金融審議会 四半期開示を議論へ – 武田雄治

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昨日の日経新聞朝刊によると、金融審議会に四半期開示の見直しを論点として追加するようです。

[日経]四半期決算開示、金融審で見直し議論へ 実現には壁高く [有料会員限定]

9月から開催されている金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」において、論点を追加するようです(現在は、気候変動対応に関する開示について検討しています。こちらも気になる論点です。)。

企業が3カ月ごとに業績などを開示する「四半期開示」の見直しに向けた議論が始まる。木原誠二官房副長官は12日の記者会見で、「金融庁の金融審議会で投資家や企業の意見を踏まえて、市場への影響を十分に見極めて丁寧に検討を進める」と述べた。見直しは企業の負担軽減につながる半面、投資情報が減ることに投資家の反発は根強い。実現に向けたハードルは高そうだ。

金融審では9月から企業開示について有識者らを交えた作業部会を開いており、足元ではESG(環境・社会・ガバナンス)情報開示の義務化などを巡って議論を進めている。四半期開示も今後論点として追加する見通しだ。
(略)
海外をみると、英国では14年、フランスで15年に四半期開示の義務が撤廃された一方、米国は1970年の制度を堅持している。国際的な標準が定まっておらず、「四半期開示の廃止と維持の双方に利点と欠点があり、明確な答えはない」(金融庁関係者)。幅広い意見を聞き取った上で、政治判断で決着する可能性も高い。

何度も書いていますが、もう一度書きます。

四半期開示の見直しは機関投資家が反発しているようですが、四半期開示の「見直し」をするといっても、四半期決算において一切の情報開示をやめる(100を0にする)ということにはならないと思います。これまで四半期開示をやっていた上場企業が、仮に法規則で四半期開示を求めなくなっても、積極的にディスクロージャーをするでしょう。私はそれでいいと思っていますし、機関投資家もそれで十分じゃないでしょうか?

四半期決算短信と四半期報告書の重複開示(同時開示)という馬鹿げたことをそろそろ止めてはどうかと思うわけです。機関投資家の皆様は、本当に両方必要なのでしょうか? 業績予想が知りたいのであれば、四半期決算短信の表紙だけを任意開示すればよく、あとは決算説明会などの情報があれば十分じゃないでしょうか? 

四半期報告書制度を中間報告書制度に戻し、四半期レビューを中間監査に戻した方が、ディスクロージャーの質も上がるでしょうし、監査の質も上がるのではないでしょうか? 月次・四半期を任意開示にすることに、なぜそこまで反発をするのか。反発をするのであれば、具体的にどのような開示が必要なのかを提示してはどうなのか。成果物から情報を得ようとするだけでなく、もっと対話してはどうなのか。経理部も監査法人もテレワークが進む中で、開示を簡略化することなく、開示量が増えるばかりで、投資情報が錯綜しているんじゃないでしょうか?

 いまの「ディスクロージャーワーキング・グループ」においても、気候変動が投資家の関心であり、気候変動リスクの開示やサステナビリティ開示をすべきという議論がなされていますが、実務の負担を考えて頂きたい。膨大な開示に追われ、「経理の本分」を置き去りにするということは本末転倒であり、なんでもなんでも投資家に情報開示をすればいいというもんじゃないと思いますよ。