「革新的「折りたたみAIフォン」誕生!Samsung「Galaxy Z Fold6」「Galaxy Z Flip6」(SIMフリーモデル)」で紹介したように、7月に発売になったSamsung Galaxy Z Fold6は、折りたたみスマホのフラグシップ機種であることに加え、AI機能が数多く搭載されたことで要注目である。さっそくレビューしよう。
■折りたたみスマホのフラグシップ
Samsung Galaxy Z Foldシリーズは折りたたみスマホを代表する機種で、スマホ全体を引っ張るフラグシップである。それもすでに6世代目となる。Galaxy Z Fold6(以下 本機)のボディはかなり角張っているのが特徴的だ。ボディサイズギリギリまで画面というデザインで、いかにも「クールなビジネスツール」という印象である。
今回お借りしたのはシルバーシャドウのSIMフリーモデルである。他にネイビー、クラフテッドブラック、ホワイトと4色のカラーバリエーションがある。多くの折りたたみスマホと同じように、本機もメインディスプレイとサブディスプレイ(カバーディスプレイ)の2画面構成である。メインディスプレイ(7.6インチ)は折り曲げたとききっちりとたたまれ、シリーズ初期のようなヒンジ部分の隙間は皆無である。
このディスプレイでは折り目の部分がどこまで改善されたか気になっていた。しかし、実際に画面操作をしてみて、操作中に折り目が気になることはほぼ皆無だった。もちろん意識して折り目を見れば折り目とわかるレベルではあるが、実用上問題はほとんどないと思う。改めて技術の進歩を感じる点である。
カバーディスプレイ(6.3インチ)も大型化して、折りたたみでない普通のスマホの画面サイズと横幅を含め、あまり変わらない。ほとんどの操作はサブディスプレイでできてしまう。ただし、カバーディスプレイでSペン(別売)は使えず、メインディスプレイの操作にのみ使えるので注意が必要だ。
ふたつのディスプレイはともに有機ELで、解像感、色再現性ともに優れている。特にピーク輝度が2600nitsと、2枚ともかなり明るいディスプレイが採用されていて、炎天下でもある程度の視認性を確保できる。
折りたためばコンパクト、広げれば大画面というコンセプトは進化して、ほぼ理想型になってきたのではないだろうか。
■フラグシップ機にふさわしい基本性能
本機はSnapdragon 8 Gen 3 Mobile Platform for Galaxy、RAM 12GBを搭載している。
今回お借りしたのはROM 256GBモデルであるが、512GB、1TBのモデルもある。
実際に使ってみると、ゲームなどもとてもきびきび動作する。
5G対応で、nanoSIMスロット x1とeSIMのデュアルSIMである。
Wi-Fiは Wi-Fi 6E対応で、普及期を迎えつつある6GHz帯も利用できる。
他に Bluetooth、NFC(おサイフケータイなど)、UWBに対応している。
寸法や重さは、下記のとおり。
IP48の防水防塵仕様である。
フラグシップ機にふさわしい基本スペックといえそうだ。
■カメラの仕様は前機種と基本的に同じ
アウト(メイン)カメラは、50M、12M、10Mピクセルの3眼、光学3倍ズーム、デジタル30倍ズーム、イン(サブ)カメラは4Mピクセル、カバーカメラは10Mピクセルという構成で、前機種Fold5とほぼ同じスペックである。
動画は8Kに対応しており、動画撮影時の手ぶれ補正も搭載されている。
実際に本機で撮影した写真と動画をご覧頂こう。
〇写真
〇動画
Foldシリーズ史上最軽量!Samsung「Galaxy Z Fold6」動画作例1
YouTube:https://youtu.be/EiKDmbOaEP8
Foldシリーズ史上最軽量!Samsung「Galaxy Z Fold6」動画作例2(手ぶれ補正チェック・歩きながら撮影)
YouTube:https://youtu.be/50cHHfwmXII
解像感、色再現性、ボケ味など問題ないが、カメラ以外のスペックが最先端なのに比較するとこのカメラ部のみ、旧機種並みというのは意外だった。
■多彩なAIを搭載をさっそく使ってみた
