どちらも目標は「永久ウォッチ」。
一度着けたら手放せないモノづくりを目指しているってな話なので、今回のApple Watch Ultra 2とSamsung Galaxy Watch Ultraの直接対決は、2週間着けっぱなしで比べてみました!
両方着けるときもあれば、とっかえひっかえのときもありましたが、ウォッチレスな時間は1分たりともナシ。どっちが好みか知りたかったんですが、結果から先に言うと、ほんとに五分五分の引き分けでした。
Samsung(サムスン)はApple(アップル)のいいところどりで「Ultra」という名前まで拝借して波紋を呼びましたが、これだけ丸パクリでありながら150ドルも安くできるんだからさすがサムスン。買う側の立場からは正直助かります(訳注:日本ではAppleが12万8800円、サムスンは1,860円安い12万6940円。米国ほど大きな差はありません)。
Galaxy Watch Ultraのほうがカスタマイズ可能なUltra限定文字盤の種類は豊富ですが、Apple Watch Ultra 2にはアナログコントロールという武器がありますし、どちらもバッテリーは常時ONディスプレイでも丸2日近く持ちます。細かく比べるとサムスンのほうが上だし健康状態を追跡する独自機能もありますが、目立つ差ではありません。
どっちともチタン製フレームで、2周波GPS、プログラム可能なボタン付き。最大100mの耐水性能を備えており、複数種目のワークアウト追跡が可能。フィットネスのデータ追跡の精度を高めたとサムスンは言ってるので、気になるのはその辺りの比較でしょうか。
テストでは両方着けてワークアウトしたり、ニューヨーク州の岩山ブレイクネックリッジで3時間ハイキングしてみたんですが、あまりにも違いがなくて、最後は川で砂を洗って砂金を採る人みたいに、目を皿にして違いを探してました。
Galaxy Watch Ultraには血中酸素濃度測定(Apple Watch Ultra 2は特許侵害で訴えられて機能を無効化)と体組成計がありますが、Apple Watch Ultra 2にはないので、健康管理のセンサーでは差が出ますけど、こうした機能が必要な人以外は、ウォッチの使い方や読み取りデータに違いは感じないでしょう。
デザインと着け心地
ブレイクネックリッジ(首折りの峠)はハドソン川とハドソン・ハイランドの絶景を一望できる名所なんですが、道中、目はウォッチに釘付けです。どっちもカッコよくて好き。特にダークモードにすると赤のネオンで気分があがります。どちらかと言えば、自分はGalaxy Watch Ultraのほうが好みでしょうか。理由は単純に「丸いから」。あと、ボタンとコンパスの組み合わせをいろいろカスタマイズできるのもポイントです。
画面の明るさはどちらも充分で、直射日光でも大丈夫でした。
画面サイズはGalaxy Watch Ultraが47mm、Apple Watch Ultra 2は49mm。フレームまで含めるとGalaxy Watch Ultraのほうが大きくて、厚さも12.1mmあるので手首がふさがります。それなら邪魔かというと全然そんなこともなくて、装着しているのを忘れるほどでした。まあ、重量は60.5gあるので、大きい面積にウェイトがうまい具合に分散しているんでしょう。
Apple Watch Ultra 2も厚みはありますが、そこまで幅はないので、重量61.4gが一点に集中してしまう感覚があります。反直感的だけど、手首で気になるのはむしろApple Wattch Ultra 2のほうでした。とはいえ、どちらも手首が重くなるほどではありません。とっかえひっかえ着けないと気づかない程度の差ですけどね。
Apple Watch Ultra 2のデジタルクラウンはホントに神で、アプリの操作や文字盤の色選びもこれでできます。Galaxy Watch Ultraのウィジェット風UI「タイル」もアプリや天気予報をすぐ見れるのはうれしいのですが、ダイヤルがあったらもっと操作しやすいのにって思ってしまいました。
