昨年11月に義務化された人的資本情報の開示義務化にともない、上場企業では人的資本情報を開示・活用する仕組みの整備が急務となっている。中堅企業においても人的資本情報を経営に活かすことにより、従業員のポテンシャルを引き出し増力化が期待できるため、企業の持続的な成長に繋がると昨今注目度が急上昇している。
そこで今回は、いち早く人的資本情報に着目し、「Ulysses/人的資本ダッシュボード」を提供している株式会社オデッセイ 代表取締役社長 秋葉 尊氏に、同社の事業とサービスについてお話しをうかがった。
■人事のことなら何でも対応できるソリューションを提供
秋葉社長は大学卒業後、日本電気株式会社(NEC)に入社。ソリューションセールスやマーケティングに従事した。20年前、父親が創業した株式会社オデッセイに入社し、現在、代表取締役を務める。
同社は、SAPの人事領域に特化したコンサルティング事業を手掛ける人事専門のITコンサルティング企業だ。
ソリューションとしては、下記の3つの領域で提供している。
1. コア人事
人事管理や給与計算などの人事業務のなかの基幹的な業務を指す。
2. タレントマネジメント
従業員に関する多面的な情報(人財情報)を管理・活用することで、「採用」「配置」「評価」「育成」のサイクルを効果的に回す仕組み。
3. HRTech
AIやRPA等に代表される先進テクノロジーを活用し、従来人間でないと対応できないとされてきた業務も含めIT化することで人事業務の効率化や精度向上を図るソリューション。
同社で提供するHRTechソリューションについて秋葉社長は、「一例としてAIチャットボットが挙げられます。我々のお客様は当然、SAP SuccessFactorsを使っていただいているわけですが、操作や設定でわからないことがあれば、従来はコンサルタントに問い合わせ頂いてました。ただ、コンサルタントが対応すると、どうしてもお金が掛かってしまいますし、契約時間も限られているので、お客様としては、問い合わせする際も費用が気になったり、確認したい時にすぐに問い合わせができず問題の解決に時間が掛かるという課題がありました。その課題を解決するために開発したのがAIチャットボットの『MetisAI』(メティサイ)です。」と語った。
この『MetisAI』は、オデッセイが25年以上にわたり培ってきた人事ソリューションのナレッジを学習させたAIチャットボットだ。SAP SuccessFactorsの運用保守時の操作や、お客様主体でソリューション導入される際の設定等の基本的な質問に回答することが可能になっている。しかも24時間365日追加費用なく利用でき、即時回答が得られるため、設定や操作の疑問点をタイムリーに解消できることが大きなメリットになっている。従来からのコンサルタントによるサポートと併用すればユーザーの利便性は更に高まるはずだ。
従来のAIを進化させ、より人間に近い回答が可能な生成型AI「ChatGPT」を活用すればよりユーザーの利便性を高めることが期待できるため、現在、MetisAIのChatGPT化を進めており、近々にリリースする予定という。
「オデッセイが対応しているソリューションは、コア人事・タレントマネジメント・HRTechとご説明しましたが、SAPの人事のことであれば、なんでも対応できるソリューションを持っているつもりです。それが、SAPの人事専門で25年以上事業を行ってきた我々だからこそ提供できるサービスだと思っています。」(秋葉社長談)
■お客様の満足度は社員の働く環境への満足度に比例する
オデッセイと他社との大きな違いは、「仕事にやりがいを、人生に豊かさを」という社是のもと、社員の働く環境への満足度を高めることが、社員のモチベーションを向上させ、お客様に提供するサービスレベルの向上に繋がるという考えを経営理念に掲げ、それを実践するための様々な仕組みを整備して実行していることだ。
同社では、1997年の創業以来「社員環境満足度」重視の経営方針を掲げ、社員のモチベーション向上に注力している。
オデッセイが実践する社員環境満足度を高める3つの要素
1. 報酬の高さ
まず注目したいのは、業界トップクラスの報酬と透明性の高い給与体系である点だ。
