変異株はワクチン3回が鍵 英調査 – BBCニュース

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ジェイムズ・ギャラガー、BBC健康・科学担当編集委員

Getty Images

英健康安全庁(UKHSA)は10日、新型コロナウイルスのワクチンを2回受けただけでは、オミクロン変異株の感染は防げないと警告した。

イギリスで確認されたオミクロン株とデルタ株の感染症例を分析したところ、オミクロン株に対してはワクチンの効力が下がることがわかったと、UKHSAは初期段階の研究結果を示した

ただし、ワクチンを3回受けると、75%の人が新型コロナウイルス感染症COVID-19の症状をいっさい発症しないこともわかったという。

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国内の格差解消を担当するマイケル・ゴーヴ担当相は同日、各自治政府の首相と会合し、イギリスは現在「非常に懸念される状況」にあると述べた。

英政府の緊急治安閣僚会議(COBRA)に出席後に各自治政府首相と会談したゴーヴ氏は、これまでの感染対策は「相応」だったものの、担当閣僚はすべての対策を継続的に検討していると話した。

「なんとしても行動する必要があり、新しいデータが入るごとに、そのデータに対してどういう行動が必要か検討していく」と、ゴーヴ氏は付け足した。

イギリスでは10日までに新たに448件のオミクロン株感染が確認され、累計1265人となった。すべての変異株を含めて10日に確認された新型コロナウイルスの新規感染者は、5万8194人に達し、今年1月9日以来、最も多かった。

英政府は、イングランドの介護施設に対する感染対策のガイドラインを更新する方針。居住者1人あたりの訪問者の人数を制限したり、「現在のCOVID-19リスクを抑えるため」検査の頻度を上げたりなど、対策を強化するつもりだという。

ワクチンの効力は

ウイルスが数十カ所も変異しているオミクロン株が11月に最初に確認されて以来、ワクチンの有効性が後退するのかどうかが懸念されてきた。

UKHSAの報告は、オミクロン株の感染症例581件とデルタ株の症例数千件を分析し、それぞれの変異株に対するワクチンの効力を計算した。

使用しているデータは少ないものの、オックスフォード/アストラゼネカ製ワクチンの効果は劇的に後退し、ファイザー製ワクチン2回接種の効果もかなり下がることがわかったという。

追加(ブースター)接種後にオミクロン株によるCOVID-19の症状を防ぐ確率が75%というのは、他の変異株に比べると高くない。

モデルナ製やヤンセン製のワクチンについて分析するには、データが不足していたものの、両社のワクチンの結果がアストラゼネカやファイザーのものと異なるとは考えにくい。

しかしそれでもUKHSAは、ワクチンによっておそらく、入院治療が必要になるほどのCOVID-19の重症化はしっかり防げるはずだと指摘している。

これまでにイギリスでは約2200万人が追加接種を受けた。しかし、たとえ全員が追加接種を受けたとしても、ワクチンの効力低下によって数百万人がオミクロン株の影響を引き続き受けることになる。

研究室では、2回接種を受けた人の抗体がオミクロン株を中和する能力は40分の1まで減ってしまうというデータが出ている。現実世界のデータも、これを裏付けている。

感染者が増えてもワクチンの効果で、多くが入院しないで済むだろうという期待もある。重症化に関するデータは来週にも公表されるかもしれない。

しかし、たとえ症状がこれまでの変異株より軽症だったとしても、問題は残る。巨大な感染の波が一気に襲ってくれば、リスクの高い人たちが一斉に入院治療を必要とする事態もあり得る。

オミクロン株の感染者数の急増から、ワクチンによる防御機能をオミクロン株が回避している可能性がすでに指摘されていた。

感染者の数は2~3日ごとに倍増していると推定されている。

UKHSAは、12月半ばまでにイギリス国内の感染者の半数以上がオミクロン株の感染者となるだろうと試算している。増加ペースがこのまま増え続ければ、月末までに1日の感染者数は10万人を超えるかもしれないという。

UKHSAの免疫担当責任者、メアリー・ラムジー博士は、「こうした初期の推定は慎重に扱うべきだが、2回目の接種から数カ月後の人は、デルタ株よりもオミクロン株に感染するリスクが高いと示している」と話す。

「ワクチンはCOVID-19の重症化をかなり抑えるものと期待する。なので、最初の2回の接種がまだなら、今すぐ予約してほしい」と博士は呼びかけた。

イギリスでは現在、オミクロン株の感染者急増について懸念が高まっている。スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相は、「津波のように」感染者が増える恐れがあると警告し、スコットランドの自主隔離ルールを強化。クリスマスパーティーの予定を中止するよう住民に呼びかけた。

イングランドの介護施設では新しいルールにもとづき、居住者1人に認められる来訪者は、訪問者3人と介護提供者1人に限定される。

英保健・公的介護省は、2回接種を終えた居住者やスタッフの外出時の検査を増やすほか、追加接種を促進するため、ワクチン接種職員を拡充していると対応を説明している。

(英語記事 Omicron: Three vaccine doses key for protection against variant