2021年秋までは順調に回復基調だった国内線の航空需要が、オミクロン株の感染急拡大で急ブレーキがかかっている。日本航空(JAL)とANAホールディングス(HD)が相次いで発表した22年3月期第3四半期(21年10~12月)の決算では、好調が続く貨物需要や旅客需要の回復で、JALは赤字幅が縮小し、ANA HDが8四半期ぶりに営業黒字を計上した。
22年1月の旅客需要は前年秋時点の想定を下回っているが、通期業績予想は両社とも据え置く考えだ。オミクロン株が早期に収束する可能性があることに加えて、貨物で増収の可能性もあるためだ。
「国内の感染状況が落ち着いていれば営業利益を創出できる」
JALの21年10~12月期の連結決算では、EBIT(利払い・税引き前損益=国際会計基準に変更する前の「営業利益」)は315億円の赤字(前年同期は701億円の赤字)で、赤字幅が大幅に縮小した。ANA HDの営業利益は1億円の黒字(前年同期は814億円の赤字)で、8四半期ぶりの営業黒字転換を果たした。四半期ベースでは22年1~3月期の黒字転換を目指していたが、3か月早まった。
2月1日にオンラインで記者会見したANA HDの福沢一郎専務は、
「各国の渡航制限などにより、国際線旅客需要が低迷に推移している中でも、国内における新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いていれば営業利益を創出できる企業体質に変革しつつあることを確認できた」
などと黒字転換の要因を分析した。
ただ、オミクロン株の感染拡大で、好調が続くかは不透明になってきた。JALは1~3月の旅客需要について、国際線でコロナ前の20%、国内線は90%の水準に回復するとみていた。だが、2月2日にオンラインで記者会見した菊山英樹専務によると、1月の実績は、国際線が11%、国内線は50%程度と大きく下回った。
ANAは国際線でコロナ前比20%、国内線80%の水準を見込んでいたが、福沢氏は国際線について「水際対策も厳しい条件のなかで、この前提は崩れつつあるというのがリアリティある世界」、国内線について「残念ながらこの8割水準には到達することが難しい」と話した。
通期の業績予想はJALが売上高7660億円、EBITが1980億円の赤字、1460億円の最終赤字を見込む。ANA HDが売上高1兆600億円、1250億円の営業赤字、1000億円の最終赤字を予測している。この業績予想は21年10月末~11月初頭に発表されたが、両社とも現時点では据え置く考えだ。