もっと深刻化するってことか…。
温暖化の影響で深刻化する陸地の火災が引き起こす大気汚染により、世界で年間150万人以上が命を落としていることが明らかになりました。その犠牲者の90%以上が開発途上国に集中しています。
景観火災による死者が153万人
国際的な研究チームが医学誌Lancetに発表した学術論文で、山火事や計画的な焼き畑などを含む「景観火災」に起因する大気汚染が世界で年間153万人の死亡に関連していることがわかりました。
研究チームは、世界59の国と地域にわたる2,267のコミュニティを対象に、2000年から19年までの検証済みデータセットを分析し、景観火災による大気汚染の健康影響を調査したそうです。
具体的には、微小粒子状物質(PM2.5)と地表オゾンの濃度を測定し、短期・長期の健康リスクを評価しました。2019年の世界疾病負荷調査のデータと標準的なアルゴリズムを用いて国別の年間死亡数を推定し、景観火災による大気汚染が健康に与える包括的な影響を明らかにしています。
その結果、2000年から19年における死者数が多かった症例は、心血管系疾患が45万人、呼吸器系疾患が22万人と推定されています。また、PM2.5と地表オゾンに由来する死者の割合は、それぞれ77.6%と22.4%になっています。
地域的な特徴として、死亡者数の90%以上を低・中所得国が占めています。特に、死者の40%が集中するサハラ砂漠以南のアフリカが最も深刻な状況にあるといいます。
大気汚染の地域格差
死亡者数が最も多かったのは、中国、コンゴ民主共和国、インド、インドネシア、ナイジェリアの5カ国で、特にサハラ砂漠以南のアフリカでは年間60万人以上、東南アジアでは20万人以上が犠牲になっています
研究チームは、気候変動による森林火災の増加と激甚化によって、今後さらに状況が悪化する可能性を指摘しています。また、温暖化に寄与していない国々が最も深刻な影響を受けているとする、気候変動における不公正の問題に警鐘を鳴らしています。
対策にも格差
経済的に脆弱(ぜいじゃく)な地域では煙害から身を守るための空気清浄機設置やマスク着用、避難といった対策の実施が困難であることも指摘されています。その上で、特に低所得国に対する財政的・技術的支援の必要性を訴えています。
2019年の時点で、低所得国の死亡率は高所得国の4倍に達しており、社会経済的な格差が浮き彫りになっています。
研究チームは、論文で次のように述べています。
「温暖化が進行するなか、このような深刻な健康被害と環境的不公正に対処するには、緊急の対策が必要です。」
Source: The Lancet, Phys Org