Apple Watch Ultra 2にはタイルはないのですが、それでもなんの不足も感じません。よく使うウィジェットやエクササイズのデータをすぐ見れるのがタイルの強みなわけですが、スワイプして切りかえるのが面倒。その点、Apple Watch Ultra 2ならデジタルクラウンを回せば「スマートスタック」で新規通知やヘルスデータが見れますからね。
ソフトウェア
どっちもタフな処理性能を備えており、バッテリーも長く持ちます(バッテリー駆動時間的にはGalaxy Watch Ultraが気持ち長め)。
Apple Watch Ultra 2のプロセッサはS9 SiPです。処理は高速で、アプリが遅くなることもありません。対するGalaxy Watch Ultraは最新の3nmプロセスのプロセッサを採用しており、処理速度は前世代の3倍に進化したほか、センサーもリデザインして「BioActive Sensor」の新名称となって、データの読み取り精度が向上しました。
自分が使った Apple Watch Ultra 2のOSはwatchOS 10です。watchOS 11のほうは現在ベータ段階で、9月にも正式リリースになりそうな感じです。watchOS 11では「アクティビティリング(運動を怠けると促す機能)」をちょっと一休みしたいときに一時休止にできるなど、便利な機能が満載。「バイタル」アプリで睡眠トラッキングしたり、28日ごとの「トレーニング負荷」で健康管理もできます。
いずれもSamsung Healthの「睡眠トラッキング」に対抗する新機能という位置づけですね。サムスンは、Galaxy Watch 7とWatch Ultraで睡眠時無呼吸症候群と心電図の検出機能を新たにリリースしましたが、無呼吸症候群検出機能はApple側には(まだ)ありません。それ目当てで購入する人もいそうですよね。もちろん診断まではできませんけど。
何か異常があればウォッチが教えてくれるので必要に応じて医師の診断を受ける流れなのですが、新しい検出技術はこれまでにない精度だとサムスンに軍配が上がります。「体組成」判定機能もサムスンにはありますが、Apple Watch Ultra 2は周辺機器を別途買わないと体脂肪率とかは測れません。
いちおうサムスンの調査では体組成の測定結果の精度は「97%」とのことですが、不確かという声もあるので、気になる人は医療・栄養の専門家に対処を聞くのが一番でしょう。
新しいウォッチでは、両社とも通知・アプリをダブルピンチで操作できます。何回かやり直さないと認識されないこともあるけど、自分はApple Watch Ultra 2のほうがGalaxy Watch Ultraより成功率高めでした。
ほかにも細かい違いはあります。Apple Watch Ultra 2はコンパスアプリがよくて、「バックトラック(逆戻り)」モードで来た道に戻れたりします。なお、水中テストはできませんでした。
気になる電池持ちは、どちらもバッチリです。Appleの公称「36時間」というのは控えめな見積もりで、両方同時に着けて測ったら、Apple Watch Ultra 2は1回のフル充電で42時間くらい使えたし、Galaxy Watch Ultraも46時間近く持ちました。
フィットネス
ブレイクネックリッジは人気の「ロングループ」を歩けば、距離的には4.5kmなので数時間で回れるコースなのですが、アマチュアが挑むと筋肉痛になるので有名。いきなり岩のぼりの峠の連続で心臓はバクバクです。その後は、木が生えた山頂を経由して、下ってくるんですが、これが石ころだらけの道で危ないことこの上なしです。
今回のハイキングでは両方の機種で標高の推移も確認できたんですが、数値にはズレがありました。たとえばApple Watch Ultra 2は「標高ゲイン:1,218フィート(約371m)」、Galaxy Watch Ultraは「最高標高:1,270フィート(約387m)」と表示されるんですね(Apple Watch Ultra 2は出発地点の標高が引かれるのかな)。
心拍数のカウントも違って、Apple Watch Ultra 2によれば有酸素心拍数145~158bpm、Galaxy Watch Ultraによれば134~152bpm。ハイキング所要時間2時間10分のうち「有酸素心拍運動は24分」(Apple Watch Ultra 2)で、「激しい運動は33分」(Galaxy Watch Ultra)でした。
