もうブログは時代遅れでしょうか? やはりポッドキャスト? それともいまさらYouTube?
個人がウェブで情報を発信するときに「なにを」「どこに」投稿するのかという問題については、2018年ころからたびたび話題にしてきました。
死に続けるブログと「どこに書けばいいのか問題」 | Medium
どの道を選ぶにしても、個人である以上は生み出すことができるコンテンツの量には限界があるのと同じように、それを受容してくれる読者・リスナーの側のアテンションも分散化していることも意識せざるを得ません。みんな、ブログばかり読んでいるわけでなければ、YouTubeだけを見ているわけでもないのです。ツイッターだけを見ているわけでも、Facebookのアルゴリズムによって激しく検閲されているタイムラインに気づいてくれるわけでもありません。
コンテンツの投稿と流通と発見がそれぞれのサービスで融合して境目が見えなくなるほど、皮肉にもみなのアテンションは分散化していきます。
ここで私は、書き手が「どこに書くべき」がしだいに多様化すると同時に、見る側の「どのように発見するか」も散らばるようになって、本来つながりたいと思っていた読者や視聴者と繋がりにくくなってしまう現象についてまとめました。その基本的な状態は2020年でも変化はありません。
ウェブというプラットホームはテキストも、映像も、音声もすべて受け入れる多様さをもっていますし、誰もが投稿できる参入障壁の低さも兼ね備えています。それによって、もはや「良いコンテツ」を選ぶというキュレーションの段階すら凌駕して、良いものをすべてみるだけでもすべての人の可処分時間を超えてしまうのです。
受け手のアテンションはもうブログやRSSにはなく、SNSやYouTubeやポッドキャストやTikTokといった幅広いレンジに散らばっています。発信する側としては、どこにいけばつながるべき人とつながれるのかわからないというジレンマが生まれます。
2019-2020年は note が注目され、多くの記事が投稿されるようになりましたが、それにも陰りがみえてきているように思えます。というのも、note のなかで note の記事を探すことが困難で、結局はSNSのバズの尻馬に乗っている状態に近いからです。それなら連続ツイートのほうが効率がいいとさえいえます。
そんななか、読者とのつながりかたについて新しい潮流を生み出しつつあるのが Substack の存在です。
メルマガであり、ブログでもある Substack
Substack はメルマガ / ニュースレターを送信するためのサービスです。ユーザーはメールアドレスでパブリケーションに登録し、更新があるとメールでそれが受信箱にも届きます。RSSのかわりに、メールが情報をプッシュしているというわけです。
違いがあるのは、Substack の場合記事は公開の場合はブログのようにウェブサイト上でも読むことができる点です。大手のニュースレター配信サービスの Mailchimp も同様に発行した記事へのパーマリンクを作ってくれますので似ているようにみえますが、Substack の場合はもう一歩進めてそれぞれのパブリケーションにサブドメインが切ってあり、ブログのトップページも作成されています。
こうなると、メルマガとして読者に直接コンテンツをプッシュしつつ、新規読者は公開された Substack のトップページで集めることができる、SNS にもその記事をシェアできるといったメリットがうまれます。
また、Substack には月額課金の仕組みもあり、有料会員むけの限定公開の記事を作成することもできます。同一のパブリケーション内で限定公開の記事と、公開されている記事とで傾斜を作ることもできるのです。
そうした機能の配分もあるおかげで、Substackはブログでありながら読者に直接記事をプッシュするという特徴をもった、オープンであり、クローズドでもある、あいまいなメディアを生み出せる場所になります。
アテンションが分散していて、どこで書き手と読み手がつながればいいのか悩ましい時代において、わざわざ読者をnoteやブログに引っ張るのではなく、読者のもとに直接コンテンツを送信できるオープンで課金可能な仕組みというのは、なかなか面白い位置づけだと思います。
ライフハック・ジャーナルをSubstackに移行しました
そうしたサービスの特徴に気づいてから、これまでnoteの定期購読マガジンで提供していた「ライフハック・ジャーナル」をこちらに移行するのがよさそうだという判断になりました。
もともと「ライフハック・ジャーナル」はこのブログを読んでいる人向けのマガジンでしたが、であるにも関わらずこのブログと、noteとに読者のアテンションが分散してしまうという難点がありました。
Substackを使えば、メルマガはメルマガらしくプッシュ的に送信しつつウェブにオープンに公開し、ブログはこれまで通りパブリックにしておくという使い分けができるようになると思ったわけです。
ところで、本ブログはこれまでnoteの定期購読マガジンの購読料のおかげで広告フリーで提供してこれたのですが、Substackでもそのうち定期購読を試してみることで、このモデルを今度も継続したいと思っています。ひとまずは、すべて無料の記事にしてあります。
「どこに書くのか」「誰に向けて書くのか」といった問題は年々複雑になっていますが、それは知的生活・知的生産の重要なテーマでもあります。今後、Lifehacking.jp では検索経由で来た誰にでも読めるような文章を掲載するのに対して、Substackではわたしの書いているものをある程度知っている人向けの距離感の近いメディアとして、使い分けを構築していけないかとテストしているところです。
というわけで、もしよろしければ登録いただけるとうれしいです。およそ週に一回、ライフハック・IT・知的生活・知的生産の話題についてコラムや論説を書いている予定です。