自民党総裁選、野党が最も恐れる「河野首相」

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自民党総裁選は三つ巴の様相

9月3日の菅首相の退陣表明により、自民党総裁選が事実上スタートした。現時点では岸田文雄元外務大臣、高市早苗元総務大臣、河野太郎現ワクチン担当大臣が出馬表明し、三つ巴の様相である。岸田氏は自民党改革や新自由主義の是正である分配重視、所得倍増などを主張している。高市氏は「アベノミクス」の継承発展と、ITなど新技術の開発による経済成長戦略などを主張している。河野氏はテレワークによる東京一極集中是正、デジタル化推進による社会活動の効率化、再生エネ技術開発による経済成長などを主張している。いずれもコロナ後における日本の課題を見据えた具体的政策提言と言えよう。

自民党サイト、高市氏、河野氏各サイトより

立憲民主党による批判

これに対して、野党第一党の立憲民主党は、コロナ禍での総裁選は政治空白を生み無責任だと批判し、直ちに臨時国会の開催を要求している。また、コロナ対策として、集中的な人流抑制や行動制限、低所得層への一人10万円給付、事業者への持続化給付金などを提言し、さらに、「枝野内閣」では官房長官を中心とするコロナ対策司令塔による一元的対策の推進などを主張し、総選挙での政権交代を目指している。

新鮮味のない立憲民主党のコロナ対策

しかし、立憲民主党は、コロナ感染症拡大で支持率が急落した菅首相による解散総選挙を強く望んでいたが、突然菅首相が退陣し状況が一変した。同党にとって菅退陣はまさに不測の事態である。そのうえ、立憲民主党の上記コロナ対策には新鮮味もインパクトもなく、政府自民党のコロナ対策と大同小異である。さらに、立憲民主党が共産党を含む野党四党で合意した政策は、平和安全法制の廃止や、モリカケ・桜問題の再調査など後ろ向きのものが多く、コロナ後を見据えた日本の経済成長戦略は皆無であり、国を守る確固たる安全保障政策も存在しない。これでは、自民党の新総裁兼新首相が誰になっても到底対抗できないであろう。また、立憲民主党などの野党はコロナ対策として臨時国会の開催を強く要求するが、その主たる目的がコロナ対策よりも総選挙を有利にするための政府自民党攻撃であることが見透かされているため、政府自民党はこれに応じないのである。

立憲民主党にとって共産党との選挙協力は「両刃の剣」

立憲民主党は、一人区で競合する約70の選挙区につき、共産党との選挙協力を鋭意進めていると報道されているが、共産党との「連立政権」は否定し、共産党に対して極めて自己本位で中途半端な態度をとっている。これは、もし共産党との「連立政権」を容認すれば、自民党などから待ってましたとばかり、「容共」の烙印を押され選挙で致命的打撃を受ける恐れがあるためである。しかし、一人区において、共産党と政策合意をし、共産党の選挙協力のおかげで当選した立憲民主党の議員は、当選後の国会活動や政策形成などにおいて、共産党に「忖度」し共産党の方針や政策に反対ができず、妥協することは否定できない。なぜなら、当選後において共産党に反対し対立すれば次回選挙で協力が得られず落選する恐れがあるからである。そのため、立憲民主党にとっては、共産党との選挙協力は、党内での共産党の影響力が拡大し「両刃の剣」である。のみならず、洋の東西を問わず、歴史上「社共共闘」は永続していない。1981年フランスのミッテラン大統領時代の「社共連合政権」ではその後共産党が離脱し、1960~70年代の日本の「社共共闘」も結局決裂した。その根本的理由は、議会制民主主義と矛盾する共産党の共産主義イデオロギーである「マルクス・レーニン主義」(「暴力革命とプロレタリアート独裁」)に起因すると筆者は考える。

なお、最近、共産党の志位和夫委員長は突如として、暴力革命を容認したものとされる「敵の出方論」(「革命が平和的か暴力的かは敵の出方による」)との「表現」を否定したが(9月8日付け「毎日新聞」参照)、なぜ長年否定せずに今頃になって突然否定したのか説明責任がある。また、「表現」だけ否定するのか、「中身」も否定するのか明確ではない。もともと、「敵の出方論」は「平和革命と暴力革命はそのどちらも放棄しない。敵の出方次第で使い分けるとの宮本顕治元委員長が編み出したロジックである」(佐藤優他著「真説日本左翼史」2021年講談社現代新書217頁参照)。宮本氏は「革命が平和的か非平和的かは結局敵の出方によるというのはマルクス・レーニン主義の革命論の重要原則である」(宮本顕治著「日本革命の展望」1966年日本共産党中央委員会出版部315頁参照)と断言している。共産党の理論的指導者である不破哲三元委員長も同じく「敵の出方論」を主張しているのであり(不破哲三著「人民的議会主義」1970年新日本出版社244頁参照)今も否定していない。 

野党が最も恐れる「河野首相」

立憲民主党などの野党は、総裁選出馬表明した前記三名のうち河野氏にターゲットを絞り、総裁選出馬はワクチン担当大臣としての責任を放棄するものなどと激しく攻撃している。これは、総選挙を見据え、野党にとっては、前記の三名のうち、突破力と実行力に優れ、自民党員の間で圧倒的に支持され、且つ無党派層を含め国民的人気が高い「河野太郎首相」の誕生を最も恐れ、何としてもこれを阻止するためである。しかし、河野氏はワクチン担当大臣として、本年2月以降、菅首相が提唱した一日100万回を大きく超えるワクチン接種を実行し、今や米国と肩を並べる接種率を実現した実績があり、批判は全く当たらない。

立憲民主党などの野党は、もっぱら菅内閣への「批判」や「敵失」だけで政権交代を狙うのではなく、コロナ後をも見据えた自民党に対抗できる強力な経済成長戦略や、国を守る確固たる安全保障政策を提示すべきである。これらの政策が欠落した前記の野党四党の「共通政策」のような後ろ向きの政策ばかりでは到底政権交代はできないと言わざるを得ない。これは国民にとっても不幸であるから猛省を促したい。