もっと詳しく書くと「ウィルキンソン・トレイル・ループ」は3.2マイル(約5.2km)のコースで、どのトレイルもループ中央が起点であり終点です。
Galaxy Watch Ultraは「3.13マイル」と表示されたので、かなり正確。Apple Watch Ultra 2はなぜか「3.45マイル」と表示されていました。
速度の単位は、Apple Watch Ultra 2が「1マイル歩くのにかかる所要分数」で、Galaxy Watch Ultraは「時速マイル」。もしかしたらこれは端末のGPS現在地トラッキングの仕様からくる違いかもしれません。
もっと変なのは、消費カロリーが異なることです。Apple Watch Ultra 2はアクティブカロリーが「546」、消費カロリーが「738」(休憩中も含めた数値)とあるのに対し、Samsung Watch Ultraは登山消費カロリー「1,126」と表示されるんですね。
試しにジムで刀剣を振り回すいつもの運動をやってみたら、Galaxy Watch Ultraでは消費カロリー「709」と出て、Apple Watch Ultra 2は「616」と出るではないですか。平均心拍数もApple Watch Ultra 2が「72bpm」で、Galaxy Watch Ultraが「85bpm」。
まあ、どちらも消費カロリーを専用のセンサーで検知しているわけではなく、利用者個人のデータと運動ルーティンをベースに割り出しているだけですからね。どちらも僕の健康に関しては同じデータを所有しているはずなのですが、なぜかAppleの見立てのほうがサムスンの見立てより厳しいという結果です。
エネルギー消費量はウェアラブルの苦手分野だって話は、スタンフォード大研究班が2017年の論文でも言ってましたもんね。もっと最新のテストでもフィットネス系ウェアラブルはどれも正確に消費カロリーを計算できていない、という結果でした。リングもウォッチもバンドも。
運動大好きYouTuberのRob Ter Horstがテストした結果では、Apple Watch Ultra 2のほうが通常、Galaxy Watch Ultraより数%精度は高めでした。Apple Watch Ultra 2のECG(心電計)の精度を調べた最近の調査でもかなり正確という結果だったので、それとも一致します。それを考えると、Apple Watch Ultra 2の心拍トラッキングのほうがGalaxy Watch Ultraより信頼できるように感じます。
でもまあ、そういう話はポイントがずれているといますよね。どっちも医療機器ほどの精度ではないわけで。スマートウォッチを医学的に通用する高精度の医療機器として使うのはやめましょうね。健康増進のバロメーターとして使うのはOKですので。
Samsung HealthもApple Fitnessアプリも運動後の心拍数回復が表示されますが、時間の区切り方はAppleのほうが細かいので、運動のルーティンを細かく管理したい人にはAppleのほうが若干ポイント高めかも。
判定結果:どっちも高価だけど、むちゃくちゃ高性能
価格とバッテリー持ちでは僅差でGalaxy Watch Ultraの勝ち。使いやすさではApple Watch Ultra 2の勝ち(単にデジタルクラウンがあるってだけの理由ですけどね)。 欲を言えばGalaxy Watch Ultraには回るベゼルをぜひ復活させてほしいです。そしたらバッテリーも2日まるまる持つことだし、スポーツウォッチとしてはもう完璧です。充分Apple Watch Ultra 2と渡り合えるし、追い越しちゃうかもしれません。
細かい違いをいろいろ書いてきましたが、どっちを購入するにしても不足はありません。あまりにも似てるので、テスト中はデータを確認するとき、ごっちゃになって取り違えたぐらいでした。WatchOS 11で睡眠トラッキングがくるのを待ってる人もいるかもですが、Galaxy Watch Ultra選んでもApple Watch Ultra 2選んでも、後悔することはまずないでしょう。