[再]京都のギリギリ駐車コレクション

デイリーポータルZ

京都には、たくさんの名物がある。

歴史、寺社仏閣、八ツ橋、舞妓さん、ぶぶ漬け…。

色々と有名なものがあるが、僕はここにもう一つ追加したいものがある。

駐車技術の高さだ。

駐車テクに驚かされる

観光バス・タクシーが忙しく行き交う道路や入り組んだ路地を日々運転している京都人は、総じて運転が上手だ。

さらに、駐車に関してはめちゃくちゃレベルが高い。

縦列駐車マスターだらけだ

大学に入って京都市内で生活するようになったとき、一番驚いたのは京町家の壁面ギリギリに駐車された車が多いこと。
切り返すのが難しいような細い路地でも、壁をかすめるようにピッタリと車が停められている。
免許を取ったばかりだった僕は、街を歩くたびに感心しきりだった。

そんな京都人の駐車テクを意識して観察するようになったきっかけは、ある畳屋さんの店先に停められた1台の軽トラック。
鼻面を壁に擦り付けるように停められている姿を見かけるたびに度肝を抜かれた。

衝撃の京都スタイル

ストリートビューで確認すると、ちょうど水色の軽トラックが停められている様子が収められている。
改めて見ると、ギリギリというか…ぶつかってしまっているようにも見える。

前進していってビタっと停止する技術があるのか、それとも手前でギアをニュートラルにして後ろからゆっくり押しているのか。
そしてここまでギリギリを攻めているのには、なにか理由があるのか。

できれば店主の方にも話を聞きたいし、久しぶりに現地を確認しに行こう。

そう思って揚々と出かけると……

まさかのショベルカー…!

まさに建物が解体されている瞬間に立ち会ってしまった。

畳屋さんはいつの間にかお店を畳んでいたのだ。

当然、水色の軽トラの姿もない。

密かに見るのを楽しみにしていたものがなくなってしまった。

最近は昔ながらの住宅や店舗が取り壊され、駐車場や宿泊施設に建て替えられてしまうことも多い。
他のギリギリ駐車の姿も、どんどん見られなくなってしまうかもしれない…。

そうなってしまう前に、現在の様子を記録しておこう。

そう思い、街じゅうのギリギリ駐車を集めることにした。

ギリギリ駐車のある風景

京都では、少し歩くだけでいくつものギリギリ駐車が見つかる。

その道のプロ、たとえばレンタカー屋さんやディーラーの人が見事な技術で車を出したり入れたりしているのを見かけることはあるが、そういった技術が市民レベルで存在しているのだ。

運転席のドアからは降りられない

町家にイエローが映える
また発見!…と思ったら
奥の車の方がギリギリだ!

余裕を持って停めることもできそうなのもあるが、とにかくギリギリだ。
「おれの方がギリギリだぜ」みたいな対抗意識があったりするのだろうか。

どんどん見つかる

だいたい50mも歩けば1つか2つは見つけられる。

京都市民にとって、この程度の駐車スキルは特別なものというわけではないのだ。

いくつも集めていると、なんとなくジャンルが見えてきたので紹介したい。

ギリギリ駐車の種類

街で見かけるギリギリ駐車は、だいたい以下のように分類できる。

平行型

建物の壁と平行に停められている、京都では一番オーソドックスなスタイル。
元々駐車スペースとして想定されていなかったところを利用していることも多い。
町家の形状とも相性がよい。

納まりがよくて気持ちいい
目に映るすべての車がギリギリ駐車だ

すっぽり型
建物に駐車スペースが設けられているが、左右の遊びが少ないパターン。
家族の自転車等を置くために車を壁面ギリギリまで寄せていることも。

ミラーは畳んでからバックするのだろう
車が先か車庫が先か

思いやり型

玄関や道路の導線を塞がないよう、駐車スペースの端に寄せている。
ボディをぶつけてしまうリスクを負ってまで、周囲のことを思いやっている優しさを感じる。

余裕をもって停めることもできるのに…
平行型と思いやり型のハイブリッド
玄関への導線確保のための寄せ。左側の車にはどうやって乗り込むんだ!

天井型

ごく稀に出現。テクニックはさほど要求されないが、初めて停めるときは緊張しそう。

まさに紙一重。底も危ない
入念な寸法チェックを経て車種を選定したに違いない

その他

上記に当てはまらないものもある。停めかたは十人十色だ。

写真では伝わりにくいが、”シャッターがギリギリ型”
車を停めてからギリギリになった”後付け型”

補助アイテムもある

ギリギリ駐車のためのアイテムがある。
オーソドックスな車止めや、古タイヤを利用したクッションなどだ。
これらがあれば日々のギリギリ駐車もこわくない。

道具によって目的を達成する。人類の知恵を感じるようで胸が熱くなった。

雨樋を利用したテクニカルな手法
ポールにクッションが設置されている
古タイヤは結構ポピュラー
ここにギリギリ駐車が帰ってくるのだな…と思いを馳せる

補助なしのストロングスタイル

しかし、上級者ともなると、補助アイテムが無くともギリギリ駐車を成し遂げる。

そこにはさながら柔道や華道のように、”道”を極めようとする心意気を感じる。駐車道だ(道路じゃなくて駐車場ではあるが)。

自分なら絶対にぶつけてしまう自信がある
タイヤなどに接触しているものを除くと、これが一番ギリギリだ
ノーガードでここまで寄せられるものなのか

俺はここまで寄せられる。お前はどうだ。
そう語り掛けられているような停めっぷりだ。

思ったよりもたくさんあったし技術が凄かった

運転もだけど、駐車もお人柄を示すことがわかった

歩きまわることができる範囲でも、思ったよりも多くのギリギリ駐車が発見できる。ここまで密集しているのは日本で京都だけではないだろうか。
東京とかも多いのかもしれないが、密度で言えば京都の方が上だろう(知らんけど)。

 

道具を使って工夫して停めている人もいれば、己の技術を高めることでギリギリに駐車している人もいる。
ひとつひとつ違った駐車スタイルから、知らない人の知らない人生を感じた。

 

ところで、ひとつだけ懸念していることがある。

有名な「ぶぶ漬け」のエピソード(京都の家を訪れてぶぶ漬け(お茶漬け)をすすめられたら「長居してないで帰れ」の意味)が示すように、京都人はウラの意味を含ませて会話しあう習慣を持っている。

従って、ストレートに京都人の駐車テクニックを褒めると「狭い駐車場しか持てないのに不相応な車に乗るな」と受け取られかねないのだ。

 

この記事には、そんな意図はありません。

本当です。信じて。

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