20代の約2人に1人が今後、自分がホームレス状態になる「可能性がある」と回答

事業を通して社会課題解決に取り組む、株式会社LIFULL(ライフル)は、2024年9月21日から28日まで韓国・ソウルで開催されるサッカーの世界大会「ホームレス・ワールドカップ」に出場する日本代表チームのオフィシャルスポンサーに就任したことにちなみ、ホームレス・ワールドカップの日本代表派遣団体であるダイバーシティサッカー協会と共同で「ホームレス」に関する全国の男女1,902人のイメージ調査および、不安定な居住環境にある方々などの支援を行う支援団体がもつ実感の調査を実施した。

■調査実施の背景
LIFULLは、これまで不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」を通して、ホームレス状態の人を含む生活困窮者や家族に頼れない若者などあらゆる人の叶えたい暮らしの実現をサポートしてきた。今回、「ホームレス・ワールドカップ」の大会のビジョンである「ホームレスの存在しない世界」を目指すこと、大会への出場を当事者の方々が広義のホームレス状態である不安定な居住環境から抜け出すきっかけとすることに強く共感し、13年ぶりに大会に出場する日本代表チームのオフィシャルスポンサーに就任した。

スポンサー活動の一環として日本代表チームの派遣の目的の1つである「広義のホームレス問題の理解促進」をサポートするため、この度、全国の男女1,902人を対象に「ホームレス」に関するイメージ調査および、支援団体を対象に実感調査を実施した。実感調査では「路上や公園など屋外で生活している人」だけでなく、従来のホームレスの定義にとどまらない「路上ではないが不安定な居住環境で生活する人」や「住まいはあるが困窮している人」などを支援している7つの団体に協力いただいた。

【1】35%が今後自分がホームレス状態になる「可能性がある」と回答。年代別では20代の約2人に1人が「可能性がある」と回答。

「今後、ご自身がホームレス状態になる可能性の程度」について尋ねたところ、可能性がある(十分あると思う、場合によってはあると思うの合計)と回答した割合は全体の35.1%、約3人に1人という結果だった。

回答を年代別に比較したところ、20代が同46.6%と最も高く、約2人に1人がホームレス状態になる可能性があると回答した。一方、ホームレス状態になる可能性がない(ほとんどないと思う、ないと思うの合計)と回答した割合は、年代が上がるにつれて高くなる傾向があり、60代の65.0%が最も高く、20代の36.7%が最も低い結果となった。

【2】「ホームレス状態の人」と聞いてイメージする居住環境で最も多いのは「道路や公共空間」。「24時間営業の商業施設」が2位に、「ネットカフェ難民」等の認知の影響か。

ホームレスに関する研究を行う国際的な機関“Institute of Global Homelessness”によるホームレス状態の定義※1等をもとに、1,902人に「ホームレス状態の人」と聞いてイメージする居住環境を尋ねたところ、「道路やその他の公共空間」をイメージする(「する・ややするの合計」74.6%)という回答が最も多い結果となり、従来のホームレスの定義にあてはまる居住環境のイメージがやはり根強いことが分かった。

次いで、「24時間営業の商業施設(ネットカフェ・漫画喫茶・サウナなど)」(同56.3%)となった。続いて、「行政やNPOが一時的な支援として提供する個人に一定期間割り当てられた部屋」(同53.3%)という回答となり、ホームレス状態の人は道路や公共空間だけに居住しているわけではないというイメージを持っていることが分かった。「メディア報道などを通じて『ネットカフェ難民』といった目に見えにくいホームレス状態が存在することへの認知がある程度広まったということなのかもしれない。ただ、まだまだ多様な『不安定居住』が世界的にはホームレスに含まれ、それに応じて多様な支援が必要であることへの理解が広まってほしいです。」(ダイバーシティサッカー協会担当者)という見解だった。

一方で、「友人や親戚の家」(同29.9%)などはホームレス状態のイメージが弱いことも分かった。「友人や親戚の家に間借りしているのは、居住環境を自ら選ぶ自由が制限されている状態だと考えられる。居住環境について自己決定できることは『適切な住居に住む権利』という人権の要件なので、それが満たされていないことは『ホームレス状態』とみなされます。」(ダイバーシティサッカー協会担当者)

イメージ調査の結果が上記であったのに対し、支援団体に「団体へ支援の相談をされる人で、不安定な居住環境にある方の居住環境」について尋ねたところあてはまる方が多いと回答した内訳は以下となった。
道路やその他の公共空間にとどまらない、「広義のホームレス状態」を支援していることが見てとれる。
「24時間営業の商業施設(ネットカフェ・漫画喫茶・サウナなど)」…7団体
「友人や親戚の家(一時的)」、「民間が運営する安価な宿泊施設(カプセルホテル、ドヤなど)」、「行政やNPOが一時的な支援として提供する個人に一定期間割り当てられた部屋」…6団体
「道路やその他の公共空間」…5団体
「人の居住に適さない住居」、「暴力に晒されるおそれのある住居」…4団体
「行政が日毎に提供する臨時の夜間宿泊所」…3団体
「極端に人口過密な住居」…2団体
「国外からの難民や難民申請者、その他移民のための収容施設」、「家庭内暴力(DV)を理由に利用する避難所」…1団体

