銀河の中心に不死の星? ダークマターがエネルギー源に

銀河の真ん中に、不老不死の秘密が。

動植物の命に限りがあるように、星もいつかは死を迎える…はずですよね。でも私たちのいる銀河の中心のごく近くに、不死の星があるのかもしれない、という論文が発表されました。そして不死たりえる理由は、ダークマターにありそうだ、とも。どういうことなんでしょうか?

銀河の中心にある異常な星団

天の川銀河の中心から3光年の距離に、「S星団」と呼ばれる星の集合体があります。地球の位置は銀河の中心から約2万6000光年なので、限りなくコアに近い感じです。

銀河の中心には巨大ブラックホールがあり、新たな星が生まれるには厳しい環境だと考えられるのですが、S星団は若く見え、他の場所で形成されてから移動してきた風でもありません。またS星団には古い星が通常より少なかったり、重い星が多かったりと、従来のモデルでは説明できない特徴がいろいろあります。

星の形成モデルは、中心のブラックホールの0.326光年以内では形成できないことを示しているが、S星団はまさにその領域で発見された。

とKavli Institute for Particle Astrophysics and Cosmologyの研究チームリーダー・Isabelle John氏らの論文にはあります。さらに、

つまりむしろ、これらの星は別の領域で形成され、銀河の中心に移動してきたのであろう。だが逆に観測結果からは、この領域の星は若い(約1500万年以下)ことが示唆されており、これらの星はより近傍で形成された可能性もある。

ともあり、星はどこでできたんだ!となります。

異常の原因はダークマター?

この謎に対し、論文主著者のJohn氏がSpace.comで解説しています。John氏によれば、銀河の中心近くにはダークマターが大量にあるため、S星団の星にダークマターが降着することで「永遠に若い」ままでいられると考えられます。

John氏らが銀河の中心でダークマターの影響を受ける星の進化をシミュレーションした結果、それはS星団の観測データに近いものとなりました。ただこの論文は現在arXivのプレプリントサーバーにホストされている段階、つまり査読はまだ終わっていません。

従来、星の進化の過程を表すモデルとしては、星の光度と有効温度をマッピングしたヘルツシュプルング・ラッセル図なるものがありました。John氏らは、ダークマターの影響を受ける星の進化をよりよく記述すべく、ヘルツシュプルング・ラッセル図のダークマター版を提案したのです。ダークマター版にある星は、従来の図で説明される星より温度が低いのですが、ダークマターの影響で、光度は同じくらいになっています。

ダークマターの影響を受ける星の進化・退化をマッピングできれば、ダークマターが宇宙の中でどう現れ、非ダークマターにどう影響しているかをよりよく理解できるかもしれません。研究チームはまた、今後建設予定の30m望遠鏡で、銀河の中心に近い星をもっと観測できれば、ダークマターの影響も検知しやすくなると期待を表明しています。

見えぬものでも、あるんだよ

ダークマターは宇宙の27%を占めると考えられていますが、今のところ直接検出はできていないし、その正体がひとつなのか(たとえば未発見の素粒子アクシオンなど)、または複数あるのかもまだわかっていません。ただダークマターは、星や星団といった天体の動きや見え方への影響から間接的に検知されていて、とくに巨大な質量で光を歪める「重力レンズ」現象がよく知られています。

ダークマターと星の相互作用についての研究は、今までにもいろいろ行なわれてきました。最近では別のチームが、中性子星(きわめて高密度な星の残骸)が、ダークマターの源でありうると主張しています。去年7月にはまた別のチームが、ウェッブ宇宙望遠鏡を使い、ダークマターからエネルギーを得る星を見つけたと示唆しています。

ダークマターにそんなにエネルギーがあるなら、それを何かに役立てられないのかな?などと妄想しましたが、Space.comがJohn氏に、「太陽も不死になれないの?」と聞いてくれてました。

答えはノー、理由は太陽の位置では(というか銀河系のほとんどの場所で)「ダークマターの密度が銀河の中心ほど高くないから」だそうです。でも太陽の死まではあと数十億年ありそうだから、なんとかなるかも。

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