独自の「アップル宿題リスト」から読み解く、2022年の展望と注目ポイント(前編)

CNET Japan

 1回目のiPhone 13シリーズ、第2回目のiPad、第3回目のMac、第4回目のウェアラブルとホームアクセサリに続く第5回目は2022年の展望の前編だ。

 筆者は毎年、「今年のApple宿題リスト」を作っている。

 Appleは基本的に、プラットホーム全体でその製品の品質や体験をそろえていこうとする。そうした中で、その年の製品に技術的に間に合わなかったこと、製品の差別化のためにあえて積み残したことなどが存在し、これを段階を追って解決していく傾向にある。そこに照らして、2022年以降に取り組むテーマについてのチェックリストを作っているのだ。

 必ずしも確度の高さの順ではないが、それぞれのチェックリストについて、解説を加えていきたい。

iPhone SEの5G対応

 2020年に発売されたiPhone SEは、iPhoneラインアップの中で唯一5Gに対応していない製品だ。この5G化は、2022年もしくは2023年に行われるのではないか。

 ご存じの方も多いかもしれないが、iPhoneラインアップの中で1台あたりの利益が最も多いのは、iPhone SEだ。チップこそ2019年に登場したA13 Bionicが搭載されているが、それ以外は筐体もディスプレイもホームボタンも、iPhone 8のものを踏襲しており、開発費を回収し終えた製品だからだ。

 その発売時期によって、形が変わるかもしれない。2022年に登場するなら、現在のiPhone SEと同じiPhone 8のボディで5G対応を果たすことになるだろう。しかし2023年にずれ込むなら、iPhone 8のボディを使うだろうか。

 2022年モデルのiPhoneからは、5.4インチサイズがなくなるとのうわさがある。2021年モデルのiPhone 13 miniは、バッテリー持続時間が向上し、1日安心して利用できるだけのスタミナを備え、問題解決をしてきたことを考えると、5.4インチサイズがなくなるという話と一致しない。

 もし5.4インチサイズを5G対応のiPhone SEの第三世代として活用するなら、2021年に行われた問題解決は納得がいく。あるいは、2022年以降もminiサイズが続くなら、やはり2023年に登場するiPhone SEも、現在と同じデザインになるだろう。

M1 Pro/M1 Max搭載のデスクトップ

 Apple Siliconはノート型モデルから順に登場している。飛躍的なバッテリー持続時間向上と、飛躍的な性能向上の両立は、今まで非力だったエントリーモデルのMacBook Airで最も効果的に演出できた。

 続いてM1の高性能版であるM1 Pro、M1 Maxが登場し、ノート型のMacの性能を大きく引き上げた。デスクトップが要らないじゃないか、といえるほどの性能で、筆者もメインマシンをノート型に置き換えた。

 ノートラインアップはすべてのリプレイスが終わっているが、デスクトップの製品ラインは多くが積み残されている状態だ。M1搭載のMac mini(低価格モデルの置き換え)と、24インチiMac(21.5インチモデルの置き換え)が登場しただけで、次のモデルは引き続きIntelモデルの販売が続けられている。

  • 27インチiMac
  • Mac mini(6コアモデル)
  • Mac Pro

 これらのモデルのうち、Mac Pro以外は、現在MacBook Proに搭載されているM1 Pro/M1 Maxでの置き換えがちょうどよいのではないか、と考えられる。Intel Xeon Wを搭載する2017年のiMac Proをプロセッサ性能で上回ることができるため、その準備としてすでにiMac Proの販売を終了しているのだろう。

 Mac Proについては、プロセッサ性能もグラフィックス性能も、MacBook Proと同じでは魅力的にならない。Apple Siliconのワークステーションとして、驚異的な性能を発揮するマシンを作り上げなければならないのだ。

 現在のApple Siliconにおける最大容量のメモリは64GBに留まっており、これはアプリケーションとグラフィックスで共用だ。そのメリットももちろんあるが、だとすれば128GBや256GBといったユニファイドメモリを搭載できるマシンはインパクトがある。

