【山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ】防水対応、ページめくりボタンを搭載した7型のスタンダードモデル「楽天Kobo Libra 2」

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「Kobo Libra 2」。実売価格は23,980円。現行のKoboシリーズの中では唯一ホワイト筐体をラインナップする

 楽天の「Kobo Libra 2」は、7型の画面を備えたE Ink電子ペーパー搭載端末だ。本体横にページめくりボタンを搭載し、タップやスワイプ以外にボタンによるページめくりも行なえることが特徴だ。

 本製品は、同時に発表された8型モデル「Kobo Sage」のようにスタイラスに対応したり、バッテリ内蔵カバーなどのオプションこそ用意されないものの、ミドルクラスの製品としては珍しくページめくりボタンを搭載するほか、画面サイズも6型ではなく7型であるなど、新しいスタンダードモデルという位置付けの製品だ。

 今回は、筆者が購入した実機をもとに、従来モデルに当たる「Kobo Libra H2O」、および上位モデルの「Kobo Sage」などと比べた場合の使い勝手をチェックする。

Carta 1200採用、USB Type-C搭載など“近代化改修”を実施

 まずは従来モデルに当たる「Kobo Libra H2O」、さらに同時発売の上位モデル「Kobo Sage」と比較してみよう。

Kobo Libra 2 Kobo Libra H2O Kobo Sage
発売月 2021年10月 2019年9月 2021年10月
サイズ(幅×奥行き×高さ) 161.6×144.6×9.0 mm 159.0×144.0×5.0~7.8 mm 181.4×160.5×7.6 mm
重量 215g 192g 240.8g
画面サイズ/解像度 7型/1,680×1,264ドット (300ppi) 7型/1,680×1,264ドット(300ppi) 8型/1,920×1,440ドット (300ppi)
ディスプレイ モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta 1200) モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta) モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta 1200)
内蔵ストレージ 約32GB 約8GB 約32GB
フロントライト 内蔵(自動調整) 内蔵(自動調整) 内蔵(自動調整)
ページめくり タップ、スワイプ、ボタン タップ、スワイプ、ボタン タップ、スワイプ、ボタン
端子 USB Type-C Micro USB USB Type-C
防水/防塵機能 あり(IPX8規格準拠) あり(IPX8規格準拠) あり(IPX8規格準拠)
バッテリ持続時間の目安 数週間 数週間 数週間
価格(税込) 23,980円 25,080円 30,800円

 従来との大きな違いは、E Inkパネルに世代の新しいCarta 1200を採用したこと、また8GBだったストレージが32GBへと増えたことが挙げられる。さらに端子がMicro USBからUSB Type-Cに改められるなど、“近代化改修”とでも言うべき設計の変更が行なわれている。

 その一方で、見た目や機能は大きく変わっていない。画面サイズは7型、ページめくりボタンを画面横に備えており、タップ・スワイプ以外にボタンによるページめくりが行なえる。寒色と暖色の両方に対応したフロントライト(ComfortLight PRO)や、IPX8規格準拠の防水機能を搭載するのも、従来と同じだ。

 ただし筐体サイズは若干大きくなり、重量も20g強増している。実際に手に持っても明らかに重く、またグリップ部に厚みを感じる。単体ではとくに問題はなくとも、従来モデルからの乗り換えだと気になるだろう。同時発売のKobo Sageのように、重量増と引き換えにスタイラス対応など新機能が搭載されたわけではないので、ややマイナスだ。

機能、使い勝手ともに従来モデルからほぼ変化なし

 では実機を見ていこう。同梱品は、ケーブルとクイックスタートガイド類など一式のみで、充電器は付属しない。なお本体ポートの変更に伴い、ケーブルは今回からUSB Type-C仕様に改められている(USB Type-A→Type-C仕様)。これらは同時発売の8型モデル「Kobo Sage」とほぼ同様だ。

同梱品一覧。本製品はスリープカバーなどがラインナップされるが、これらは別売オプションであり同梱はされない

ケーブルはUSB Type-C仕様に改められているが、Kobo Sage(左)のようなメッシュ仕様ではなく、またカバー部が大きいなど、ローコスト仕様だ

 セットアップの手順はKobo Sageと違いはない。ソフトウェアアップデートのあとに再度Wi-Fiのパスワードを要求されるという、不具合らしき挙動も同様だ。

 メニュー類もざっと見比べる限り、特に従来との違いはない。同時発売のKobo Sageはスタイラスに対応するため、新たに「ノート」というメニューが追加されているが、本製品は従来モデルそのままだ。

