イヤホンやヘッドホンの進化はすさまじく、製品も多岐にわたっているため、何をどう選べばいいのか分からない人も多いはず。そんな人に向けて、音響学を研究する音楽技術教授のティモシー・スー氏が「優れたヘッドホン・イヤホンの選び方」を解説しています。
Great headphones blend physics, anatomy and psychology – but what you like to listen to is also important for choosing the right pair
https://theconversation.com/great-headphones-blend-physics-anatomy-and-psychology-but-what-you-like-to-listen-to-is-also-important-for-choosing-the-right-pair-171171
スー氏によると、適切なヘッドホンを選択するには科学的・芸術的・主観的な音の側面について考える必要があるとのこと。まず科学的な側面についていうと、物理学的に音は「低圧ゾーン」と「高圧ゾーン」で構成される一連の空気の振動からできています。振動は「音波のサイクル」となっていて、このサイクルが1秒間に何回発生するかでサウンドやピッチ、周波数が決まります。よく「500ヘルツの音」といった表現がありますが、これは高圧と低圧のサイクルが1秒間に500回発生していることを意味します。また音の大きさ、すなわち振幅は音波の最大圧力によって決まり、圧力が高いほど音は大きくなります。これらを前提に、ヘッドホンやイヤホンは、電気的な音響信号を人間の耳が「音」として解釈できる高圧・低圧の振動のサイクルへと変えるわけです。
音が耳に入るとまず、鼓膜が空気の振動を中耳で機械的振動に変換します。そして液体で満たされた内耳で今度は流体信号へと変わり、最終的に神経によって電気信号として脳へと伝わる仕組みとなっています。人は大体20ヘルツから2万ヘルツの範囲でピッチを聞くことができますが、一方で人の聴覚は全ての周波数で等しくうまく反応するわけではありません。
例えば「低周波数の低い音」と「高周波数の高い音」が同じ大きさで存在する時、人は低周波数の音の方が静かだと感じます。また、進化的要因で人は中程度の周波数の音に対してもっとも反応がよいとも言われています。ヘッドホンやイヤホンのエンジニアは、このような「物理学特性と人間の知覚のギャップ」について考慮する必要があるとのこと。
ヘッドホンは小型のスピーカーであり、基本的には耳と逆の「電気信号を空気信号に変える」という働きをします。ほとんどのスピーカーは、固定磁石、磁石の周りを前後に移動するワイヤコイル、空気を押し出す振動板、振動板を維持するサスペンションという4つのコンポーネントで構成されます。音楽の電気信号がワイヤを通過すると電流が変化して磁石が動き、磁石が振動板を動かすことで空気が圧縮され、押し出され、高音と低音とパルスを生み出すとのこと。これが人が聞く「音楽」の正体です。
このとき、磁石や振動板の素材・サイズによって電気信号がうまく空気信号に変わらないことがあります。これらによって音に歪みが生まれたり、一部の周波数が本来の周波数よりも大きくなったり小さくなったりすることがあると、スー氏は述べました。2つの異なる信号を完璧に変換することはできせんが、高価なヘッドホンやイヤホンは、さまざまな方法で信号の変換を調整しているとのこと。
加えて、年齢・経験・文化・音楽の好みなどは、「周波数の調整方法への好み」に影響します。ヒップホップが好きな人であれば低音を重視したヘッドホンを高く評価し、クラシック音楽が好きな人であれば「音の歪み」がないヘッドホンを好むはず。いいヘッドホンは「ヘッドホンデザインの科学」「コンテンツの芸術性」「人間の経験」という要素が関係してくるため、スー氏は、「好きな曲とペアになるヘッドホンを見つけること」をアドバイスしました。
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