※1 IGH.A GLOBAL FRAMEWORK FOR UNDERSTANDING HOMELESSNESS, https://ighomelessness.org/wp-content/uploads/2019/10/globalframeworkforundertanding.pdf (閲覧日:2024年8月21日)

【3】「ホームレス状態の人」がその状態に至った原因としてイメージされるもの1位は「倒産・失業」で約8割。「本人が望んだ」や「働くのが嫌」などの自己責任論も6割を超える結果に。
一方、支援団体向け調査では、「心身の病気やケガなどで働けなくなったから」「精神障害や発達障害を抱えているから」等を全団体が回答。

「ホームレス状態の人」と聞いてイメージする人がその状態に至った原因としてイメージするものを尋ねたところ、「勤務先の倒産や解雇、事業の失敗による失業」が約8割(「する・ややするの合計」79.6%)と最も多い回答だった。次いで「借金の返済など債務がある」(同73.0%)が7割以上の回答です。「アルコール依存症やギャンブル依存症を経済的な事情により生活が立ち行かなくなった」(同67.0%)という回答が続く。

また、「働くのが嫌」(同65.3%)や「本人が望んだ(望んでいる)」(同59.6%)についても約6割の方がイメージを持っており、いわゆる自己責任論的な原因に対するイメージも根強いことが分かった。
一方、イメージ調査の回答上位10項目に関して、支援団体の実感調査では、7団体全てが「心身の病気やケガなどで働けなくなった」に「あてはまる方がとても多い」と回答した。この他に「あてはまる方が多い」(あてはまる方がとても多いと思う・あてはまる方がまあ多いほうだと思う)と7団体全てが回答した原因は、「精神障害(うつ病や統合失調症など)や発達障害(ADHDやASD)を抱えている」、「物価高騰など経済的な事情により生活が立ち行かなくなった」、「借金の返済など債務がある」「身元を保証してくれたり、サポートしてくれる存在がいない」でした。イメージでは1位になった「勤務先の倒産や解雇、自営業の失敗による失業」も6団体で原因として回答している。

また、イメージ調査と支援団体の回答でギャップがあった原因は「働くのが嫌」でした。前者は6割超であるのに対し、支援団体では1団体のみの回答に留まった。

【4】「ホームレス状態の人」が現状を改善するために必要な施策でイメージするものは「雇用支援」。支援団体では住まいに関するサポートの選択率が高く、ギャップも。

「ホームレス状態の人」と聞いてイメージする人の現状を改善するために必要な施策3つについて尋ねたところ、「雇用に対する支援」が36.7%と最も多い回答だった。その他の回答には「低価格の公営住宅の提供」(31.1%)、「社会的なサポートネットワーク」(28.6%)、「生活保護などの公的支援の拡充」(27.7%)が続き、雇用と住まい、生活費の施策が必要というイメージであることが分かった。

一方、支援団体が必要と感じている施策は、6団体が「低価格の公営住宅の提供」、5団体が「家賃補助制度の拡充」と回答しており、支援の現場では住まいに関する施策の優先度が高いことが分かった。この結果に対しては、「就労が可能な方に対しては就労支援がもちろん大事だが、病気や怪我、障害などが理由で就労が難しい場合や、就労していても賃金が高くない場合でも、安定した住まいを得られるような支援が必要」(ダイバーシティサッカー協会担当者)とあった。

支援団体が必要な施策と回答した理由(一部抜粋)
◆本設問「現状を改善するための施策」の選択肢一覧
a:低価格の公営住宅の提供 b:家賃補助制度の拡充 c:生活保護などの公的支援の拡充
d:外国籍の人への支援の強化 e:雇用に対する支援 f:社会的なサポートネットワーク
g:低価格の民間住宅探しの支援 h:医療・健康支援 i:災害対策の強化
j:受刑者や出所者の支援 k:依存症対策

・親からの虐待などで家にいることが出来ず、一人暮らしするには家賃などの費用面のハードルが高く、家を出ることを躊躇う若者が多い(選んだ回答:a、b、f)
・自分名義の住まいを確保・維持が優先事項(選んだ回答:a、b、c)
・難民認定申請者が利用可能な公的支援が乏しく、東京都内にはホームレス状態にある人が日毎に宿泊できる施設もない。複数の民間支援団体による宿泊や生活の支援には限界を感じている(選んだ回答:a、c、d)
・東京都は60歳未満単身の公営住宅入居にハードルがある。ネットカフェで寝泊まりしている人は入居費用を用意できない(選んだ回答:a、b、d)
・仕事と住居がセットになっている社員寮等で生活するケースが多く、退職すると住まいが無くなり即生活困難となる(選んだ回答:a、c、e)
・住まいの貧困に苦しむ方が多い現状があるが、現行制度では生活保護基準未満でなければ使える制度が少ない(選んだ回答:a、b、c)
・低価格で入居できる物件は住環境に問題がある場合も多く、悪徳な業者に引っかかる相談者がいる。生活保護という選択肢でなくても雇用先があれば働ける人も多く、相談者の発達特性などを理解し配慮ある職場があれば就労を継続できる人もいる。雇用に対する支援と家賃補助の制度があれば住居と金銭面の確保ができ生活ができる(選んだ回答:b、e、g)