Galaxy Z Fold6は多彩なAI機能の搭載も特徴だ。そのうちいくつかを実際に使ってみた。
まずはテキストベースの機能から見てみよう。ちょっとした文章の生成や要約、翻訳ができる。ソフトウエアキーボードを使う場面、たとえば、メールやメッセージアプリ、プレインストールのノートアプリ「Samsung Notes」などで文章の入力をするシーンで、ソフトウエアキーボードの左上に星がふたつ重なったようなアイコンがあり、これをタップするとAI機能のメニューが表示される。
このメニューから「文章の生成」を選択し、簡単にどんな文章を作りたいかを書き込むとそれに従ってメールやメッセージの内容を生成してくれる。このとき生成する文章のスタイルを指定できる。友人に送るようなカジュアルなスタイルや、仕事で使うような「かしこまった」スタイルを選択できるのだ。生成結果はこのまま送信するというより、修正する前提で使う「たたき台」のレベルだろう。それでも結構役に立ちそうだ。
また同じメニューには「スペルと文法」を選び送信する前に文章をチェックしてくれる機能もある。
さらに、「Samsung Notes」やSamsung独自アプリの「ブラウザ」では、文章を表示したときにAIを使った要約や翻訳の機能が使える。特に「要約」はかなり便利で実用的と感じた。
音声関連の機能では「文字起こし」と「通訳」がある。
「文字起こし」はSamsung Notesやボイスレコーダアプリで録音した音声を文字や文章に書き出すもので、あらかじめ録音した音声ファイルからの文字起こしも可能である。文字起こしの結果は間違いも多くそのままでは使えないとしても、こちらも要約の機能はかなり使える印象だ。
通訳機能は、英語と日本語、中国語(中国本土)と日本語の間でそれぞれやってみた。私の印象では英語翻訳は日常会話ならまあまあという出来だ。一方、中国語ネイティブの妻によると、中国語翻訳の出来は今ひとつだそうだ。
さらに次は画像生成関連を見てみよう。
「AIスケッチ」という機能ではラフな手書きスケッチを描くとAIがその絵の完成度を高めてくれる。なかなか楽しい機能である。この機能は「エッジパネル」という画面右端から引き出すように開くパネルから起動し、新規に絵を描くやり方と、既存の写真をギャラリーアプリから開いて、追加で絵を加えるやり方のふた通りが可能である。
AI機能の最後に「かこって検索」を見てみよう。この機能は画像認識にAIを使っていると思われるものだ。ホームボタンを長押しすると画面が薄い青でカバーがかかったような状態になり、指で写真やイラストを囲むようになぞるとその画像を元にGoogleで検索をしてくれる。
従来のGoogleレンズよりもさらに画像による検索が便利になった。Googleレンズはカメラの機能だが、「かこって検索」ならどのアプリを使っているときにでも利用できる。
「かこって検索」はGoogleの機能なので、今後Androidの他の機種でも使えるようになると予想されるが、本機ではいち早く使えるのがメリットだ。
これらの機能はSamsung独自のAI「Galaxy AI」が中心で、一部はGoogleの機能である。使ってみた感想として、まだ一部実力不足の機能もあるが、思ったよりも実用的で楽しく使える機能が多く、大変魅力的だった。
AI処理技術の進歩は日進月歩であり本機のこれらの機能もアップデートによりさらに進化していくだろう。
特に筆者はSamsungとGoogleのコラボレーションに注目している。まさに本機のAIはその成果だろう。GoogleはGeminiという生成AIでOpen AIのChatGPTと激しい競争の中にいる。Googleの強みはAndroidの開発元であり、Samsungのような世界中のAndroid端末メーカーと協業して魅力的な製品を提供できることだ。
GoogleはスマホやPCで動作するGeminiの小型軽量版「Gemini Nano」を発表している。本機も実は既に「Gemini Nano」が搭載されているという推測記事が出ている。筆者は真偽を確かめられてはいないが、近い将来、これを活用した発表があってもおかしくない。
まだまだAIの時代は始まったばかりである。しかし、とにかくAI時代の最先端をいち早く体験できるのも本機の重要な魅力である。
