バイオ素材のSpiberが344億円調達で1位に–2021年9月の資金調達・評価額ランキング

CNET Japan

 フォースタートアップスは、成長産業領域に特化した情報プラットフォーム「STARTUP DB」において、2021年1月から9月までを対象とした「国内スタートアップ資金調達額ランキング」を発表した。それによると、Spiber、リキッドグループ、ビットバンク、オリヅルセラピューティクス、タイミー、リバーフィールドの6社が新たにランクインした。

 
 

 1位でランクインしたSpiberは、カーライルおよび、海外需要開拓支援機構を主な割当先とする第三者割当増資による244億円に加えて、三菱UFJモルガン・スタンレー証券をアレンジャーとした事業価値証券化による100億円という、総額344億円の資金調達にかかる決議の実施を発表した。同ラウンド完了後の評価額は、約1330億円になるという。

 Spiberは、山形県鶴岡市に拠点を置く2007年設立のバイオベンチャー。構造タンパク質素材「Brewed Protein」の開発をしている。アパレル産業を始めとする各産業セクターにおいて、持続可能な素材へのニーズが急速に高まる中、同素材が高く評価されており、多数のグローバルアパレルブランドと共同プロジェクトが進行しているという。今後、需要の拡大に対応するべく、年内に初の量産拠点となるタイ・ラヨン工場、その後速やかに米国工場の立ち上げを進めていく方針。

 2位のスマートニュースは、過去最大級のエクイティ調達となる251億円の資金調達を発表し、評価額は2000億円を突破した。今回の調達の引受先には、米国を拠点とするPrinceville Capital、Woodline Partnersが新たに株主として参加。既存株主では、シンガポールのACA Investmentsが出資している。国内からは、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、Green Co-Invest Investment、Yamauchi-No.10 Family Officeなどが新規投資家として参加。既存株主では、SMBCベンチャーキャピタルが参画している。

 同社は、ニュースアプリ「SmartNews」を運営しているが、今回調達した資金については、米国での成長に投資すると説明する。なお、2014年10月に米国版をリリースしており、2019年9月には米国版独自の機能として「News From All Sides」を提供している。今回の資金を活用し、コロナウイルスチャンネルや大統領選挙の関連機能など、米国でのプロダクトが提供する機能をさらに拡充するという。

 7位に新規ランクインしたリキッドグループは、海外で暗号資産取引所「FTX.COM」を所有・運営するFTX Tradingより、約132億円(1億2000万ドル)の資金調達を実施。また、FTX Tradingとは業務提携などを含めた協議を開始しているという。今回の調達と協業を受けて、リキッドグループが主に活動しているアジアにおける経験と、FTX Tradingが運営するグローバルな取引プラットフォームから得られた専門知識を組み合わせることで、革新的な商品やサービスの提供を加速させていく見込み。

 15位に新規ランクインしたオリヅルセラピューティクスは、2021年4月の設立から6カ月足らずで60億円の資金調達を実施した。同社は、iPS細胞由来の再生医療等製品の開発事業と、iPS細胞技術の利活用事業に特化した研究開発型企業として、6月1日より業務を開始している。

 調達先については、シードラウンドでは京都大学イノベーションキャピタル、武田薬品工業、SMBCベンチャーキャピタルなど。シリーズAラウンドでは、三菱UFJ銀行、SMBCベンチャーキャピタルをはじめとする有力なVCや事業会社から、合計60億円の資金調達を実施している。

 トップ20にランクインしている企業のうち、累計資金調達金額が100億円を超えている企業はSpiber、スマートニュース、TBM、Mobility Technologies、ヘイ、SmartHR、リキッドグループ、ネットプロテクションホールディングス、ispace、ディーカレット、アトナープの11社だった。中でもSpiberは、唯一累計資金調達金額が1000億円を突破している。

 
 

 また、ランキング上位5社はすべて、累計資金調達金額が300億円を突破。設立5年以内のスタートアップは、リキッドグループ、キャディ、ネットプロテクションホールディングス、ディーカレット、SODA、オリヅルセラピューティクス、タイミー、atama plus、menuの9社となる。

 2021年9月における資金調達金額の中央値は1億8900万円、平均値は13億4418万円だった。2021年上半期全体におけるスタートアップ全体の合計資金調達金額は、3835億3823万円(中央値は1億5000万円、平均値が5億7999万円)。月別でみると、2021年9月の合計資金調達金額は、同年6月には劣るものの、1月〜5月の金額を上回っている状況となる。

 なお、Spiberによる344億円の資金調達や、スマートニュースの251億円の調達を発表を受けた108億円の追加調達といった大型調達の影響により、平均値は2021年上半期全体と比較して2.3倍以上の数値に達している。

AI教材のatama plusが新規にランクイン

 同社では、10月11日時点での「国内スタートアップ評価額ランキング」も発表している。同ランキングは、登記簿情報に記載されている発行済みの顕在株、潜在株をもとに算出。また、子会社やINCJ主導で設立した企業は除外されている。

 
 

 それによると、atama plusが新規にランクインした。また、前回5位だったPaidyのEXITにより、同6位のTBM以降のランクイン企業は順位がひとつ繰り上がっている。

 20位に新規ランクインしたatama plusは、AIによる学習システム「atama+」を提供するスタートアップ。7月には、DCMとジャフコグループに加え、シンガポールの政府系ファンドであるPavilion Capitalと米運用会社大手のT. Rowe Priceなどを引受先とした、総額51億円のシリーズBラウンドの資金調達を実施。累計資金調達金額は約82億円に到達している。

 トップ20企業の累計資金調達金額も発表している。それによると、累計資金調達金額が1000億円を突破したSpiberのほか、スマートニュース、ネットプロテクションズホールディングス、ispaceの計4社の累計資金調達金額が増額しているという。

 
 

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