新たに発見された「ハロウィン彗星」、太陽に近づきすぎて崩壊

生き残れば金星より明るかったはず、残念。

今年9月に新たな彗星が発見され、ハロウィンの頃には太陽に近づいて肉眼で見えるかも?と期待されてました。が、残念ながら彗星のトリック・オア・トリートは実現できなかったようです。彗星は太陽に近づきすぎて、バラバラになってしまったんです。

最期の輝きがこちら

NASAと欧州宇宙機関の観測機・SOHO(Solar and Heliospheric Observatory=太陽・太陽圏観測機)は10月28日、C/2024 S1(ATLAS)またの名を「ハロウィン彗星」が太陽に最接近するのを目撃しました。その様子をSOHOが捉えたものがこちらです。

「この彗星は、SOHOの視野に入ったときにはすでに瓦礫の集合体であった可能性が高いです」SOHOに搭載された観測機器・LASCOの主任研究員で、NASAのサングレーザー・プロジェクトリーダーのKarl Battams氏は言っています

ハロウィン彗星を最初に発見したのは9月27日、ハワイのATLAS(Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System=小惑星地球衝突最終警報システム)でした。地球から肉眼で観測できるのでは?として注目が集まり、太陽への最接近は米国東部時間で10月28日午前7時30分(日本時間で同日午後8時30分)と予測されていました。

彗星C/2024 S1はどんどん太陽に近づいていき、太陽との間の距離は、地球・太陽間の距離の100分の1にまで迫りました。が、その距離があまりに近すぎたため、C/2024 S1はその美しい尾を地球人に披露する間もなく消えてしまいました。じつはそこまで太陽に近づく前から崩壊は始まっていたようで、「この数日、彗星は太陽に近づきながらバラバラになっていた」とXのNASAのポストにはあります。

最近は太陽系の外側のオールトの雲からやってきた彗星C/2023 A3(紫金山-ATLAS)も太陽に最接近していて、10月には地球から肉眼でも観測可能になりました。C/2023 A3は9月27日に太陽への最接近を無事に乗り切っていましたが、NASAによればC/2024 S1ほどは太陽に近づいておらず、地球・太陽間の距離の3分の1程度だったそうです。

数百年前に分裂した彗星に由来

C/2024 S1は、太陽に接近する彗星「サン・グレーザー」(太陽をかすめて進むもの、の意味)の中でも「クロイツ群」と呼ばれるもののひとつです。クロイツ群は数百年前に分裂したひとつの彗星に由来すると考えられていて、そのことを証明した天文学者のハインリヒ・クロイツにちなんで名付けられました。

クロイツ群の彗星はすべて太陽に接近する類似の軌道を持っていて、ひとつひとつが比較的小さいため、太陽に接近するとバラバラになるか、太陽に衝突してしまうかになりがちです。それでも中には無事に乗り越えるものもあるため、C/2024 S1もそれが期待されていました。

クロイツ群の彗星としては、2011年に発見されたラヴジョイ彗星は太陽に最接近後も持ちこたえ、青と緑の光で夜空を彩りました。ただその数日後、彗星の核が崩壊してしまいました。少し古いところでは1965年に日本のアマチュア天文家が発見した池谷・関彗星は非常に明るく、昼間の太陽の近くでも見られるほどでした。太陽接近後に3つ程度に分裂しましたが、分裂した状態でも尾を引いているのが肉眼で見えたそうです。

C/2024 S1は崩壊しなければ、見かけの等級は金星(マイナス4.6)より明るく、マイナス7ほどに達したと推定されています。そんな天体ショーが見られなかったのは残念ですが、観測機SOHOでは1995年の打ち上げ以来、5000以上の彗星を発見しています。これからもまだまだ、美しい彗星を見つけてくれることに期待しましょう。

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