■バッテリーライフと充電
本機は4400mAhの大容量バッテリーを搭載している。さっそくYouTubeの連続動画再生を行ってみたところ、なんと28時間もの間再生が可能だった。かなりの実力である。
本機はUSB Type-Cポートから、もしくはQi規格のワイヤレス充電器で充電できる。USBからの充電時間を実際に計測した。
約1時間でほぼ空の状態から満充電まで充電できた。約18~20Wの急速充電であり、現状の最速ではないが、そこそこ速い方である。
なお、バッテリー残量のグラフ化にはアプリ「シンプルバッテリーグラフ」を使用した。
■サウンドも魅力
本機はステレオスピーカーを搭載し、ハイレゾコーデックLDACに対応し、音楽好きにもお薦めできる仕様になっている。実際に聴いてみるとスマホの小さなスピーカーのわりには良い音で音楽や動画音声を楽しめた。
ハイレゾコーデックとは、デジタル音声データをCDを超える高音質でBluetoothの電波にのせて送る技術である。詳しくはこの記事でわかりやすく説明したの参照してほしい。
ハイレゾ対応で音質抜群!スマート充電ケースも魅力の「JBL LIVE BEAM 3」レビュー
URL:https://itlifehack.jp/archives/10780483.html
本機が対応しているLDACは、SONYが開発したハイレゾコーデックである。このLDACに対応したワイヤレスイヤホンをBluetoothで接続して高音質音源の音楽を楽しむことができる。ハイレゾの音源は、たとえばAppleMusicやAmazon Musicが用意しているので利用可能だ。
筆者も手持ちのLDAC対応のワイヤレスイヤホン、Nuarl Next1、および Huawei FreeBuds 5iをつないで使ってみた。いずれのイヤホンでも高域まで自然な伸びと広がり、低音の迫力など、ハイレゾならではの音質で好きな音楽を楽しむことができた。
ちなみに「Bluetooth Codec Changer」というアプリで調べたところ、本端末は、LDAC、AAC、SBCの3種類のBluetoothコーデックに対応していることが確認できた。「AAC」はiPhoneなどで採用されているコーデックである。
実は、「aptX Adaptive」という、LDACとは双璧ともいえるハイレゾコーデックがあり、これに対応したワイヤレスイヤホンの製品化も増えてきているのだが、本機は残念ながら対応していない。ハイレゾワイヤレスイヤホンを選ぶときには対応コーデックに注意が必要だ。
■ビジネスに使えるAIスマホ
折りたたみスマホのフラグシップ機である本機は多彩な魅力を持っている。特にAI機能には力が入っており、まだまだ発展途上の機能もあるが、実用的なものも増えてきており、新しもの好きの筆者には特に印象的だった。
メールや招待状の文章のたたき台をAIに生成させたり、記事の要約をさせたり、会議を録音して、あとで議事録などに要約してまとめさせるなど、ビジネスシーンで役に立ちそうな機能がそろそろ実用になりそうである。
他には「AIスケッチ」は楽しいし、「かこって検索」も大変便利だ。
Samsungは、独自開発、Googleとの共同開発など、さまざまに時代の先頭を切ってAI機能の開発を進めているのが感じられ、ワクワクするものがある。今後も各機能のアップデートや進化を期待したい。折りたたみスマホとして最重要ともいえるメインディスプレイは、完成度がさらに高まり、前機種よりも折り目が目立たなくなっている。画面操作をしている間に折り目が気になることはほぼ皆無だった。さらに省電力の実力や、サウンドの面でも魅力を持っているのも確かめられた。
このようにフラグシップ機としての進化を進めている反面、カメラ部は前機種から大きな変更がないのはちょっと対照的だ。ここは購入検討の際には知っておくべきポイントだろう。
それはともかく、本機はとても魅力的なスマホに仕上がっている。約25万円を超えるのでけして求めやすい価格帯ではないが、最先端のAI処理を試してみたいビジネスユーザにおすすめできると思う。
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