「アーティストのためのベーシックインカム」をアイルランドが開始する予定

GIGAZINE
2022年01月19日 21時00分
メモ



新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって多くのイベントが中止された結果、展示やライブイベントを行う多くのアーティストが打撃を受けました。アイルランドではパンデミックの影響を受けたアーティストを支援するため、「アーティストを対象にしたベーシックインカム」の給付を開始する予定です。

‘Once in a generation’: Basic income pilot for artists to start in early 2022
https://www.irishtimes.com/culture/once-in-a-generation-basic-income-pilot-for-artists-to-start-in-early-2022-1.4756353

Ireland to Launch Universal Basic Income Program for Artists – Artforum International
https://www.artforum.com/news/ireland-to-launch-universal-basic-income-program-for-artists-87612

Ireland Introduces Basic Income Program for Artists – ARTnews.com
https://www.artnews.com/art-news/news/ireland-basic-income-pandemic-artists-program-1234615406/

アイルランドはパンデミックによる打撃を受けた芸術・文化セクターを支援するため、国内のアーティストや文化労働者を対象にした初のベーシックインカムを導入する予定です。アイルランドの観光文化芸術大臣を務めるキャサリン・マーティン氏は、ベーシックインカムのパイロットプログラムにおける基本計画についての意見を募るため、2022年1月6日~1月27日の日程でオンライン協議を開始しました。

今回のベーシックインカムプログラムは、アイルランド国内の芸術・文化・視聴覚・ライブパフォーマンス・イベントなどの分野で働く人々の支援が目的です。アイルランド政府はこのプログラムに2500万ユーロ(約32億4000万円)を支出し、3年間で2000人のアーティストらに分配するとしており、プログラムの開始は2022年後半になる予定だそうです。

アーティストらに対するベーシックインカムの給付は、マーティン氏が設立したアート・カルチャー回復タスクフォースが2020年11月に提出した報告書でトップの推奨事項としていたもの。タスクフォースのクレア・デュイニャン委員長は、「芸術文化セクターの生存・回復・持続可能性は、短期的および長期的に経済政策と意思決定に依存しています。この計画は、セクターの持続可能性の面で真に変革的である可能性を秘めています」と述べています。


記事作成時点では、ベーシックインカムを給付するアーティストの選出するプロセスについて評価中だとのこと。観光文化芸術省によると、このプロセスが競争の形式になる予定はなく、応募者数が利用可能者数を超えた場合はランダムで選出されるそうです。また、給付額については最低賃金に当たる1時間当たり10.5ユーロ(約1360円)が提案されていますが、給付についての詳細は決まっていません。

マーティン氏は声明の中で、「私たちがパンデミックから学んだことは、ロックダウン中の人々がどれほど芸術に依存し、熱中していたかということです」と述べ、美術館やギャラリー、劇場の閉鎖はアーティストだけでなく一般市民にもダメージを及ぼしたと主張。ベーシックインカムの給付は「一世一代の政策介入」であり、うまくいけば今後数年にわたって芸術文化の振興につながるとマーティン氏は訴えています。

長年にわたりベーシックインカム実現に向けて活動してきたNational Campaign for the Artsのアンジェラ・ドーガン会長は、対象となる人数には限りがあるものの、幅広いアーティストを対象にしている点に満足しているとのこと。将来的にベーシックインカムがパイロットプログラムを越え、永続的なプログラムになる可能性もあるとのことで、「ベーシックインカムはゲームチェンジャーです」と述べました。

なお、アイルランドの政策は、2021年5月にアメリカのサンフランシスコ市が開始した、「6カ月にわたり130人のアーティストに毎月1000ドル(約11万5000円)のベーシックインカムを支給する」というプログラムに続くものです。サンフランシスコ市のプログラムも、パンデミックで影響を受けた芸術文化セクターの支援が目的でした。


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