[再]デカ盛りのオムライスが突然なくなった日~東急沿線さんぽ

デイリーポータルZ

オムライスをめぐる悲しい思い出。

満腹以上に満腹になりたいときがある。そんな気分に行きたいのは大盛のお店だ。

しかも普通の大盛りじゃない、激盛である。これは行くしかない。はやる気持ちをなんとかおさえて行ってみた。

※この記事はデイリーポータルZの運営元であるイッツコムのサービスエリアの魅力を紹介する記事です。

うわさの食べ物は上野毛にある

東急大井町線の上野毛(かみのげ)駅。「動物園があるところ」だと思っていたら、全然違った。あれは野毛山だ。しかも、東急沿線じゃなかった。

動物園があることをあきらめきれず、動物のポスターがあるので「ほらあるじゃないですか!」と思ったら像だった。
そんな話をライターの北向さんと話しながらお店に向かった。

間違わなければ駅から歩いて3分ぐらいのところにそのお店がある。自信満々に「こっちですよ」とガイドをしたが思いっきり道を間違えて、今回は10分ぐらいかかった。「すみません、道が違いました」と強めの雨が降る、とても足もとが悪い中お伝えした。

吉兆のデカ盛りシリーズ

そんな困難を乗り越えて到着したのが、「お食事処吉兆」である。

外観からただ者ではない、落ち着いた雰囲気ながらも貫禄すら感じる。

地元の人たちに愛されるお店で、お昼にはお客さんたちでにぎわう。早めに行って正解だった。

やってくれそうな店内の雰囲気がある。

テレビなどでも紹介されており、芸能人の撮影した写真なども飾られている。芸能人の写真を見るとテレビ大好きっ子なので興奮するが、メニューを見てさらに心がおどる。もう盆踊りをしよう。

さんまやさばの塩焼き定食が置いてあるお店は当たりのお店です。(個人調べ)

さばの塩焼き定食やナポリタンとカレーライスのセットも気になるが、今回紹介したいのはこちらだ。

デカ盛シリーズ。

デカ盛りシリーズである。最初に書いてあるのは激盛オムライスである。頭に「激」がつく食べ物を聞いたことがない。しりとりで「食い逃げ」と言われたら、「激盛オムライス」と元気いっぱいに言おうと思う。

さてどれを頼もうか。一番人気はオムライス、その次がカツ丼だと言う。今日は一番人気のオムライスを食べてみることにした。
シェア禁止で残す人も多いらしく「量が多いですが大丈夫ですか?」と店員から聞かれるが、こちとら無限に食べてきた男である(参考)。「大丈夫です」とまるでイギリス紳士のように落ち着いて答えた。

とんかつと唐揚げマヨの定食もいいな。日替わりとのことです。

やってきた激盛オムライス

比較するために北向さんには普通サイズのオムライスを頼んでもらった。そのオムライスがこちらだ。

チキンライスに薄焼きたまごを巻き、ケチャップをたっぷりかけた昔ながらのオムライス。

最近、たまごはとろとろで半熟、そしてデミグラスソースがかけたオムライスがあるだろう。あういうのは「よし食べるぞ!」と気合いを入れないと食べられないが、こちらは気取ってないオムライスである。口にケチャップをつけながら勢いよく食べたい。

普通サイズでもそこそこ大きい。

普通サイズのオムライスが運ばれてきてから数分後、激盛オムライスがやってきた。やはりサイズが大きい分、提供されるまでに時間がかかるそうだ。

まくらの大きさである。オムライスのまくらなんてファンシーだし、原宿で売ってそう。
比較するとだいたい普通のオムライス4つ分ぐらいある。

正義とはなにか、オムライスがでかいということだ。オムライスがでかいだけで世界が平和になる。ありがとう、でかいオムライス。

チキンライスが絶品。

そして気になる味だが、大きめにみじん切りされたタマネギはケチャップと混ざり合って、甘みとうま味がより引き立つ。アクセントでピリリと効かせたコショウも食欲をわかせてくる。ずっと食べられる家庭的なオムライスだ。

あまりのおいしさに食べたまま寝た。(寝てない。)

激盛オムライスは大体1キロぐらいの量があるらしいがそのぐらいペロリである。「もう、おなかいっぱいなんですよ~」のような弱々しいことは言わない。その証拠に半分ぐらい食べたタイミングで「今、満腹度、どのくらいですか?」と聞かれたので、

「4割です!」と伝えた。まだまだ食べられるのはありがたいですね。

そして2人とも15分弱で食べきった。とてもおいしかったし、セットについてきたみそ汁も優しい味で心も体も満足だった。

大きめのオムライスだったがお皿まできれいに食べた。北向さんはこのあと友人たちと1kgのチーズが乗ったピザを食べるそうです。いいな。
こちらも完食。改めて見るとお皿がとても大きい。

他のメニューを食べようとしたらやってない

他の大盛りのメニューも気になるのでまた別日に来ようと思いお店を出た。2019年6月22日のできごとである。

そして、7月18日にもう一度行ってみた。平日の夜である。23時までやっているそうなので、仕事終わりにメンチカツカレーを食べに行くことにしたのだ。お昼を食べていなかったのでお腹はペコペコだ。

しかし、遠目でみた感じ、看板の電気が付いていない。でも、たまにそういうお店ってあるじゃないですか。

念のため行ってみると、
休業でした。
そりゃ写真もぼやけるさ。

年中無休と書いてあったが、急に休みになるときだってある。この日は近くにあるココイチでカレーを食べて帰った。美味しかった。

そして、翌日も吉兆へ向かう。2日連続で休みになるなんてことはないだろう。

しかし、まさかの2日連続休み。
マジかよ。

やっていなかった。なぜだ。あんなににぎわっていたじゃないか。もしかしたら営業時間が変更になったのかもしれない。

一応、翌日も行ってみたがやっていなかった。

吉兆の真相を知りたい

営業時間が変更になったか、土日しかやっていないかのどちらかが考えられる。さすがに不安になってきたので電話をしてみることにした。7月22日のできごとである。

電話をかけてみる。
電話はかかるが全然出ない。

果たしてなにが起きているのか。真相がわからない。もう一度、現地に行けば何か解決するかもしれない。急いで5度目の上野毛に向かった。

やはり店内は暗く、ドアには「本日休業」の札が。

土曜日の昼間にやってきたのだがやはり閉まっている。今日もやっていないようだ。

中をのぞくと色々な荷物が置いてある。

どうなっているのか。近くのお店で聞いてみることにした。すると、「あそこ、最近までやっていたのだけど、店主が体調不良になって6月30日で閉店したって聞いたよ」と教えてくれた。え、閉店。

常連の方も悲しんでいるようである。長年愛されたお店の突然の閉店。大切なお店が失われた瞬間だった。

いつまでもあると思うな行きたいお店

ずっとあると思っていたお店が急になくなってしまう悲しさ。今、あなたが行きたいお店があるとしたら、すぐに行った方がいいだろう。「いつか行こう」は絶対に行かないのだから。

閉店はいつだって突然だ。

岸本 好弘
交通新聞社
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