都心物件を物色する中国人の狙い – NEWSポストセブン

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中国人富裕層が東京の一等地を買いあさっている(写真はイメージ)

 コロナ禍でインバウンド需要は壊滅状態だが、なぜか中国人による日本不動産の“爆買い”現象が起きているという。いったいなぜなのか。不動産ジャーナリストの榊淳司氏がレポートする。

【写真】日本で爆買いして帰国する中国人

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 外国人の日本不動産の“爆買い”が話題になったのは2015年から16年ごろだった。あの頃は街がインバウンドであふれていた。東アジア系の外国人が日本の不動産を買い漁っていると聞いても「さもありなん」と思える納得感があった。

 だが、そのムーブメントはなぜか2016年の後半には目立たなくなり、昨年から続くコロナ禍によって街からインバウンドが完全に消えた。

 ところが今また、中国人が日本の不動産を買っているという。

中国人富裕層が探す「都内の一等地」

 じつは私のところにも「中国人の富裕層に売る物件があったら紹介してください」というオファーが舞い込んでくる。こういう話が不動産業界の周縁にいる私のところにまで来るということは、バブルがピークに達している証である。

「どんな物件がいいのですか?」

 そう尋ねると、「やっぱり」と思えるような答えが返ってくる。立地は都内の一等地。港区や渋谷区、新宿区、千代田区。駅に近いオフィスもしくは商業ビルで2ケタ億円くらいまでのご予算。

 今の東京はコロナ禍で苦しんでいる。そういったオフィスや飲食系のビルが売りに出ている。不動産業者が公に閲覧できるレインズ(国交省所管の物件情報登録サイト)に出ていない物件が、時に私のところにまで回ってくるのだ。

 ただ、今はコロナ禍である。中国人が日本に入国するのは簡単ではないが、「物件が出ました」ということはメールなどで知らせることができる。

海外移転させた資産を不動産に

 物件資料として図面や写真、動画を送ることも可能だ。しかし、現地を実際に見ることはかなり困難。入国できないからだ。それでも、「分かった、その物件を買う」と決めてしまう中国人は少なくないらしい。

「先日も数十億円のビルを売りました。お金はスイスとケイマン諸島の銀行から送られてきましたね」

 私のところにやってきた、中国人富裕層のエージェントはそう言っていた。どうやら、中国人の富裕層たちは自国から外貨を持ち出すのではなく、すでに海外に移転させた資産を日本の不動産に変えようとしているのだ。

 もとより、中国の外貨持ち出し制限はかなり厳しい。

「この前まではビットコインなんかが使われていましたが、今はそれもできなくなったみたいです」

 中国がビットコインなどの仮想通貨を目の敵にして規制しているのは、それが外貨持ち出しの抜け穴になっていたからなのだろう。

中国人にとって東京の不動産は「安い」

 さらに、中国人にとって東京の不動産は「安い」水準に見えている。

 その理由は、ニューヨークやロンドン、パリなど世界の一流ブランド都市の一等地に比べると、まだまだ東京の不動産は安いという現実がある。自国の主要都市である北京や上海、深センの不動産と比べてさえ、東京は安いのだという。

 例えば、北京のマンションを賃貸運用すると、利回りは普通に1%台。東京の港区あたりだと3%から4%。しかも、中国は最長70年の借地権でしかないが、東京に限らず日本では完全な所有権。外国人の不動産所有には今のところ何の制限もない。

 そんな東京の不動産が、中国の富裕層にとってかなり魅力的であることには、ある程度納得できる。

渋谷、六本木など「地名入り物件」が売れるワケ

 ただ、彼らは現在日本へ自由に入国できない。現地で物件を確認できなくても購入を決めて、海外のどこかから代金を送ってくる例は少なくないが、やはりそこにはリモートならではの特徴もある。

「渋谷」や「六本木」、「新宿」、「赤坂」といった、外国人にも知られているような地名が付けられる物件がよく動くという。

「東京の新宿にビルを買った」
「赤坂にあるマンションを買った」

 家族や知人にそう言えば、説明しやすいし自慢にもなるのだろう。日本にいる彼らのエージェントもそれが分かっているから、「分かりやすい」物件を紹介することが多い。

 さらに、伊豆や箱根の高級旅館を中国人の投資家が購入しているという現象も見られるという。コロナ後に大挙してやってきそうな中国人観光客の需要を見込んでいるのだ。

中国からの入国制限が続く可能性

 コロナは再び感染拡大をしており収束の見込みが立たないが、少なくともワクチン接種が進んでいる欧米先進国では峠を越した様子が見受けられる。日本でもワクチン接種が進めば感染の沈静化は見えてくるはずだ。

 もっとも日本の場合、五輪開催で世界の変異種が東京にまん延しそうなので、秋口には再び感染拡大の波がやってくる可能性もありそうだが、それでも今年いっぱいには収束が見えることを期待したい。

 ところが、中国での収束はちょっと怪しくなっている。中国製ワクチンは「効かない」という現象が世界各地で発生している。仮にそうだとすると、肝心の中国国内では欧米的な基準での収束が怪しくなる。

 現にフランスはワクチン接種者への入国制限を緩和しているが、中国製ワクチンに関しては緩和条件から除外している。この動きは今後世界的な傾向になり、日本でもそうなる可能性がある。すると、来年以降も中国からの入国制限が続くことになる。

 中国人富裕層たちの日本の不動産へのリモート投資は当面続くのか。それとも、どこかで「あきらめ売り」となるのか。来年にかけての動きが注目される。

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