最近、暗いニュースが多い。気分が落ち込みがちである。何か明るい話題はないものかと思い、ネットを徘徊していたところ、こんな情報を見つけた。さる2022年3月9日に、「ウニのような豆腐」が発売されたというのだ。
この豆腐は文字通り、食べるとウニのような味わいがするらしい。明るい。あまりに明るすぎる。本当にそんな豆腐作りが実現されたのだとしたら、まばゆいばかりの光明が差してきたと言うほかない。実際にその味を確かめるべく、実物を入手したのでレビューしたい。
件(くだん)の商品は、正式名を「うにのようなビヨンドとうふ」という。食品メーカーの相模屋が、自社ブランド「ビヨンドとうふ」の新商品として発売したものである。価格は相模屋の楽天ショップにおいて6個セット1728円だった。
公式HPによれば、社長の「豆腐でウニを作ろう」という一声が商品を作るきっかけだったらしい。何が社長をその隔絶した境地に至らしめたのかは計り知れないが、ともあれ豆腐を食べながらにしてウニの味を楽しめるのは画期的でしかない。
問題は、どれくらいウニの味がするのかということだ。届いた実物を開封してみると、カップに入った「ウニのような豆腐」がお出ましした。少なくとも、見た目の色合いはかなり本物のウニに近い。ウニのカップ詰めを買ったのではないかと勘違いしそうになる。
カップから皿に取り出すと、事態はさらに混乱を誘う。「ウニのような豆腐がプリンのような振る舞いをしている」という、幾重にも文脈が折り重なった複雑極まる光景である。何とか正気を保ちつつ、まずはそのまま一口食べてみる。
そうして口に含んだ瞬間、間違いなく生まれて初めて体験する味がした。尋常の豆腐ならざる濃厚なコクは、良質なウニのそれに酷似している。加えて舌先でクリーミーに溶ける柔らかな食感も、ウニの幸福な食べ心地を想起させてやまない。
が、そのコクや食感の奥には大豆の風味がしっかりと待ち受けていて、いま口にしているものが豆腐であることを示すように香り、後味は汚さず優雅に去っていった。ああ、これは確かに「ウニのような豆腐」だし、「豆腐のようなウニ」でもある。良い意味で、わけがわからない。
わけがわからないが、クセになる。ウニと豆腐の高次元の共演に魅せられる。一方で、「ここに手を加えたらどうなるのか」という思いにも駆られる。そこで次にわさび醬油を投入したところ、これがまた唸るほど美味だった。深い旨味が一層深くなり、中毒性がいや増していく。
おまけにそれを温かいご飯の上に乗せたりした日には、もうたまらないし止まらない。ウニ丼を食べているのか、豆腐かけご飯を食べているのか、あるいはご飯豆腐ウニを食べているのか、もはや判断がつかないがどうでもいい。美味しいのだ。それだけ全ての素材の良さが感じられて仕方ないのだ。
最後に一つ付け加えるとするなら、この商品は「ウニのような豆腐」であるとはいえ、ウニ特有の磯臭さは限りなく薄い。なのでウニが苦手だという場合も食べやすいのではないかと思う。気になった方は是非入手して、世にも特別な体験に浸ってみてほしい。
すでに筆者は、十分すぎるほど幸せな気持ちにさせてもらった。明るい。あまりに明るすぎる。海という境界を越えてウニと豆腐が出会った奇跡に、水平線から昇る朝陽のまばゆさを見出さずにはいられない。
参考リンク:相模屋「うにのようなビヨンドとうふ」商品HP、楽天ショップ
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.