 しばらく使ってみたが、使い勝手はまったくと言っていいほど変わらない。強いて挙げればボタンがやや押しやすくなっているが、劣化しやすいグリップ部の素材を変更したKobo Sageのような、素材の違いもない。前述のように見た目はほぼ同一なので、常用しているユーザーでもなければ、違いに気づかなくてもおかしくない。

 Kobo Sageと比べて使いやすいのは、フロントライトの調節だ。Koboシリーズは画面左端を上下になぞることで明るさを調整できる機能を備えるが、本製品はベゼルと画面に段差があるので、これに沿って指を滑らせれば済む。段差がなくフラットなKobo Sageではこの操作がしづらく、本製品のほうが明らかに使いやすい。

 その一方、浴室などで使ったあとに、この段差に水滴が残りやすいのはマイナスだ。明るさ調整のしやすさと合わせると、一長一短と言える。このあたりはどちらが正解というわけでもなく、なかなか難しい。

 その他のモデルとの比較ではどうだろうか。本製品よりも下位のモデル、具体的には6型のKobo Clara HDと比べると、画面サイズは一回り大きく、またページめくりボタンを搭載していることから、使い勝手は良好だ。実売では8千円ほどの価格差があるのだが、それだけの価値は十分にある。

 一方、本製品と同じく7型で、やはりページめくりボタンを備えるAmazonのKindle Oasisと比べると、価格面の強みはある(32GBが本製品は23,980円、Kindle Oasisは32,980円)ものの、ページめくり速度などのレスポンスでは大差をつけられている。これについてはのちほど詳しく見ていく。

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【動画】側面をなぞってフロントライトの明るさを調整したのち、寒色から暖色へと切り替えを行なっている様子。同時発売のKobo Sageと違って段差があるため上下になぞりやすい

ページめくり速度も向上(ただしごくわずか)

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を用いている。

 同時発売の8型モデル「Kobo Sage」と同様、画面右に2つのページめくりボタンを搭載している。これを用いることで、タッチ操作を使わずにページをめくることができる。筐体を180度回転させると、ボタンの役割も上下で入れ替わる仕組みだ。

 このボタンを含めたレスポンスが、従来モデルに当たるKobo Libra H2Oと比べて高速なのも利点だ。といってもごくわずかなのだが、同時発売のKobo Sageは、スタイラスに対応しているためか、タッチに対するレスポンスは従来モデルよりもわずかに遅くなっているので、本製品はその点、モデルチェンジの恩恵はあると言える。

 一方の、画面の表現力の部分では、新たにCarta 1200を採用しているため、従来に比べて黒が引き締まっているのもポイントだ。ベタ塗りが多いコミックなどでは有利だろう。解像度も300ppiあることから、表示性能も十分だ。

 見開き表示についてはどうだろうか。本製品は画面を横向きにすることでコミックなどを見開きで表示できるが、とはいえ7型というサイズの限界もあって、8型のKobo Sageと比べると、さすがに窮屈さを感じる。コミックの見開き表示を多用するならば、Kobo Sageを買ったほうがストレスは少ないだろう。

 とはいえ、ページめくりボタンの配置とページの進行方向も一致しているので、使い勝手自体が悪いというわけではない。また6型クラスのスマホで表示するよりも1ページのサイズは大きいので、小さすぎて読めないわけでもない。あくまで8型のKobo Sageに比べるとサイズ的に不利というだけだ。

テキスト表示。文庫本よりやや大きいサイズ。単行本サイズと呼ぶにはやや小さい

天地を入れ替えて反対側の手で持つこともできる

コミックの表示。こちらも左右どちらでも持つことができる

画面を横向きにすることで見開き表示に切り替わる

ただし画面は7型なので、見開きを多用するならば8型のKobo Sage(上)のほうがよいかもしれない

 他機種とも比べてみよう。画面サイズが同じ7型のKobo Libra H2OやKindle Oasisとは、解像度の差もなく、見え方はほぼ同じ。Carta 1200を搭載していてコントラスト差がはっきりしていると言っても、フロントライトを完全にオフにしてようやく違いがわかるかどうかといったレベルなので、決定的な差にはなりにくい。

 ポイントになるのはやはり画面サイズ、そして重量だろう。8型のKobo Sageは本製品よりも画面がひとまわり大きいものの、重量が240.8gと、本製品(215g)より重いのがネックだ。Kobo Clara HDは166gと、本製品よりも約50g軽いが、こちらは6型、かつページめくりボタンを搭載しない。そうした意味では、よくもわるくも無難な選択肢というのが、本製品の評価だ。

