龍馬の銃好き 元教師が改造拳銃 – 阿曽山大噴火

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裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火です。今回傍聴したのは11月18日に東京地裁で行われた高田広司被告人(70)の銃砲刀剣類所持等取締法違反の初公判。

元中学校教師の男が殺傷能力のある改造拳銃を所持していたと報じられた事件です。

自ら「令和のドンキホーテ」と名乗ってYouTubeに改造拳銃を撃つ動画をアップしていたこともあって、逮捕当日のニュースでは被告人の動画が繰り返し放送されていましたね。(ちなみに被告人が逮捕されているのに、テレビ局の人は動画の使用許可をどのように取っているのかいつも不思議に思います)

全国ニュースで大きく報じられた事件ということもあって、この裁判は傍聴券の抽選が行われる予定でした。傍聴券はたったの19枚です。この数少ない傍聴券を求めて列に並んだ傍聴希望者は……16人。まさかの定員割れです。結局抽選は行われず、並んだ人は全員傍聴OKとなりました。

起訴されたのは、今年7月5日に愛知県名古屋市内の被告人の自宅で改造拳銃8丁と模造拳銃2丁を所持したという内容。

検察官の冒頭陳述によると、被告人は大学卒業後に中学教師になり、定年まで働いて現在は年金生活をしているといいます。前科前歴はなく、今回が初めての逮捕になります。

被告人は10代の頃からモデルガンを収集するのが趣味で、改造したモデルガンで実包を発射する動画をYouTubeにアップしていたとのこと。

取り調べに対し被告人の奥さんは「モデルガン集めの趣味は知っていた。違法な物が含まれているとは思わなかった。BB弾を撃っている時に火薬がはじけるような音がするのでマンションに響くからやめてほしいと言ったが『お前は神経質なんだ』と返された」と供述したそうです。

まさか夫が違法な改造拳銃を所持しているとは思ってもいないでしょうからね。それより近所に対しての騒音を気にしていたようです。

被告人は取り調べに対して「模造拳銃は10代の時に入手した物だが、当時は合法だった。ルールが変わって違法になってからも持ち続けていた。改造拳銃は、市販のモデルガンを改造していた」と述べたそうです。

法廷には同居している被告人の息子が情状証人として出廷です。まずは弁護人からの質問。

弁護人「まず、法廷で言いたいことはありますか?」
息子「三男として申し訳ない気持ちでいっぱいです」
弁護人「被告人がモデルガンを集めているのは知っていましたか?」
息子「はい」
弁護人「違法の認識はありました?」
息子「父の部屋に置いてあって、触ったこともないし、興味もないので」

被告人の奥さん同様、まさか違法な物を持っているとは思いもしなかったのでしょう。

弁護人「今後はどうしますか?」
息子「部屋にそういう物がないか確認します」

親を監督していくと約束していました。

続いて検察官から。

検察官「被告人の部屋を確認して、もし違法な物を見つけたらどうします?」
息子「破棄します」
検察官「いや〜…それだと証拠隠滅になるんですよ」
息子「あぁ、通報がベストなのであればそうします」

警察に連絡することを誓約していました。

改造拳銃で人は狙わず、ビスケットを撃ち抜いていた

ここから被告人質問です。まずは弁護人から。
弁護人「まず法廷で述べたいことは何ですか?」
被告人「危険な改造拳銃と模造拳銃を所持してしまい、迷惑をお掛けしました。悔やんでも悔やみきれません」
弁護人「まずは改造拳銃の方から訊きますね。実包を撃ったことはあるんですか?」
被告人「ありません」
弁護人「じゃあ改造拳銃はどのように使っていたんですか?」
被告人「オモチャのBB弾をキャップ火薬で撃って、ビスケットに穴を開けたり…」

市販のモデルガン用の火薬と弾でビスケットを撃ち抜いただけで、あくまでも人を狙ったことはないようです。ビスケットは食べるための物なのでもったいないという見方もできますが。

弁護人「持っている改造拳銃で実弾が撃てるなとは?」
被告人「考えたことはあります」
弁護人「撃ったことは?」
被告人「ありません、危険ですから」

一度も実弾は撃ってないというのを再確認です。

弁護人「全部自分で改造したんですか?」
被告人「はい」
弁護人「なぜ改造していたんですか?」
被告人「リアルな外観やリアルな仕組みが好きで、もっと実銃に近付けないだろうか、と」
弁護人「市販のガスで撃てるモデルガンとかエアガンでは満足出来ないんですか?」
被告人「私が好きなのは『天空の城ラピュタ』や『紅の豚』に出てくるような銃とか、あと龍馬の拳銃が好きなんですけど、ガスやエアは発売されていませんでした」

個人的に全く拳銃の知識がないのでどの拳銃も同じように見えるけど、被告人はムスカ大佐や坂本龍馬が手にしている銃が欲しかったんですね。しかも仕組みまでリアルな撃てるモデルガンを。まさかこんな所でジブリ映画のタイトルを聞くことになるなんて。

弁護人「改造した後はどうしていたんですか?」
被告人「部屋の中でビスケットを撃ち抜くのを楽しみにしていました」

きっと相当リアルな拳銃だったと思いますけど、ムスカ大佐も龍馬もビスケットは撃っていないでしょう。その辺は人を撃っちゃいけないと、きちんと線引きをしていたんでしょうね。

弁護人「改造拳銃を誰かに販売したことはあるんですか?」
被告人「ありません」
弁護人「改造の知識はどこで得たんですか?」
被告人「若い頃から拳銃に興味がありましたので、雑誌で得ました」

普通に雑誌に載っていた情報を元に改造して、1人でこっそり楽しんでいたのが現実でしょうか。

弁護人「ご自身のYouTubeのチャンネルではどんな動画をアップしていたんですか?」
被告人「ミリタリー模型が好きで、その中でモデルガンを見せながら銃の歴史的背景や特徴を伝えていたという感じです」
弁護人「説明する時に撃ったと?」
被告人「そうです」
弁護人「今YouTubeの方は?」
被告人「動画は削除して、チャンネルもなくなっています」
弁護人「どんな人が見ていたんですかね?」
被告人「ラジコンを動かすのが人気でしたので、そういうのが好きな人かなと」
弁護人「動画の反響ってどうでしたか?」
被告人「ミリタリー模型の方は結構反響ありましたが、銃は全くでした」

こだわって改造したわりには視聴者の反応は薄かったと。てっきり銃を撃ったり見せたりするのが好評なのかと思ったら独りよがりの動画だったわけですね。