AP通信が報道データをブロックチェーンに記録、Web 3.0サービスにデータ提供へ【5分でわかるブロックチェーン講座】

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 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

AP通信が報道データをブロックチェーンに記録

 AP通信が今後、自社の報道データをブロックチェーンに記録する意向を発表した。ブロックチェーン上に構築されるアプリケーション(DApps)向けに、報道データを提供する。

 今回の発表では、AP通信と分散型オラクルChainlinkの提携が公表されている。Chainlinkの提供するオラクルソリューションにより、DApps向けにAP通信のデータが提供される模様だ。Chainlinkは、ブロックチェーンの外にあるデータをスマートコントラクトで扱えるようにする仕組みを提供している。

 報道内容がブロックチェーンに記録されることで、例えば報道後の内容を秘密裏に書き換えたりすることができなくなる。また、データには暗号化されたAP通信の署名が付与されるため、著作権を侵害した二次利用を容易に検知することも可能だ。

 AP通信はこれまでにも、米大統領選挙の予測結果をブロックチェーンに記録するなどしてきた。その他にも、歴史的なシーンを写真に納めた上でそれを切り取り、NFTアートとして販売するなどしている。

 今週は、AP通信の取り組みから見るDAppsにおけるオラクルデータの重要性について考察したい。

参照ソース

    AP Definitive Source | Putting the facts on blockchain
    AP通信

RaribleがNFTのガス代を購入者負担に

 NFTマーケットプレイスRaribleが、NFTの発行手数料を購入者負担にする新機能「lazy minting」を発表した。これにより、NFTの出品者が負担していた手数料を購入代金に含められるようになる。

 NFTマーケットプレイスの戦国時代が到来し、各社の差別化競争が激化している。今週は、Raribleがクリエイター獲得のための取り組みを発表した。

 一般的にNFTマーケットプレイスはイーサリアム上で稼働しているため、NFTの発行にはガス代(発行手数料)が必要となる。これまでは、このガス代を出品者であるクリエイターが負担していたが、出品時にガス代だけ払って購入されない作品も多く、新規出品者のハードルとなっていた。

 新機能「lazy minting」を使うことで、ガス代を購入者負担にすることが可能だ。気軽にNFTを出品できるようになり、新規クリエイターの獲得が期待できる。なお、購入されるまでは出品されたNFTはイーサリアム上に発行されず、分散型ストレージのIPFSに一時保存されるという。

 今回の新機能による副次的な効果として、購入されることのないNFTから発生する不要なトランザクションを削減することができ、イーサリアムネットワークの負荷を減らすことにも繋がるだろう。

参照ソース

    Create NFTs for free on Rarible.com via a new lazy minting feature
    Rarible

今週の「なぜ」報道データにおける分散型オラクルの重要性

 今週はAP通信のブロックチェーン活用の取り組みやRaribleの新機能に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

Web 2.0とWeb 3.0で情報の捉え方は異なる
AP通信のデータは分散型オラクルで検証される
Web 3.0では特定の組織や人物を信用しない

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

Chainlinkと分散型オラクル

 AP通信のブロックチェーン活用の取り組みを深掘る前に、Chainlinkと分散型オラクルについて理解しておく必要がある。

 Chainlinkは、ブロックチェーンの外部データを内部に橋渡しする役割を担うプロジェクトだ。ブロックチェーンでデータを扱う際には、そのデータがどのように生成されたものであるかが重要になる。

 例えば、米大統領選でバイデン氏が勝利したという情報をブロックチェーンに取り込み、その情報に応じてスマートコントラクトを動かすというプログラムがあった場合、このプログラムは、その情報に著しく依存したものとなる。

 ここで、「AP通信が提供する情報だから安心」とするのがWeb 2.0の考え方であり、「AP通信だとしても裏で何が行われているかわからないから信用しない」とするのがWeb 3.0の考え方だ。このAP通信の情報の整合性を、不特定多数の人々で検証するのが分散型オラクルの仕組みであり、その仕組みを提供するのがChainlinkである。

分散型オラクルのインセンティブ設計

 Chainlinkでは、ブロックチェーンの外部から提供された情報に対して、Chainlinkネットワークを構成する人々が検証を行う。検証の結果、正しい情報と判断されたものはブロックチェーン内部へと提供され、誤った情報と判断されたものは遮断される。

 検証に参加するインセンティブとして、Chainlinkの独自トークン「LINK」が活用される仕組みだ。正しい情報を正しい情報であると判断したり、誤った情報を誤った情報だと判断した人にはLINKが付与され、逆に、正しい情報を誤った情報であると判断したり、誤った情報を正しい情報だと判断した人にはペナルティが課されLINKが没収される。

 この分散型オラクルソリューションを提供するプロジェクトの中で、Chainlinkはほとんど一強状態となっている。AP通信も、今回の新たな取り組みを行う上でChainlinkとの提携を発表した。

 AP通信は、Chainlinkに対して報道データを提供し、Chainlinkネットワークがこれを検証する。正しい情報と判断されたデータに関しては、AP通信の署名が施された上でブロックチェーンに記録される流れだ。

報道データにおける分散型オラクルの重要性

 仮にChainlinkなどのオラクルソリューションを経由せずに、ブロックチェーン外部のデータが内部に記録されてしまうと、文字通りオラクル問題が発生する。

 オラクル問題とは、ブロックチェーンに記録される前のデータに誤りがあった場合に、ブロックチェーン内部のデータが何の意味も持たないという問題だ。

 特に今回のAP通信のように、報道データを元にしたスマートコントラクトを開発したとしても、一度でもデータに誤りが出てしまえば、誰もそのスマートコントラクトを使用したいとは思わないだろう。

 Web 2.0では、情報の提供元を信用することでサービスが成り立っていたものの、Web 3.0ではどれだけ権威のある組織や人物であったとしても、特定の何かを信用することはしない。この前提の元に、情報をどのように提供するかというのが重要なポイントとなる。

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