋がら縄は水に浸けたり、お湯を注ぐだけでなく、頭にかぶる陣笠などを利用して煮て食べたともありました。もしかして、煮崩れてくるぐらい加熱すると味噌汁に近づくのかもしれません。
いずれにしろ、味そのものは美味しいです。そのまま食べれば珍味的に味わえるので、残っている芋がらでもう一度作ろうかと考えています。それは携帯食として持ち出さず、酒と一緒に家で楽しむでしょう。