by Kevin Gill
映画スター・ウォーズシリーズに登場する銀河帝国の宇宙要塞「デス・スター」は、巨大な天体型の軍事宇宙ステーションです。そんなデス・スターに似ているといわれている土星の第1衛星・ミマスについて、「氷の下に液体の海がある」という可能性が指摘されています。
The case for an ocean-bearing Mimas from tidal heating analysis – ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0019103521005091
SwRI scientist uncovers evidence for an inter | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/940521
Saturn’s ‘Death Star’ moon could have a secret underground ocean | Live Science
https://www.livescience.com/saturn-death-star-moon-hidden-ocean
1798年に発見された土星の第1衛星・ミマスは直径約400kmの天体であり、表面には数多くのクレーターと峡谷が存在します。ミマスにあるクレーターの中で最も大きいハーシェルは直径約130kmもあり、周壁の高さは約5km、底面の深さは約10km、クレーター中央の丘の高さは約6kmとのこと。
そんなミマスは、「スター・ウォーズシリーズに登場する軍事宇宙ステーション『デス・スター』に似ている」と言われたり、「サーマルイメージ(熱分布図)がパックマンに似ている」と指摘されたりしています。アメリカ宇宙機関(NASA)も「ミマスはデス・スターに似ている」というネタにちなんだ画像を作成しています。
by NASA’s Marshall Space Flight Center
ミマスについては、NASAなどが打ち上げた土星探査機・カッシーニの観測データから、秤動と呼ばれる振動運動を行っていることがわかっています。ミマスの秤動は自身の軌道運動のみで説明することが難しいため、以前から「ミマスの内部には海があるのではないか?」と指摘されていました。
ところが、「内部に海があるならば潮汐(ちょうせき)力によってミマス表面の氷にひび割れなどが見られるはず」との反論もあり、秤動は別の要因によるものではないかとの説もあります。アメリカ・サウスウエスト研究所の地球物理学者であるアリシア・ローデン氏は、「エンケラドゥスやエウロパといった内部に海を持つ惑星は、表面のひび割れや他の地質学的兆候を示します」と述べています。
そこでローデン氏らの研究チームは、土星との重力相互作用によってミマスの内部が温められる潮汐加熱により、表面の氷を破壊せずに内部に液体の海を持てるかどうかを調べるモデルを作成しました。そして、潮汐加熱モデルによる分析を行ったところ、ミマスでは表面に厚さ24~31kmの氷を持ったまま、内部で液体の水を維持できることがわかりました。ローデン氏は、今回のシナリオが特別な調整を加えたものではなく、氷の外殻の安定性から見て現実的なシナリオであり、秤動の観測結果とも合致するものだと主張しています。
ローデン氏は、「ミマスが海を持っているということは、表面から海が漏れることがない新しいタイプの『ステルスな』海洋世界の存在を表しています」「結局のところ、ミマスの表面は私たちをだましていました。私たちの新たな理解は、『潜在的に居住可能な世界』の定義を大幅に拡大しました」とコメント。つまり、表面が氷で覆われていてひび割れなどの地質学的兆候が見られないミマスに海があるならば、水および水に支えられている生命が従来の想定よりはるかに多く太陽系内に存在する可能性があるというわけです。
今回の発見により、今後の探査においてミマスが有望なターゲットとなる可能性があります。ローデン氏は、「今回の結果はミマスに海があることを裏付けるものですが、ミマスの軌道や地質学的特徴と、現在の熱および軌道進化の理解を一致させるのは手ごわいテーマです」と述べ、ミマスの研究が土星や天王星に存在する居住可能な海洋衛星について理解する上で、魅力的な研究ターゲットであると主張しました。
この記事のタイトルとURLをコピーする