 ただその場合、Appleはどんな手段で、Mac Proらしい性能を引き出そうとしているのか?最も単純な話としては、M1 Maxを2〜4つ並べたようなチップの構成だ。実際、M1 Proは性能コアやグラフィックス、最大メモリ搭載量を見ると、M1を2つ並べたような構成だ。同様に、M1 MaxはCPUはそのままだが、グラフィックス、メモリ、メディアエンジンなどがM1 Proの2倍備わっている。

 となると、M1 Maxの並列となると、CPUコアが20〜40、グラフィックスコアが最大64コア、メモリ最大256GBという構成が視野に入り、性能も現在のM1 Maxの2倍以上になることが考えられる。

 これらの製品の登場のタイミングについては、議論がある。2020年6月のWWDCで「2年でApple Siliconへ移行」と宣言しており、その年限が2022年6月に迫っている。たとえば、M1 Pro/M1 Max搭載のiMacやMac miniを2022年第1四半期に登場させ、6月に開催されるWWDC(世界開発者会議)で、最後の製品となるMac Proを発表するシナリオは、収まりが良い。

 ただ、M1搭載Maxの登場が2020年11月で、そこから数えるなら、2022年11月で2年だ。最悪、2022年末にMac Proを登場させるスケジュールも成立し、Bloombergなどはそのシナリオを想定している

M1の次のM2は?

 2021年のMacラインアップ展開を見て分かったことは、Mac向けMシリーズは、iPhoneのAシリーズのように毎年アップグレードしない、と言う点だ。

 M1は、2020年11月にMacBook Air・MacBook Pro・Mac mini に搭載されてお披露目となったが、全く同じ仕様で2021年4月発売のiMac 24インチに搭載され、その後2021年11月になってもM1の後継チップの登場はなかった。

 その代わり、2021年10月にMacBook Proに搭載されたM1 Pro/M1 Maxが用意されたが、これは前述の通り、M1を拡張したチップと位置づけることができる。

 iPhoneは毎年買い換える人が一定数いて、米国などでは「iPhone Upgrade Program」として月額払いで毎年乗り換えるプランも用意している。その場合、チップが同じでは買い換え動機が著しく削がれてしまうわけで、Aシリーズチップの強化は毎年行われる。

 しかしMacを毎年買い換えるのは、環境移行も考えると骨だし、せっかく50万円近くで最新のMacを手に入れても、それが1年もせずに陳腐化するなら、誰も50万円を払ってくれなくなる。

 その意味で、毎年のMシリーズチップの刷新は不要だし、性能を明確に向上させるだけの半導体自体の革新も、毎年のペースで期待できるわけではない。また、毎年刷新しなくても良いほどの競争力を、Mシリーズのチップは備えている。

 実際、もし2021年正月に2020年モデルのMacBook Airを手に入れたとしても、Geekbench 5のスコアでシングルコア1750前後、マルチコア7500前後、グラフィックス(OpenCL)が18000前後という性能は、Windowsのハイエンドノートに匹敵する性能を保持しており、まだまだ競争力がある。

 今後、M2として性能を向上させる際に注目するテクノロジーは、Appleが自社設計のチップの製造を委託しているTSMCの「5nm+」や「3nm」といった新しいプロセスルールによるチップ製造だ。ちなみに現在のM1シリーズやA15 Bionicは5nmプロセスでの製造だ。

 5nm+は、製造設備などをそのままに低コストでの製造が可能となり、また処理性能7%、電力消費を15%抑えられるとされている。M1の設計をそのままに5nm+へ移行しても、性能や省電力性の向上が期待でき、第二世代のMシリーズとして十分な競争力が期待できる。

 次回は、「Apple宿題リスト」から読み解く2022年の展望と注目ポイント(後編)をお届けする。

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