同社の新卒初任給は、大学卒で400,800円、大学院卒410,200円と、かなり報酬が高い。
厚生労働省が公表している「令和4年賃金構造基本統計調査」で新規学卒者の平均賃金が大学卒228,500円、大学院卒267,900円となっていることから見ても、一般企業の2倍近い初任給となっている。
同社によれば、報酬の高さもモチベーションアップのための重要な要素のひとつと考えて、この初任給で2008年から新卒を採用しているという。
加えて、同社ではコンサルタントの給与テーブルをホームページで公開しており、社内はもちろん、社外の人でも自由に閲覧できるようになっている。社内でも公開している会社がまだ少ないなか、社外にまで公開している会社は例がないのではなかろうか。ランク・等級ごとの給与がすべて確認できるため、社員にとっても、入社を検討している応募者にとっても、今後のキャリアプランを考えるうえでの重要な情報になるはずだ。この高い透明性が、社員の将来への不安を払拭し、社員と会社との信頼関係を高めることに繋がっている。
2. 昇給・昇進の速さ
同社では、日本企業の多くが採用している年功序列ではなく、本人の仕事の成果と報酬が連動するジョブ型人事制度を創業以来採用し、年令や勤続年数の影響を受けない実力に応じた昇進/昇給を実現している。また、目標管理制度に基づいた評価による、昇進/昇給の機会が2回/年あり、多くの日本企業の昇進/昇給の機会が1回/年なのに対し、2倍のチャンスを設定している点も注目される。その結果、ハイペースで昇進/昇給した例としては、新卒入社4年目で年収700万円程度になる社員も複数出ているという。
3. データに基づいた公平な評価
コンサルタントの評価においても「コンピテンシー(定性的評価)」と「業務生産性(定量的評価)」を重視した公平な評価により、仕事へのやりがいを高めている。
特に定量的評価では、自社開発のPIMS(Project Information Management System)によって、コンサルタント個人の生産性を数値として捉え、そのデータを元に評価を行っている。評価にあたっては、コンサルタントのランク/等級ごとに必要な業務内容やレベルだけでなく、業務の生産性を数値として規定している。
そのため、仕事の成果として表れた生産性のデータ(数値)を確認すれば、被評価者が現在位置するランク/等級に相応しい成果が出せているか、また上位のランク/等級の成果を上げられるレベルにまで成長したかを的確に評価することができる。仕事の成果が数値で表されることで誰が評価しても同じ結果となるため、企業の評価でありがちな「上司の感覚的な評価」を極力排除して評価の公平性を実現している。
自分の仕事の成果を公平に評価され昇進、昇給に繋がれば、仕事にやりがいを感じ「またこの次も頑張ろう」というモチベーションが湧いてくると考えているのだ。
人事専門のITコンサルティング会社ということもあり、このような仕組み(制度)を構築し、社内に徹底できている点が興味深い。上記3つの施策を確実に実施しているからこそ、社員は仕事にやりがいを感じることでモチベーションが高まり、仕事の質も向上する。その結果、お客様に満足してもらえるレベルのサービス提供に繋がるということなのであろう。
これが同社の「お客様の満足度は、社員の働く環境への満足度に比例する」という考え方なのだ。
■有価証券報告書への記載義務項目の状態を簡単にモニタリングできる「Ulysses/人的資本ダッシュボード」
人的資本情報の開示がいよいよ義務化されたが、まだまだ人的資本に関する情報の整備が進んでいない企業もあるだろう。
オデッセイは『人的資本経営』実現に必要な基本的な指標を可視化し、SAP SuccessFactors上のダッシュボードでモニタリングすることができるサービス「Ulysses/人的資本ダッシュボード」を提供している。
同サービスを利用すれば、ISO30414が規定する11領域58項目の一部および、金融庁が公表した人的資本に関する情報の有価証券報告書への記載義務項目についての可視化が可能だ。
Ulysses/人的資本ダッシュボードの大きな特徴としては、次の5つが挙げられる。
