日本で女性議員増えぬ本当の理由 – PRESIDENT Online

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10月14日に解散された衆議院では、女性議員の割合は約10%だった。政治のダイバーシティがまったく進まないのはなぜなのか、それが私たちの生活にどう影響しているのか。お茶の水女子大学の申琪榮教授は「女性こそがもっと政治に“口を出す”べきではないか」という――。

衆議院が解散され、万歳する前議員ら。女性議員の割合は約10%だった衆議院が解散され、万歳する前議員ら。女性議員の割合は約10%だった=2021年10月14日、国会内 – 写真=時事通信フォト

困った人を救うはずの政治が壁に

10月14日に衆議院が解散され、4年ぶりの衆議院総選挙が始まった。19日に選挙の公示、31日に投開票が行われる。各党から1051人が立候補して12日間の短い選挙期間に465議席を争う選挙キャンペーンが繰り広げられている。

4年前の選挙と比べて野党共闘が進み、事実上与野党一騎討ちの選挙区も大幅に増えて、有権者の一票一票が選挙結果を大きく左右する構図となった。今回の選挙を自民党は「未来選択選挙」、立憲などの野党は「政権交代選挙」と名付けて有権者の選択を求めている。

だが何よりも女性にとっては、今回の総選挙はとりわけ重要な選挙だ。コロナ禍で浮き彫りになった医療体制や貧困・格差の問題などで、女性やマイノリティーが大きな負担を強いられ、中には生活と命が脅かされる状況にまで追いやられた人も少なくない。

性暴力やハラスメント、選択的夫婦別姓、移住・外国人問題、LGBT政策など、女性やマイノリティーの切実な声は政治に届かず、困った人を救うはずの政治がむしろ逆に政策推進の壁となっている。

女性候補者はわずか17.7%

それは、市民の痛みや困難に耳を傾けて共感する政治家が少なすぎるからではないだろうか。多様性と人権を尊重する政治を実現するためには、これまで政治に参加することが少なかった女性や若者が政治に直接関わることが求められる。

しかし、日本の衆議院には女性議員が1割しかおらず、諸外国と比べて極端に少ない。それだけに今回の総選挙では、各政党がどれだけ本気で女性候補者を増やすのかに大きな関心が寄せられていた。

しかし、結果はとてもがっかりするものであった。衆議院議員選挙に立候補した1051人の候補者のうち、女性は186人、比率は17.7%にとどまった。前回の17年の衆議院選挙から変わらない数値である。

根強いクオータ制への誤解と抵抗

今年の総選挙は、2018年「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」(通称、候補者均等法、2021年6月に改正)が成立してから初めて行われる衆議院議員選挙である。同法は政党に、男女の候補者をできる限り均等にするよう努力義務を課している。

さらに昨年2020年末には男女共同参画社会基本計画が閣議決定され、2025年までに国政選挙の候補者に占める女性の割合を35%にする目標を設定した。女性議員が増えるためにはまず候補者に女性が増えることが必須だからである。

諸外国では女性候補者を増やすために多様な制度を導入している。日本でもしばしば話題になっている候補者クオータ制(女性や若者、少数民族などに候補者、あるいは議席の一定割合を与える)がその代表的な事例である。クオータ制は現在世界の約100カ国以上で実施されており、女性議員を増やすための速攻策と呼ばれている。

日本でも遅ればせながら2010年代半ばから、候補者クオータ制の法制化を目指した立法運動が始まり、各党への働きかけが続いている。

しかし国会の議論の中では「男性に対する逆差別だ」「能力のない女性が議員になる」などクオータ制に対する誤解や根強い抵抗があり、結局「男女の候補者をできる限り均等に」する理念を明記するだけで、実施を強制する措置を持たない理念法の制定にとどまった。女性候補者の擁立は、完全に政党の善意に委ねられることになったのである。

そのためか、制定直後の2019年に行われた統一地方選挙、参議院選挙のいずれにおいても法律の趣旨は生かされず、女性議員の増加は微々たるものであった。また今回の総選挙においても17.7%と、候補者の男女均等からは程遠い結果となり、女性議員の大幅増加は見込めない。

女性候補者を「増やそうとしない」政党

ただ、これには政党ごとに差があることも重要なポイントである。女性候補者の比率は、自民党が9.8%(前回7.5%)、公明党7.5%、立憲民主党18.3%(前回24.4%)、共産35.4%、維新14.6%、国民29.6%、れいわ23.8%、社民60.0%、N党33.3%であり、政権与党の女性比率が最も低い。

議席の大半を占める自民党は公認候補も多いので、自民党が女性候補者の擁立に消極的であることが平均値を下げるとともに、女性議員が増えない原因となっている。候補者均等法が求めている政党の自主的な努力への姿勢はほとんど感じられず、自ら合意した候補者均等法の趣旨を裏切る結果であると言わざるを得ない。

選挙の候補者掲示板※写真はイメージです – 写真=iStock.com/maroke

女性が少ないのは女性のせいなのか

これについて自民党の甘利明幹事長は「応募してくださらない限りは選びようがない」と、女性候補者が少ない理由を、女性自身が手をあげないところにあるとの認識を示した。

他党と比べて女性候補者の比率が桁違いに低い原因を、女性に求めるのは果たして適切だろうか。優秀な女性が手を挙げられない原因を分析し、それを乗り越えられるようにサポートするのが国民を代表する議員を輩出する政党の役割ではなかろうか。

政治学の研究によると、誰が、どのような方法で候補者を選定するのか、それが、どのような候補者が選ばれるのかに大きな影響を与える。つまり候補者の資格や望ましい候補者像は、選ぶ側の考えによって左右されるのである。

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