子どもに悪影響?電子書籍の盲点 – 赤木智弘

BLOGOS

Pixabay

勉強に読書・・・「文化資本」は親の姿勢で決まる?

最近SNSで話題になった「親ガチャ」という言葉。「どんな親や境遇のもとに生まれてくるかは運次第で自分が選べない」ことを表すネットスラングだ。子どもを虐待するような親を指す言葉として使われているのはもちろん、最近は「親の経済力」なども指しているようだ。

それに追加して僕は「親の文化資本」も親ガチャの一要素であると考える。

よく指摘されているが、子どもは親がやっていることをよく見ているし、自然と真似をするものだ。たとえば、親が地域社会と親しくしていれば、子どももそれを真似して近隣の子どもたちとコミュニケーションを取るようになる。

加えて言うと、僕は以前から「子どもに勉強をさせたいと思えば、子どもに勉強をやれと言うのではなく、親が勉強をするべきだ」と考えている。子どもに勉強のクセを付けさせるためには、親が手本を見せるのが一番だ。いくら子どもに口先だけで「勉強をやれ」と言ったところで、親が勉強をしていなければ説得力が無い。逆に親が普段から勉強を楽しそうにしていれば、子どもに「勉強をするな」と言ったところで、子どもは勉強に興味を持つものである。

僕の両親はそれほど本を読むような親ではなかった。母親に図書館に連れて行ってもらった経験はあるので、小説などは読んでいたようだが、家に本棚はなかった。買ってまで読むようなものではなかったのだろう。

もし、家に本棚があって、両親が勉強をするような家庭だったら、もう少し勉強に興味が持てたもしれない。僕は今後結婚することも子どもをもうけることも無いだろうが、もし子どもをもうける機会があれば、子どもの前で楽しそうに難しい本を読んでやろうと、ずっと思っている。

Getty Images

電子書籍の普及で、子どもが手に取る本が家庭から消える

とまぁ、叶わぬ夢を語っている最中に、大変なことに気づいてしまった。

あれ?電子書籍だと子どもが読めなくね?

そうだ。たとえ親が本を好きな人でも、その本が紙の本ではなく、電子書籍でスマホなどに入っていたら、それを子どもが親の留守にこっそり隠れて読むことは不可能なのである。

しかも、親がスマホで読書をしていたとしても、その姿を子どもが見れば、読書をしているのかVTuberの動画を見ているのか、区別は付かない。同じ読書をしていても、かつて子どもから勉強家に見えた親の姿は、電子書籍が当たり前になった現代では、単にスマホに夢中な親にしか見えないのである。

紙の本を電子書籍化するメリットは多い。出版側からすれば誤字脱字があれば改訂を待たなくても修正したデータをアップロードすればいい。また、著作権の管理を厳しくできるほか、古本屋に流れて、読まれているのに収入が得られないという問題もなくすことができる。

そして、読者側からすれば、大量の本を本棚に並べて抱え込む必要が無い。

本を多く読む人であればあるほど、紙の本が部屋のスペースを圧迫してしまう問題に悩まされ続けてきた。だからこそ、電子書籍が今ほど普及する前には「自炊」などといって、自分で紙の本を切り開き、ページをスキャンして電子化することが流行ったのである。

かくいう僕も、新刊として発売される本は電子書籍で済ませることが多い。逆に紙の本で買うものは、古本で安く手に入る本ばかりだ。出版市場全体を見ても、売り上げが減り続ける紙の本や雑誌に対し、電子書籍の売り上げは徐々に拡大し続けている。(*1)

特に2020年は、新型コロナ禍における巣ごもり需要や『鬼滅の刃』ブームなどで、コミックを中心に、電子書籍の売り上げが大幅に引き上げられた。こうしたことから、紙の本から電子書籍への置き換えは、今後も進んでいくことは間違いない。そうなれば、本棚がいくつも並ぶような家は少なくなり、壁沿いのスペースをシンプルな家具などで美しく飾る家が増えるのだろう。

しかし、そうしたシンプルで綺麗な家の中に、子どものためになるものはどれだけ残るだろうか?

親があまり手に取らなくなって、ホコリを被っているような古い本でも、なんにでも興味を持つ年代の子どもにとっては興味の対象になり得る。そうした本が部屋の綺麗さのために処分され、本が電子書籍となってスマホの中にしか残らなくなったときに、果たして子どもたちは本の存在や、家でも読書に勤しむ親の姿を認識できるだろうか?

そんなことを思い起こして、少し暗い気分になってしまった。

*1:2020年紙+電子出版市場は1兆6168億円で2年連続プラス成長 ~ 出版科学研究所調べ(HON.jp)https://hon.jp/news/1.0/0/30504

Source