シャープ、白物、テレビの高付加価値化で国内好調–最終利益は前年比2.6倍に

CNET Japan

 シャープが発表した2022年3月期第1四半期(2021年4~6月)連結業績は、売上高は前年同期比18.9%増の6115億円、営業利益は86.3%増の183億円、経常利益は127.3%増の256億円、当期純利益は164.3%増の216億円となった。


2021年度第1四半期連結業績概要

 シャープ 代表取締役社長兼COOの野村勝明氏は、「半導体の隘路(あいろ)や原材料価格高騰、物流コストの増加などといった厳しい事業環境下でも、ブランド事業、デバイス事業ともに引き続き堅調に推移した。営業利益は前年同期比1.9倍、最終利益は2.6倍と大幅に伸長。白物家電やテレビは、高付加価値化を進めたことなどから国内で好調が継続し、海外も大きく伸長した。新型コロナウイルスの影響から、前年同期に業績が落ち込んだMFP事業やディスプレイデバイスも大幅に回復した。構造改革を着実に進めてきた成果である」と総括した。最終利益では、第1四半期としては、過去4番目の水準だという。


シャープ 代表取締役社長兼COOの野村勝明氏

国内の家電は前年同期比2桁成長、全主要製品で前年実績を上回る

 今回の決算から、セグメント別業績は、スマートライフ、8Kエコシステム、ICTによるブランド事業と、ディスプレイデバイス、エレクトロニックデバイスで構成するデバイス事業にわけて発表した。


セグメント別売上高

セグメント別営業利益

 ブランド事業の売上高が前年同期比17.2%増の3287億円、営業利益は24.0%増の189億円。そのうち、スマートライフの売上高が前年同期比16.4%増の1110億円、営業利益は23.9%増の126億円。「国内外で、高付加価値モデルが好調であり、国内は冷蔵庫などの大型家電やプラズマクラスターイオンが引き続き堅調。海外では、北米でビルトイン調理器などの調理家電の販売が大幅に増加。アジアは販売強化を進めたインドネシア、フィリピンを中心に増収となった。エネルギー事業も国内EPC事業が増収になった」としている。

 国内の家電は前年同期比2桁成長。主要製品のすべてで前年実績を上回っているという。また、海外の家電は20%近い成長を遂げており、海外全体では大幅な伸長になったという。


スマートライフ

 8Kエコシステムの売上高は前年同期比36.8%増の1375億円、営業利益は8.3倍の41億円。「前年同期には、新型コロナウイルスの影響から、プリントボリュームが減少し、落ち込みをみせていたビジネスソリューション事業が順調に回復している。また、高付加価値化を進めたテレビの国内売上げが大きく伸長している」という。

 テレビは、国内で2桁増。欧州、アジア、中国では、国内の成長率を上回る高い伸び率を達成しているという。シャープNECディスプレイソリューションの連結した効果も貢献している。


8Kエコシステム

 ICTは、売上高が前年同期比5.1%減の802億円、営業利益が53.4%減の21億円。「半導体の隘路や、スマホでのミッドレンジモデルの販売増加がマイナスに影響したが、欧州で教育向けPCが大幅に伸長した。部材価格の上昇など、マーケット変化の影響は受けたものの、通信事業およびPC事業とも着実に黒字を確保している」とした。


ICT

 同社では、ブランド事業において、2022年度までに営業利益率7%を目指しているが、第1四半期実績は5.8%。スマートライフが11.4%であったのに対して、8Kエコシステムは3.0%、ICTは2.7%に留まっている。なお、2021年度のDynabookの上場計画については変更がないとした。

 一方、デバイス事業の売上高は前年同期比19.8%増の3098億円、営業利益は前年同期の15億円の赤字から43億円の黒字に転換。そのうち、ディスプレイデバイスは、売上高が前年同期比24.1%増の2133億円、営業利益が前年同期の30億円の赤字から、33億円の黒字に転換。「半導体隘路の影響はあったものの、車載向けディスプレイが回復。PCおよびタブレット向けも堅調に推移するなど、中型パネルが伸長した」という。

 エレクトロニックデバイスは、売上高が前年同期比11.4%増の965億円、営業利益が26.1%減の10億円。「堅調な顧客需要を着実に取り込むことで増収となったが、原材料価格の上昇などにより減益。だが、赤字だった2020年度第4四半期からは黒字転換した」という。


ディスプレイデバイス

エレクトロニックデバイス

半導体は代替品、PSI管理などで影響を最小化、商品によっては価格転嫁も

 半導体不足や原材料価格の高騰の影響については、「白物家電、黒物家電、MFP、スマホ、PCで使う半導体が異なるが、いずれも影響が出ている。日本のメーカーからの調達確保に向けた対応のほか、半導体の調達において中心となる台湾では、コロナの影響で現地に在住している会長の戴(戴正呉氏)の力を使って、調達を進めている。部品そのものの変更、代替品への切り替え、細かいPSI(Production、Sales、Inventory)管理などで、影響をミニマイズする。商品によっては、価格転嫁も想定しているが、現時点では、テレビや家電への価格転嫁はしていない」と述べた。

 一方、2022年3月期(2021年4月~2022年3月)の通期業績見通しは据え置き、売上高は前年比5.1%増の2兆5500億円、営業利益は21.5%増の1010億円、経常利益は44.0%増の910億円、当期純利益は42.7%増の760億円を見込んでいる。

 「顕在化している半導体隘路や原材料価格高騰、物流コスト増に加え、足もとでは、新型コロナウイルスの感染再拡大に伴う影響も見られ、東南アジアなどではロックダウンの影響もみられる。生産面で影響が出てくる可能性もある。だが、第1四半期の業績は堅調に推移し、ほぼ想定通りに進捗。生産体制の柔軟な移管や、的確な対応を図ることで、リスクのミニマイズ化を図る。こうした考えのもとで、5月11日の前回予想を据え置いた」とした。

 また、「厳しい環境変化を社会貢献と事業変革の機会と捉え、新規領域での事業展開をさらに加速する。通期の業績予想を必達するとともに、強いブランド企業『シャープ』を早期に確立する」と述べた。

 なお、東京証券取引所による一次判定で、プライム市場の上場維持基準に適合していることを確認しており、「本日開催の取締役会で決議し、プライム市場を選択し、申請を行うことになる」とした。


会見の様子

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