【5】「ホームレス状態」の居住環境に対する満足度のイメージでは「満足していない」が40%超。「どちらともいえない」、「分からない」も20%以上に。
支援団体の実感でも「満足していない」「分からない」が選ばれる。背景にはストレスや居所を失う不安や厳しい状況への諦めも。

「ホームレス状態の人」と聞いてイメージする人の居住環境への満足度のイメージについて尋ねたところ、満足している(満足している、どちらかといえば満足しているの合計)という回答が全体の16.2%であるのに対し、満足していない(満足していない、どちらかといえば満足していないの合計)という回答は全体の41.0%だった。

一般調査の結果と同じく、支援団体では「満足していない」が6団体となり、1団体は「どちらともいえない」という回答となりました。「満足していない」という回答の理由や背景では、安心できない環境でストレスや不安を感じることなどがあげられている。「どちらともいえない」に関しては、満足はしていないものの、厳しい状況の中で諦めの気持ちが生じることがあげられた。

支援団体が「満足していない」と回答した理由・背景(一部抜粋)
・家族との折り合いが悪く、自宅にいてもストレスや不安、恐怖が常にある方が多い。ネットカフェやカプセルホテルでは、経済的な心配がつきまとい、安心出来る住まいでは無い。
・ネットカフェ等の24時間営業の商業施設に寝泊まりをしている人たちから、狭い空間で騒音等のトラブルも絶えないため、体を充分に休めることができないとの相談も多い。
・ネットカフェなどの簡易宿所や職場の寮で生活されている方は、いつ居所を失うかという不安を常に感じている。そういった居住環境は個人のプライバシーが侵害されやすいため。
・住まいを手に入れたい、安心して過ごせる場所を見つけたいという相談が多い。
・低価格な民間住宅が少ない。公営住宅から排除されるから。
・所持金がない状態で借りられる家に入居する方が多く、その場合住環境が良い状態ではないことが多い。(壁が薄い、共同風呂トイレ、木造の3畳一間の狭い空間など)自身が望んだ住環境ではなく「一時的な入居」と考え、引っ越したいという相談が多いから。

支援団体が「どちらともいえない」と回答した理由・背景(一部抜粋)
・満足はしていないが改善に必要なエネルギーを思うと、諦めてこのままいけるとこまで…という心理が働いているように見受けられる。

調査概要

<イメージ調査>
・調査実施期間:2024年8月1日~8月5日
・有効回答数:1,902名
・調査方法: インターネット調査
・調査対象者:全国20代~60代の男女
・調査は性年代別人口に合わせたウェイトバック集計を行っている
グラフは小数点第二位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合がある

<実感調査>
・回答団体(7団体):一般社団法人つくろい東京ファンド、一般社団法人反貧困ネットワーク、NPO法人まきばフリースクール、認定NPO法人Homedoor、他3団体 ※3団体は希望により名称は非公表。

■調査結果の総括:NPO法人「ダイバーシティサッカー協会」代表理事 鈴木 直文氏

自分自身がホームレス状態になる可能性があると思うという回答が1/3を超えたことには、危機感を覚えます。特に20代では半数近くがそうした不安を抱えており、6人から7人に一人が「十分あると思う」と答えています。

「子どもの貧困」が政策課題として指摘されはじめて15年以上経ちますが、その割合が1/6から1/7と言われていました※2。それとほぼ同じ割合だということになります。当時「子ども」だった人たちが20代になり、そのまま生活が困窮する可能性に怯えているということかもしれません。

しかし生活困窮がそのまま住居の喪失につながらないようにすることは可能です。調査に参加した支援団体の方々が指摘するように、公営住宅への入居条件緩和や家賃補助制度など、公的な住まいのセーフティネットの強化が望まれます。

今回のホームレス・ワールドカップ日本代表には、路上生活未満の多様な不安定居住状態にあったり、そういう状態を過去1年の間に経験した人などが選ばれています。代表派遣を通じて広義のホームレス問題への理解が広がり、それに対する支援が行き届くようになれば、多くの「普通の人たち」の生活不安を拭うことにもつながるでしょう。

※2 OECD. OECD Economic Surveys: Japan 2006, https://read.oecd-ilibrary.org/economics/oecd-economic-surveys-japan-2006_eco_surveys-jpn-2006-en#page1 等

株式会社LIFULL

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田村 裕
ワニブックス
2024-07-19