2000年に登場した「PlayStation 2」は、2012年までに累計1億5500万台販売された超人気ゲームハードです。そんなPlayStation 2をスーパーコンピューターとして利用する実験が、アメリカの国立スーパーコンピューター応用研究所(NCSA)によって実施されていました。
NCSA 30 | NCSA creates Sony PlayStation2 cluster
https://ncsa30.ncsa.illinois.edu/2003/05/ncsa-creates-sony-playstation2-cluster/
PlayStation 2は発売当初から「Linuxを用いて開発されたゲーム機」であることが知られており、PlayStation 2で動作可能なLinuxの公開を求める声が多く集まっていました。この状況を受けてソニーは2001年5月にPlayStation 2で動作可能なLinuxディストリビューション「PS2 Linux」をリリース。これによってPlayStation 2をコンピューティング用途に用いることが可能になりました。
PS2 Linuxの登場を受けて、NCSAの研究者もPlayStation 2に注目。その後、研究者たちはゲーム用途に最適化されたPlayStation 2の独自プロセッサを複数同時に動作させることで科学計算に役立つ可能性があると結論付けます。そして2003年に研究者たちは70台のPlayStation 2をクラスター化し、スーパーコンピューターとして利用する実験を行いました。PlayStation 2のクラスター化について報道したニューヨークタイムズは「このプロジェクトの最も印象的な点は、クラスター化に必要な作業が70台のゲーム機を配置して高速なHP製ネットワークスイッチで接続するだけだったことです」と述べています。
NCSAによると、PlayStation 2で有用な科学計算が実行されたのは短い時間だったものの、その影響は大きかったとのこと。NCSAのディレクターを務めていたダン・リード氏はタイムズのインタビューに対して「ゲームプラットフォームの経済性とコンピューティング能力を見ると、これは長期的な市場トレンドとコンピューティングトレンドと言えます」と、ゲーミング向けに最適化されたプロセッサ(GPU)が科学計算に積極的に利用されている現代のコンピューティング市場を予見するような意見を述べています。
なお、2006年に発売されたPlayStation 3もスーパーコンピューターとして利用され、アメリカ軍のドローンシステムに活用されるなど実践的な用途に使われていました。PlayStation 3がスーパーコンピューターとして利用された歴史については、以下の記事で詳しく解説しています。
PlayStation 3が「スーパーコンピューター」として研究分野で活躍した歴史 – GIGAZINE
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