崩壊30年も…なお消えぬ「ソ連の残影」 プーチン体制が象徴するトラウマとプライド

J-CASTニュース

   2021年12月25日で、1991年12月25日にソビエト連邦が崩壊して30年になる。共産主義の旗を降ろしたロシアだが、今なお世界一の国土と1億4000万の人口を抱える大国だ。2010年代にはウクライナ領クリミア半島の併合を宣言、最近でもシリアやウクライナへの軍事介入を続けている。

   強権姿勢を強める一方に見えるプーチン体制のロシアであるが、そこにはソ連時代からの国家観や崩壊後の記憶が影響している、との指摘もある。自ら「軍事オタク」と認め、ロシアの軍事・外交を研究する東京大学先端科学技術研究センター特任助教の小泉悠さんに聞いた。

   (聞き手・構成:J-CASTニュース編集部 大宮 高史)


  • プーチン体制にもソ連の残影は残る(写真:ロイター/アフロ)

国家の崩壊を二度目撃したプーチン

(小泉悠氏プロフィール)
1982年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業、同大学院政治学研究科修了(政治学修士)。外務省専門分析員、未来工学研究所研究員などを経て、東京大学先端科学技術研究センター特任助教。著書に「軍事大国ロシア――新たな世界戦略と行動原理」(2016 作品社)、「『帝国』ロシアの地政学――『勢力圏』で読むユーラシア戦略」(2019 東京堂出版)、「現代ロシアの軍事戦略」(2021 ちくま新書)など。「ユーリィ・イズムィコ」のハンドルネームでロシアに関する情報発信もネットで行っている。




ロシアと周辺地域の外交・安全保障を専攻する小泉悠さん

――30年が経ちましたが、ソ連の崩壊はロシア人にどう記憶されているでしょうか

「ソ連でなくなり超大国の地位を失った、というのがロシア人にはショッキングで悔しいトラウマだと思われます。社会でもソ連崩壊後は経済が破綻し給料も払われないから賄賂を取るのが当たり前、という時代が続きました。改革があまりに急激だったためにこんなめちゃくちゃになったのだ、という記憶がロシア市民にあり、プーチン大統領もその1人だと思います。彼は東ドイツ崩壊の時にKGB諜報員としてドレスデンにいて、帰国後にソ連崩壊も経験しています。いわば国家の崩壊を2度経験していて『国家というものは意外と脆い』と自覚しているかもしれません。
   プーチン体制で資源マネーなどでロシア経済は立ち直りましたが、90年代の酷い混乱を経験したという屈辱感とそこから大国にカムバックしたというプライドがロシア国民にはある。それは体制を支持する原動力のひとつといえます。2014年にクリミア併合を宣言した際も『大国』ロシアを市民に印象づけて支持率を上げました」

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