その星は地球とそっくり。地球以外の生命発見につながるか?

宇宙はとっても広いから、きっとどこかにあるはず地球みたいな星が…。ただ、宇宙はとっても広いから、そんな星はなかなか見つからないんだよな…。

地球みたいな星かもしれないという候補ならあるんですけどね。

その星の名は「グリーゼ12b」

地球から40光年離れた位置にある赤色矮星グリーゼ12を公転する太陽系外惑星「グリーゼ12b」。金星とほぼ同じサイズで、地球よりも少しだけ小さい星。

主星となるグリーゼ12から近いところを公転するので、その周期はおよそ12.8日。つまり、グリーゼ12bの1年間は12.8日。主星から得る日射量は、地球が太陽から得る日射量の1.6倍。ただ、表面温度は42℃ほどで、今まで発見された太陽系外惑星の中では低温として分類されます。地球の平均表面温度は15℃なので、地球と比べるとちょっと暑いのですが。

大気があるかどうか

グリーゼ12bの研究調査において、次なる大きな一歩となるのは、大気が存在するかどうか。あるならどのような大気なのか。そして液体(水)が安定して地表に存在しているのか。

オーストラリアのサザンクイーンズランド大学の天文物理センターの大学院生で、研究チームに参加するShishir Dholakiaさんはこうコメント。

「宇宙全体で居住可能な惑星への理解を深めるにあたり、低温の星を公転する地球サイズの星に大気は存在するのかどうかは重要な研究であり、グリーゼ12bはそれを知る恰好のターゲットなんです」

グリーゼ12b単体ではなく、主星であるグリーゼ12も知る必要があります。グリーゼ12は、太陽のおよそ1/4ほどのサイズで、表面温度も太陽の6割ほど。赤色矮星によく見られるX線フレアなどの活発な活動がないことから、グリーゼ12bには大気が現存するのではと考えられています。

グリーゼ12bの大気調査には、赤外線観測用宇宙望遠鏡であるジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡が活用されます。公転周期12.8日という短期間なので、地球から見て主星の前を比較的頻繁に通過するグリーゼ12b。そのおかげで、詳細まで観測するチャンスがあります。

自然科学研究機構 アストロバイオロジーセンターの葛原昌幸氏は、期待を寄せてこうコメントしています。

「今後のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による詳細観測や、将来の30m級地上望遠鏡によるトランジット分光観測や直接観測によって、この惑星がどのような大気を持つのか、水蒸気、酸素、二酸化炭素などの生命に関連のある成分が存在するのか明らかになる」

Image: NASA/JPL-Caltech/R. Hurt (Caltech-IPAC)

地球と金星とグリーゼ12b

地球によく似た星として名前が挙がるのが金星。大きさ、重さが近く、内部構造も似ていると考えられています。ただ、人類が金星に引っ越して暮らすことはできません。似ているけれど決定的な違いがあるからです。金星って表面温度が460℃というハチャメチャに暑い星なのでです。これは金星の持つ分厚い二酸化炭素の大気が影響してのこと。

つまり、グリーゼ12bに大気があるかどうか、どんな大気なのかによっては、金星と同じくサイズ感は似ているけれど、まったく違う星になってしまう可能性があります。

前述したグリーゼ12bの表面温度42℃は平衡温度のことであり、これは大気がない状態での予想値なのです。この予想値は、NASAの宇宙望遠鏡TESSと欧州宇宙機関の宇宙望遠鏡CHEOPSの観測データから惑星が受ける光の量、星からの距離などを見積もって弾き出されています。

地球以外に人類が住める星はあるのか

グリーゼ12bの発見は、広い宇宙に人類が住める星が地球以外にあるのかどうかという大きな問題につながるもの。とある研究によれば、赤色矮星を公転する無数の星で、居住可能な星は45億個ほどあるという説もあります。

グリーゼ12bに関する研究は、サザンクイーンズランド大学、エディンバラ大学、東京大学の天文物理研究所によって合同で進行中。最新論文は、Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyにて公開されています。