どんぐりでだんごが作れると、子どものころに絵本で学んだ。読んでいたのは、その名もずばり『どんぐりだんご』という本だ。そのなかには、生のままでは食べられないどんぐりを根気よく煮続け、だんごにするくだりがあった。
以来「どんぐりってだんごが作れるんだなぁ」と心の片隅にメモしたまま生きてきた。そして7年前、作ってみた。だけど、さっぱり味を思い出せなくなってしまった。
……というわけで再度試してみたところ、忘れていたことに納得した。なんというか、非常に主張のない味なのだ。忘れる前に書き記したい。
※拾ったどんぐりを、そのまま口にするのは危険です。正しく処理をしてから食べてください。アクが強すぎてお腹を壊す可能性もあります。
狭山湖付近で急にどんぐりを拾いたくなった
外出ハイ。
……という言葉があるのかわからないのだが、身に覚えはないだろうか。外出先で興奮して、自分が自分の想像を超えるテンションになること。予想もしなかったような行動をしはじめること。
私はつい最近それを体験した。狭山湖を見に行った帰り道、急にどんぐりを拾いたくなったのだ。
「なんで?」とお思いになるかもしれない。私も思う。
だけど、地面に転がっている大量のどんぐりを見た瞬間、妙においしそうに見えてしまったのだ。実際のところは、この日出会ったやつは、どんぐりの中でもタンニン(渋み)がたっぷり入った品種で、何の処理もせず口にしたらお腹をこわす可能性が大なのだが。
それでも素人目にはおいしそうに見えてしまうからおそろしい。野生を生きてない我々は、勘に頼ると危険なのだ。少なくとも私は私を信用できん。そこら辺に生えてるきのこを、出来心でもいで帰らないようにしようと改めて心に誓った。
とちゅう、犬の散歩をしている夫人に「何をしているんですか?」と淀みのない声で聞かれたので、すみませんと思いつつ「どんぐりを拾っています」と答えた。自分だったらこわくて話しかけられない。勇気ある夫人だ。
ちなみに、ご存知の方も多いと思うのだが、どんぐりの加工法はだんごだけじゃない。そのことは絵本『どんぐりだんご』にも記されている。
だけど私は何故かずっと、だんごにしか興味がない。よっぽどセンセーショナルだったんだろう。本を読んだ当時の私は3歳〜4歳。現在の約10分の1の年齢だ。にも関わらず記憶に焼き付いているのだから、絵本の力、おそるべしである。
時短料理のある時代、ありがとう
どんぐりを煮込んでいる途中、別の料理も作っていたのだが、ふだんだったら面倒に感じる工程をさほど面倒に感じなかった。無意識のうちに、どんぐりと相対的に見ていたのだろう。8時間かかる料理を目の前にすると、30分で完成する料理がとても可愛く見える。5分や10分で完成するなんて魔法だ。しかもちゃんと味があるのだ。
でも、今感じていることのいっさいがっさいを忘れて、7年後くらいにまた、急にどんぐりだんごを作りたくなるのかもしれない。