今から50年前、考古学者のJosé María Soler氏がスペインのビリェーナの地下に埋もれていた宝の山を発見しました。
その宝はおよそ3000年前のもので、金銀のボウルやブレスレット、装飾品、さらにいくつか鉄製の宝物も見つかったそうです。
そんな3000年前の宝物についてスペインの研究チームが分析してみたところ、隕鉄(隕石由来の鉄ーニッケル合金)から鋳造されたものであったことがわかったそうです。この研究はTrabajos de Prehistoriaに論文が掲載されています。
3000年前の人々が宇宙由来の装飾品を身に着けていたことも驚きですが、今回の研究によって3000年前の鉄の冶金技術についても新たな発見があるかもしれないとのことです。
隕鉄で作られた宝物
今回研究で調査されたのは鉄製のブレスレットと剣の柄頭と思われる装飾品です。スペインの新聞El Paísによれば、今回の研究によりブレスレットはすべて鉄でできており、柄頭と思われる半球の装飾品は鉄で作られた上から四芒星を象った薄い金で覆われているそうです。
研究チームはこれらの鉄の期限を特定するために宝物の破片を分析しました。分析の結果、鉄とニッケルの合金であることがわかり、さらにニッケルの含有量も高いことがわかりました。その後質量分析法により、コバルトなど隕鉄に含まれる元素も探したそうです。
こうした分析により、これらの宝物が隕鉄によって作られている可能性が高いことがわかったのです。
青銅器時代の冶金技術
今回の研究でもうひとつ注目すべきポイントは、鉄の冶金技術についてです。
この宝物が作られたとされる紀元前1400~1200年のスペインは青銅器が使われていたとされ、鉄器時代の前の青銅器時代の後期であったとされています。
つまり、まだ鉄の冶金技術が広まる前に隕鉄を利用して宝物を作り出した可能性があるということです。
鉄の冶金技術が普及する前に人類が隕鉄を利用した事例はほかにもあり、最も有名な例はエジプトのツタンカーメン王の棺から発見された短剣でしょう。この短剣は低温鋳造によって作られたことが分析によってわかりました。
しかし、「アマルナレター」と呼ばれる3400年前の外交記録によって、この短剣はアナトリアのミタンニ地域の王から贈られたものである可能性があると伝えられています。つまり、エジプトで作られたものではないと考えられるわけです。
今回のビリェーナの宝物については、記録などが残されていないためツタンカーメン王の短剣以上に情報が少ないといえるでしょう。研究チームも「誰が宝物を作ったか、鉄をどこで手に入れたかなどは不明」としています。
ツタンカーメン王の短剣の例を考慮すると、ビリェーナの宝物についてもスペインで作られたものではない可能性があります。今後の研究によって宝物の起源について新たな発見がなされれば、当時の文化的な背景や歴史について新たな知識が得られるかもしれません。