 なおライバルであるKindleは先日、主力機種であるKindle Paperwhiteが6型から6.8型へと大型化を果たし、本製品と競合するポジションになったが、こちらは安価なぶんページめくりボタンが搭載されていない。ページめくりボタンを搭載しつつなるべく安価、かつひととおりの機能が揃っているという条件では、本製品はよい選択肢だと言える。

Kobo Libra H2O(右)とは画面サイズが同じ7型で、見え方も変わらない。解像度も同一だ

8型のKobo Sage(右)との比較。コミックだとかなりの画面サイズの違いを感じる

6型のKobo Clara HD(右)との比較。本製品のほうが息苦しさがない。ただし筐体横幅はかなりの差がある

7型のKindle Oasis(右)との比較。画面サイズ、表示サイズともにほぼ同一だ

画質の比較。いずれも単ページで、上段左が本製品(300ppi)、右がKobo Libra H2O(300ppi)、下段左がKobo Sage(300ppi)、右がKindle Oasis(300ppi)

単ページ(左)と見開き(右)の画質の比較。読めなくなるほどディティールが悪化することはないが、髪の線がやや太くなり、1本1本の線がわかりにくくなっている

 ただし他機種と比べるのであれば、ページめくり速度はどうしてもネックになる。前述のように本製品は、Kobo Sageおよび従来モデルよりは速いものの、見比べてようやく分かるレベルでしかなく、Kindle Oasisに比べると、そのケタ外れの速度差に驚かされる。

 ちなみに前述の新型Kindle Paperwhiteは、Kindle Oasisと同等のレスポンスなので、差はむしろ広がりつつあることになる。せめて従来からの課題である、コミック1ページごとに強制リフレッシュさせる挙動が改められれば、動作速度はもちろん見やすさの面でもかなり変わってくると思うのだが、現時点ではその兆しは見られない。

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【動画】Kobo Libra H2O(右)とのページめくり速度の比較。ボタンにせよスワイプにせよ、連続してめくっていると、本製品のほうがレスポンスが速いのが徐々に目立つようになる

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【動画】Kobo Sage(右)とのページめくり速度の比較。本製品のほうがわずかに高速だ。Kobo Sageは従来モデルよりレスポンスが悪くなっていることが影響していると見られる

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【動画】Kindle Oasis(右)とのページめくり速度の比較。7型でページめくりボタンを搭載するという点では競合に当たる製品だが、速度差は圧倒的だ

機能面では大きな変更のないストレートな後継モデル

 以上のように、レスポンスは若干高速化しているが、そのためだけに買い替える必要はなく、あくまでも通常ラインナップのモデルチェンジと捉えるべき製品だ。むしろKobo Libra H2OやKobo Clara HDのユーザーから見ると、32GBという容量が魅力的かもしれない。

 ところで本稿執筆時点では、本製品は一部に不具合も見受けられる。具体的には、画面の縦横を自動的に切り替えるたびに、しおりの同期を行なうかを確認するメッセージが表示され、「はい」を押すと延々とループするという症状だ。「キャンセル」を押しても毎回そのメッセージが表示されるので、自動回転機能をオフにするくらいしか回避方法がない。

 これ以外にも前述のように、セットアップ時にWi-Fiパスワードを二度入力しなくてはいけない不具合もある。従来モデルは問題なく動作していたのに、新しいモデルで不具合が発生するのは、プラットフォームを移植した場合ならばともかく、設計側もよく挙動を把握できていないのではと心配になる。

本稿執筆時点では、自動回転をオンにしていると、縦横を切り替えるたびにこのしおり同期のダイアログが出現する不具合がある。コミックによっても違いがあるようだ

【動画】上記不具合の動画。「はい」を選んでも移動せずループ状態になるので、本稿執筆時点では自動回転をオフにするしかない

 ひとまず、ソフトウェアアップデートでこれら不具合が修正されるという前提で話を進めると、本製品は従来モデルに近代化改修を施したストレートな後継モデルであり、買い替えを要するほどの機能面での進化は見られない、という評価になる。

 それゆえ、専用端末に興味を持つ新規のユーザーで、8型のKobo Sageは予算や重さの条件が合わず、かといって6型だと小さすぎるというユーザーがたどり着く解という位置づけになるだろう。今回紹介したホワイトのほかブラックをラインナップしていることも、筐体カラーにこだわるユーザーにはプラスになりそうだ。

ブラックに加えてホワイトモデルがラインナップされるのは本製品のみ。手の脂が目立ちにくいのもプラスだ

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