ハーバードビジネススクールが9月初めに発表した研究報告によると、雇用主が履歴書を分析して求職者をふるい分けるのに利用する採用自動化ソフトウェアによって、能力のある多数の求職者が不採用になっているという。「Hidden Workers: Untapped Talent(隠れた労働者:生かされない能力)」と題するこの研究は、雇用側がどうすれば雇用慣行を改善し、スキルギャップを埋め、多様性を向上させられるかといった問題を掘り下げている。履歴書分析ソフトウェアへの過度の依存が、「隠れた労働者」問題の一因になっていると同研究は指摘する。
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求職者のふるい分けに用いられるApplicant Tracking System(ATS:応募者追跡システム)ソフトウェアは、Recruitment Management System(RMS:採用管理システム)ソフトウェアと連携して、採用担当者が応募者の選考に費やす時間と費用を抑える。研究によると、調査対象となった米国の雇用主の75%がこれらの技術を採用しており、さらに雇用主の90%超が、中程度および高度な技能を備える採用候補者を最初にふるい分け、またはランク付けするのにRMSを利用したことがあるという。
雇用主はこのようなソフトウェアに対して、必要な学位や資格、免許といった要件のほか、たとえば前科のような、応募者に望ましくないマイナス条件を指定することができる。ただし、より微妙なマイナス条件もあり、その1つは履歴書の職歴に長い空白期間があることだ。調査対象となった企業の半数近くが、これに該当する履歴書を排除していたという。
「応募者の職歴に半年を超える空白期間があると、それだけで履歴書がRMSやATSに自動的にふるい落とされる。われわれの研究結果から、就業経験が最近のものであるほど優れた専門技能を備えている傾向があると、雇用主が判断していることがうかがえる。雇用主が求める要件をすべて満たしている可能性があっても、採用担当者はその求職者の応募書類に目を通すことはない」と研究には記されている。
研究者らは、「隠された労働者」の問題解決に役立ついくつかの策を提案している。その1つは、資格のある候補者が誤って検討対象から外されるのを防ぐために、ATSとRMSでフィルタリングの基準をネガティブな要素からポジティブな要素に移行し、スキル、労働倫理、自己効力感などを示すとされる要素を再検討することだ。研究者らはさらに、募集要項を更新することや、「隠された労働者」を採用するためにカスタマイズされた方法を構築することが、この問題を解決するのに役立つ可能性があるとしている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。