「騒がしい環境で人の話が聞こえない人」は認知症のリスクが高いという研究結果

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カフェテリアなどの人が多い環境では、ガヤガヤとした周囲の雑音のせいで相手の言っている内容が聞き取れないこともあります。新たに60歳以上の高齢者8万人超を対象とした研究によって、「騒がしい環境で聞き取りに苦労するという人は認知症のリスクが高い」という結果が明らかになりました。

Speech‐in‐noise hearing impairment is associated with an increased risk of incident dementia in 82,039 UK Biobank participants – Stevenson – – Alzheimer’s & Dementia – Wiley Online Library
https://alz-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/alz.12416

Can’t Hear People When There’s Noise Around? New Study Links This to Dementia Risk
https://www.sciencealert.com/struggling-to-hear-speech-in-noisy-rooms-linked-to-dementia-risk

「年をとると耳が遠くなる」というのは一般的に知られている事実ですが、難聴は世界五大医学雑誌として知られるLancetが「対処可能な認知症の主要リスク要因12選」に挙げるほど認知症と関わりが深いとされています。Lancetによると、この主要リスク12選の中でも難聴は最も認知症に対する影響が強く、中高年に難聴を患った人が治療を受けなかった場合、認知症になる可能性はおよそ5倍になると推定されています。


難聴と認知症の関係について考察を深めるため、オックスフォード大学のジョナサン・スティーブンソン氏らは、栄養・生活様式・薬物療法などさまざまな環境曝露と遺伝的素質が疾患に対して与える影響を大規模かつ長期にわたって追跡する「UKバイオバンク」のデータベースをもとに、調査開始時に認知症を有しておらず聴力にも問題がみられなかった60歳以上の高齢者8万2039人を対象とする分析を行いました。

UKバイオバンクの調査の中には、雑音の中で会話を聞き取るという「スピーチ・イン・ノイズ」というテストが含まれており、このスピーチ・イン・ノイズの結果と認知症の関係を調べたところ、「スピーチ・イン・ノイズの結果が悪い人は認知症の発症率が高い」と判明しました。以下は経過年数と認知症の発症率の関係についてスピーチ・イン・ノイズの結果ごとにグラフ化したもの。最もスピーチ・イン・ノイズの結果が悪かった「Poor」に属する被験者と最も結果が良かった「Normal」を比較すると、Poorの被験者はNormalに比べて10年後の認知症発症率が倍になることが示されています。


スティーブンソン氏らは「未検出の認知症が難聴を生み出しているのでは」という説を排除するために分析を行いましたが、この説を支持する結果は得られなかったとのこと。また、今回の研究では難聴と関連があると一般的にいわれている社会的孤立やうつ病などの関係についても分析されましたが、スティーブンソン氏らによると「難聴が社会的孤立やうつ病と関連しているという証拠はほとんどなかった」そうです。

オーストラリア台湾の研究機関もそれぞれ難聴が認知症のリスク要因であるという研究結果を発表していますが、これらの研究は難聴について自己申告という評価基準を設けていた点がスティーブンソン氏らの研究と異なるとのこと。UKバイオバンクのデータベースでは、スピーチ・イン・ノイズでやや悪いという結果にあたる「Insufficient」に属する被験者のうち53.4%が、悪いという結果にあたる「Poor」に属する被験者のうち43.8%が「難聴であるという自覚はなかった」と答えており、難聴は患った自覚が薄いものとみられています。

なお、Lancetの研究では難聴は「対処可能なリスク」とされているため、補聴器で認知症リスクを改善できる可能性があると考えられていますが、既存の研究で得られた結果には一貫性がないとのこと。スティーブンソン氏らは「今回の分析では補聴器が認知症リスクを下げるという結果が得られたが、サンプルサイズが小さいために検定として有意とはいえず、補聴器の利用者は特に重度の難聴を患っておりその他の治療も受けている可能性が高いことを考えると、現状の調査手法では算定困難」と記すにとどめています。

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2021年10月17日 09時00分00秒 in サイエンス, Posted by log1k_iy

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