餅といえば切り餅か丸餅が一般的だが、いつからか「スライス餅」というものが市場に現れた。
餅のような完成しきった食品は、味ではなく形を変えることで新たな可能性が開かれるのだなと感心したものだ。
そんな、形としての餅商品に最新型が現れた。それが「ギザギザもち」だ。
餅は形を攻めている
「ぎざぎざもち」との対峙のまえに、まずはあらためて餅という商材をとらえておきたい。
基本的に切り餅と丸餅があり、そこは揺るぎない。ブランド米を使うなど素材にこだわり価格帯で多様性を持たせる動きもある。
いっぽうで、素材ではなく形を工夫する動きがあるわけだ。餅は完成度の高いすばらしい食品である。餅という様はそのままに、形に新規性を求め食べ方にバリエーションをもたせようという動きだ。
餅ファンにっとっては志を感じるムーブである。
冒頭でご紹介したスライス餅がその代表だ。
しゃぶしゃぶ餅とも呼ばれ各社が盛んに商品化しており、活況である。
カップ麺に特化したり……
たれを添付する商品もあり見逃せない。
さらにこの薄くする動きから一歩飛び出したのが業界トップの佐藤食品工業だ。どうしたか。2013年、スティック状の餅の販売を開始した。
同時期には従来の切り餅が1切れ50gのところ、40gにして餅の厚みを若干薄くしたタイプも発売。
ものすごい刻んでくる感でファンを驚かせた。
この流れは止まらずたいまつ食品では通常の切り餅より厚さが2/3、幅が1/2の商品を投入。
餅をどこまでサイズ展開するか、アパレル産業みたいな様相になっているのである。
登場したギザギザという形状
そして2021年。上記「食べやすカットのおもち」で気概を見せたたいまつ食品が満を持して動いた。それが「ギザギザもち」というわけだ。
もう見た目からして、ここがお餅の到達地点ではと思わせる。あの四角かったやつが、いまやギザギザしている。
ああ、餅がギザギザしてたらなあ……などと思ったことがかつて一度もないところがむちゃくちゃ興奮する。願いもしない夢が叶う、未来が来るってそういうことだ。
具がすべらず、火が通りやすい
触れ込みとしては、面が増えることによる火の通りやすさと、スプレッドソースのからみやすさ、はさみやすさが特徴だ。
夏の間はバーベキュー向け商品「BBQギザギザもち」も存在し、タレがよくからみ、ギザギザが肉などの具材をほどよくホールドして巻きやすいことも訴求していた。
なるほど一般的な切り餅は、乗せたものをいかに滑らせずまとわせるかに難しかったのだなと、ギザギザもちの登場により気付かされる。
気づかない不便を見つける、業界人のみなさんの苦労と挑戦を思わずにはいられない。
絶妙な「ちょっと良い」
初のギザギザもちには、あんこと、パンのおともとして愛好しているひよこ豆のペーストである「フムス」をあわせてみた。
確かに、なんだかちょっと良い。波に味がしっかり乗ったまま口へ到達する。巻くことができる厚みなのでひょいと手にとって食べやすい。絶妙な「ちょっと良い」がある。
これはパラダイムシフト! 餅の常識が変わるぜ~~~と、いうまでのことがないのは、お餅がすでにその味わいだけで完全な存在だからだろう。
公式サイトの通販で160gが356円だから、一般的な切り餅の倍の値段というとちょっと常用までは難しいところなのだが、間違いなく興奮の品だ。
さきほど「ここがお餅の到達地点」と書いたが、どうだろう。ここからなお、餅の形に進化は有りうるか。
引き続き、餅を見守っていく。