1. すぐに使える
SAP SuccessFactors上で管理している人的資本情報を分析できるようにプリセットされているので、データが蓄積されていればすぐに利用することができる。
2. 簡単にはじめられる
分析する指標はISO30414で規定されている内容を基に設定されているので、「何の情報をモニタリングすべきか」で悩む必要もなく、実行するだけでいつでも簡単にモニタリングができる。
3. わかりやすい
分析用クラウドサービスである「SAP Analytics Cloud(SAC)」を利用して開発しており、直感的な可視化を実現している。
4. 義務化された開示にも対応できる
金融庁が昨年11月に公表した有価証券報告書への記載義務化事項についても、関連する情報を指定された期間で抽出して可視化するため、開示のための準備を軽減できる。
(記載義務化事項(2023年時点)※1 :女性管理職比率、男性育児休業取得率、男女間賃金格差)
※1 今後さらに拡張されることが予想されるが、項目が確定次第、順次対応していく予定。
5. 無料
同社独自の導入テンプレート「Ulysses」へ機能追加して提供するので、人的資本ダッシュボードを利用の際もテンプレート利用料以外に環境設定等の追加作業が必要になる場合を除き追加費用は発生しない。
人的資本ダッシュボードは、オデッセイが提供する、導入テンプレート「Ulysses」を利用したSAP SuccessFactorsソリューションの付加価値として提供されるようだ。
〇Ulysses/人的資本ダッシュボードの詳細
ISO30414の規定項目への対応状況については、SO30414が規定する11領域58項目のうち、以下の範囲に対応している。(2022年12月時点)
「TOP画面から「Ulysses 人的資本ダッシュボード」のタイルをクリックすると、まず「有価証券報告書記載事項」について現在の状況が視覚的に把握できます。赤色は警告、黄色は注意、青色は良好といった具合です。更にスクロールすると「人的資本レポート」が表示されISO30414が規定する11領域58項目に関する項目が同様に表示されます。2023年7月現在、「多様性」「後継者計画」の2領域ですが、8月に2次リリースとして「スキルと能力」「労働力の可用性」「採用,配置,異動,離職」の3領域を追加し、2023年9月末までには定性データの項目を除いた11領域すべてをカバーする予定です。(秋葉社長談)
〇Ulysses/人的資本ダッシュボード画面イメージ
●有価証券報告書記載事項
●人的資本レポート
秋葉社長によれば、昨今、機関投資家の間ではESG投資への関心が高まっていて、ESGの「S(Social):社会」の主要要素である人的資本に関する投資状況とその成果への注目度が高まっているという。従来の財務諸表だけでの企業評価では、持続的に成長できる会社か否かの判断が困難なため人的資本の増強に対する取り組みがわかる情報の開示が求められているとのことだ。
多くの上場企業は、投資家の評価が直接株価に繋がるということだけでなく、そもそも企業として持続的に成長していくためには人的資本経営の実現が急務であることは認識している。そのため、人的資本関連の情報を基にしたPDCAを回していくことに力を入れる必要があることは重々分かっていながらも、なかなかその一歩が踏み出せてない企業も多い。
そういう悩みを持った企業をサポートすることが、Ulysses/人的資本ダッシュボードの狙いというのだ。ISO30414の項目に沿って、全社レベルや部門レベルでモニタリングできるため、各レベルでのPDCAを的確に回せると導入した企業の反応は非常に良いという。
オデッセイは今後、SAP SuccessFactorsを活用した人事ソリューションである「Ulysses」シリーズの拡充を進め、人財情報の活用による従業員の増力化を図り企業競争力の向上を強力に支援していく構えだ。人事領域、特に昨今注目度の高い人的資本関連の情報整備に悩まれている企業は、同社に一度、相談してみては如何だろうか。
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